NHK歴史大河ドラマ「光る君へ」、彰子を演じた見上愛による渾身の演技
平安時代を扱った、NHK歴史大河ドラマ「光る君へ」。今まで人気の戦国時代でもなく、幕末でもない。見知った人が番組スタッフに関わっているので、「平清盛」が大コケしたことから心配だったが、今のところ好評のようで安堵。
https://www.nhk.jp/p/hikarukimie/ts/1YM111N6KW/plus/
これまでドラマは最終回が終わってから感想を書くようにしていた。だが第35回「中宮の涙」があまりに良かったのでフライング。ここまでで出色と感じた俳優は、権大納言・藤原実資の秋山竜次、清少納言を演じたファーストサマーウイカだった。しかし今回の見上愛(みかみあい)は圧巻だった。藤原道長の娘である中宮・彰子は、まだ幼い頃に入内した。しかも一条天皇は、前の中宮であった定子にしか心を許していなかった。極度の内気から、帝の御前で何も話せなかった彰子。そんな中宮に帝も気詰まりを覚えて、親王に会いに来る時以外は彰子のところにはお渡りにならなかった。しかし彰子は、帝が魅せられたまひろ(藤式部=紫式部)の「源氏物語」に興味を示した。物語について話し合ううちに、次第に彰子はまひろに心の内を開いてゆく。彰子の帝への想いに気がついたまひろは、思いの丈を帝にぶつけるように彰子に進言する。躊躇う彰子だったが、帝が親王に会いに来た時に、唐突に「お上、お慕いしております」と涙グショグショで訴える。適切な表現ではないかもしれないが、その光景は鬱病で引っ込み思案だった子供が、勇気を振り絞って、友だちに声を発したように聞こえた。
今回放送までに、見上愛は感情を押し殺すような演技をずっと続けていた。抑圧された感情が、一気に爆発したようだった。実際には見上愛は、日産自動車のCMにも出演していて、弾けるような笑顔を見せている。だから中宮彰子の沈み切った様子は完璧な演技である。観る側も、観られる側も貯まったエネルギーが破裂した。この後、彰子の人生は良き方向に一変する。見上愛、23歳。演劇の裏方志向から、女優デビューは2019年。目がデッカい。古川琴音、高石あかりと共にファニーフェイス女優に数えられる。たしかに3人とも独特の雰囲気。その中でもコンプレックスのある役にハマる異彩を放っている。