猫になった宇宙人(12) 6 ボーン 2022年11月9日 02:46 猫になった宇宙人(12)今日の夜の事、父親孝太郎が久々に帰宅した。 「オーイ、誰か居ないのか?雅子は居るのか?」と玄関先で叫んでいる。少女は怯えている。余程父親が怖いのだろう。それとも、本当の父親では無いと感じているのかも知れないが、まだその事を少女の心の声で聞いた事は無い。孝太郎が二階の少女の部屋に来た。私は、孝太郎とは初めての出会いだ。「雅子、いるのなら、返事ぐらいしろ。達也は帰ってないか?」「お兄ちゃんもお姉ちゃんも居ない。」その声は弱く、かなり動揺している。「達也、まだ帰ってないのか? なんだその猫!捨ててこい。汚いだろう。」孝太郎は横柄な人間だと瞬時に分かった。少女が私を抱きしめているのを見ているのに、少女の気持ちも考える事も出来ない人間。「達也が帰ってきたら、私に連絡しろと言え。明日その猫、捨て来るんだぞ。」少女は何も言わなかったが、(あんたの言葉は聞く事はできない。たまに帰ってきて、偉そうに言うのはおかしい、あんたが、捨てられたらいいのに、そして死んだらいいのに)と辛辣な言葉を発していた。孝太郎という男、初めて会ったが、非常に傲慢で自分勝手で横柄で、暴力さえふるいそうな男と感じた。そして臭い。雅子の事を、嫌っている。自分の子供でないと確信している。何故あの様な男と律子は結婚したのか?夫婦とは何か?私の星には無い制度なので、本当に調べてみたい。孝太郎はその言葉を残したまま、帰って行った。達也が帰宅したのは、孝太郎が帰って間もなくであった。この家の夕食は、母親が雅子の分と達也の分を作っていくが朋美の分は無い。朋美がどこかで泊まっているから、作らないのだ。達也は、夕食を摂った後、何処かに行き、夜遅く寝に帰ってくるのが、日常だ。私は達也と顔を会わす事は今まで無かった。少女が私を抱いたまま下に連れて行ったので初対面である。「お兄ちゃん、お父さんが連絡してと言っていたよ。」「うん、そうなの。雅子はご飯食べた?何、その猫?飼っているの?可愛いね。雅子、小さい頃から、猫好きだったよね。」この達也は、心の綺麗な優しい人だ と一瞬で分かった。嫌な匂いを感じない。心根の悪い人は嫌な匂いを感じる。これも、地球に来て初めて分かった事だ。私の星では心根の悪い人はいない為、臭いとは感じる事は無かったが、地球人は大勢いる。その匂いは、独特で、悪い人ほど強い匂いを発している。だが、地球人には心根の匂いを嗅ぐ事は出来ないであろう。どんなに、綺麗な言葉や、優しい事を言っていても、心根が悪いと一瞬して分かる。孝太郎は直ぐに分かった。臭いと。少女は夕食を摂ってはいなかった。食欲が無いのだ。でも、今日は達也と久しぶりに夕食を摂りたいと思っている。少女は家族の中で一番達也を好きであった。達也も少女を可愛く思っているが、孝太郎が少女を憎んでいると感じた時から、孝太郎の前で少女を可愛いがるの控えた。何故なら、達也が可愛いがった分だけ、孝太郎が少女に辛く当たるのが、分かったからだ。孝太郎とは、その様な人物である。久しぶりに夕食を達也と摂る少女は嬉しいそうであった。心の声はいつもと無く、はしゃいでいる。達也の声も聞こえくる。少女と毎日でも夕食を摂ろうかと思っている。でも出来無い時があると、少女を傷つけるかも知れない。食事を済ませた後、思い出したかの様に、孝太郎に電話した。電話口で達也は孝太郎に謝っている。何を謝っているのか分からないが、心では何も謝ってはいない。むしろ、孝太郎に反論し、馬鹿にしている。きっと、孝太郎には本心が言えないのであろう。親子でありながら、本心も言えない。何故この様な関係に、この家族は成ったのか?原因を探りたいと本気で私は思った。地球人の一つの家族であるが、この様な家族は地球上に多く存在するのでは無いかと思った。 ダウンロード copy この記事が参加している募集 #おすすめ名作ドラマ 2,686件 #映画感想文 80,813件 #小説 #家族 #映画感想文 #Kindle電子書籍 #Kindle出版 #少女 #悲しみ #ユーモア #おすすめ名作ドラマ #売れないKindle作家 #地球人 #販売中 #ペイソス #本の宣伝 6 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート