「正しいことがしたい」台湾の若者たちが選択する「社会的企業」とは?
こんにちは。
「正しいことがしたい」「社会に貢献したい」
そう考える若者が増えているなと感じています。
(最近観た日本のドラマ『エルピス』でも、若者がそんなセリフを口にする印象的なシーンがあったし、
今読んでいる本にも、そんな思いで困難な仕事を成し遂げた方の話が書いてありました。)
「正しいことがしたい」「社会に貢献したい」若者が増えているのは世界的な潮流だと思う
なんとなく意識していたのが確信に変わったのは、LINEの代表取締役CWO/Founderの慎ジュンホさんが、オードリー・タンさんと対談された時でした。
慎ジュンホさんがコロナ後のニューノーマルについてお話しされている際に、「今の若い世代は何か不満や課題意識があったら自分で解決したい」「今のインターネットユーザーは直接参加して新しい問題を解決したいというところもニューノーマルという形式の新しい現象の一つ」とおっしゃっていたんですね。
この言葉を聞いた時、この趨勢はやはり確かに存在するのだなと思いました。この流れはおそらく世界的な潮流なのだと思います。
「社会的企業」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
今、台湾で勢いがある企業の多くが、非営利のNPOとも、営利を追求する企業とも違う、「社会的企業」と呼ばれるタイプの会社です。
利益の追求よりも大事なことがあると、台湾が教えてくれた
台湾暮らしの影響か、ライターという立場もあって接触しているコミュニティがそうだからなのか分かりませんが、私自身、自分の中で「どれだけ利益を上げられたとしても、その事業が社会や環境に対して貢献をしていないのであれば、その事業はその存在自体もう一度立ち返るべきなのかもしれない」という価値観が強くなってきました。
それはたとえば温暖化などの気候変動やフードロスに加担していたり、従業員や経営層の健康が害されていたり。平たくいうと「SDGsの達成に逆行している」「ESGの概念を取り入れようという姿勢が見受けられない」といったものです。
かといって誰かを責めたいというわけではなく、私の姿勢はいつもと変わらず「こうやってうまくやっている人がいる、参考になるのでは?」と知らせる、伝えることです。
この価値観にフィットするものの一つが「社会的企業」だと感じています。社会的な課題や問題をビジネスで解決する、そのバランスをうまく取れるようトライ&エラーをしながら事業を続けている「社会的企業」が、台湾にはたくさんあるのです。
億規模の成長を果たす「社会的企業」が続々登場
台湾KPMGでアジアパシフィックのESG責任者を務める黃正忠さんがおっしゃっていた言葉には励まされます。
黃正忠さんによれば、売上高(営業額)が5,000万元や1億元の社会的企業もあるそうです。
彼らが成功する秘訣は、サステナブルな循環を実現すること
いわば“成功した”といえる、こうした台湾の「社会的企業」たちは、良い循環を作ることで、サステナブルを実現しているそうです。
BtoC(対消費者)はもちろん、BtoB(対企業)に対してもサステナブルな循環を実現する
支持を得る
サービスや商品を買ってもらう
コラボレーションして新たな共同価値を作る
例①「自分たちの牛乳は自分たちで救え」をスローガンに、絶大な支持を受け続ける「鮮乳坊 BetterMilk」
台湾で今最も支持されている(個人の感想)牛乳メーカーは、間違いなく「鮮乳坊 BetterMilk」でしょう。
過去、台湾で食品安全の問題が起こったことをきっかけに、乳牛専門の獣医である龔建嘉(Chien-Chia Kung)さんが作った酪農ブランドで、今や台湾のコンビニ(Family Martなど)やスーパー(カルフール、全聯、大潤發、主婦連盟など)、カフェ(スタバを超える店舗数の台湾カフェチェーン「LOUISA COFFEE」)、レストランなど幅広い場所で見かけることができます。
台湾人が自分たちで作った牛乳ブランド
2014年、台湾では業界や消費者を震撼させた食品安全事件が起こりました。台湾の油工場が、実は「廃油ラード」で製造していた油を取引先(学校給食にまで!)に卸していたということが明らかになった事件です(当時の私のブログはこちら)。
この食品安全事件を受け、台湾の食品ブランドは消費者たちからの信頼を失い、(本当は真剣に製造していたとしても)大きなダメージを受けました。
そこでこの乳牛専門の獣医、龔建嘉(Chien-Chia Kung)さんは「自分たちの牛乳は自分たちで救え」をスローガンに、2015年にクラウドファンディングで5,000名から608万元(約3,000万円強)を調達しました。
その後も2020年にA2βカゼインのみを含む牛乳(牛乳が苦手な人にも飲めると評判)を商品化するためにクラファンを行い、ミシュランレストランのオーナーシェフアンドレ・チャン(江振誠)さんらも支持を表明、台湾を代表するグラフィックデザイナーのジョー・ファン(方序中)さんのチームによるデザイン協力などを経て、最終的には目標の120万元を大幅に上回る741万元(約3,500万円強)を調達するなど、幅広い支持を得ています。
↓ 創業者で乳牛専門の獣医、龔建嘉(Chien-Chia Kung)さんによるTEDスピーチ
台湾のカフェやレストラン(朝食店を含む)を訪れると、かなりの高確率で「鮮乳坊」のロゴステッカーが貼ってあります。お店の方が「うちは鮮乳坊の牛乳を使っています」と言うだけで、消費者である私にそのお店が大切にしている価値観が伝わるくらいの存在感です。
「消費が投票になる」体験をいたるところでできる台湾
「鮮乳坊」はオフィシャルサイトで「 2015-2022年度の振り返り」資料を公開されています。
2020年12月には「B Corporation(Bコーポレーション)」の認証を取得しています(認証の取得はなかなか難しいと聞いたことがあります)。
こうして継続した情報発信が、「このブランドを応援したい」という意志に繋がっているのだろうなと思います。
私自身も一人の消費者として、「鮮乳坊」を支持しているFamily Mart(日系企業です!)や、カフェチェーン「LOUISA COFFEE」をできるだけ利用するようにしようといった気持ちがあります。
ただ、そもそもこのメタンガス削減に向かうべき世界で、牛乳を飲むべきなのか、これからの乳牛魚はどうあるべきなのかといった点についてはぜひ彼らの意見を聞いてみたいところでもあります。
個人的には追いかけていきたいテーマなのですが、ご興味ありますか?
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