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殺人ロボット(15)

15
「・・・誰と婚約したのですか?」
と、私は思わず声が出てしまう。

「・・・・・」 愛子は目線を逸らし俯く。

「婚約って、社長の息子さんですか?」
と、さらに問い詰めてしまう。

「・・・・・・」 何も言わない愛子。

「愛ちゃん、・・・・。
愛ちゃん。婚約って息子さんでっしょ?
愛ちゃん、それで良いの?」

と、優しく聞く厚化粧女。
厚化粧女の愛子を想う気持ちを、私は感じた。


「だって、・・・仕方無かったの。お父さんからも言われて・・・。
『将来は社長夫人だぞ。おまえの嫁ぎ先は
お父さんにとって本当に大事な存在だから、・・・』
って、頼まれての」
少しずつ、ポツリポツリと云う愛子。

「でも、その息子を愛して無いのでしょう!」
と、お姉さんの様に云い
「そんな、政略結婚何て、許せない」

……意外とこの女、正義感が強いのか?……
と、私は厚化粧女を見直した。

「でも、あの人優しくしてくれるよ」
と、言い返す愛子。

「最初だけだよ、あんな奴。愛子、あんな奴と結婚したら
一生苦労するよ。婚約解消出来ないの?
このお金で、借金払えば良いじゃ無い。」

「駄目よ、結納金がわりに借金を返済してもらったの。
今更、婚約解消何て出来ないわ。」

「愛子、石田さんの事が好きなんでしょ!どうなの?
諦められるの!」

私は二人の会話を見守りながら聞いていた。

「諦める・・・・と言うよりも、石田さんが何処に居るのか解らないわ。
諦めるしか無いじゃ無い。」

と、小さな声の愛子。
その声に石田太郎に対しての未練を感じる。

「ねえ、加山さん。本当に石田さん海外にいるの?」
と、不審な目で私を見る、厚化粧女。
「愛ちゃんと会うことが出来ないの?」


……石田太郎は此処にいます。貴女の目の前にいます!……
と言う言葉は、口が裂けても言えない。
仮に言ったとしても信じては貰えないだろう。
…もう石田太郎として会うことが叶う事ができない。
加山祐二として、愛子と結婚できれば良いが、私は殺し屋。
結婚なんて事は無理だ。…

「石田太郎君は、海外で別の人と暮らしています。
とても幸せに暮らしています」
と、咄嗟に出た言葉である。
愛子さんに石田太郎の事は諦めてもらうしか無い!

一瞬、愛子の目に落胆が見えた。
「・・・・そうですか。石田さん幸せに暮らしていらっしゃるのね」
と、静かにそして、想いを断ち切る声でもあった。

「もう、・・・会う事も無いのね。」

悲しげな愛子の顔。

その愛子の姿を、私は胸が張り裂けそうな想いで見ていた。

「愛子さん、太郎君の代わりに僕がいますよ!」
と、明るく言って、愛子さんの顔を見る。
愛子は笑みを浮かべ、語る様に私に言った。

「ありがとう、加山さん。加山さんは石田さんと親戚ですね。
だからかな?面影が石田さんに似てる。

加山さんの笑い顔が石田さんに似ていますね。
声もそうだし。話し方も似ている。きっと貴方も優しい人なんですね。
貴方を見ていると、石田さんといるみたいに感じてしまうの。」











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