今さらながら改めて、杉江由次『「本の雑誌」炎の営業日誌』(無明舎出版)を読んでみた
今さらながら改めて、杉江由次『「本の雑誌」炎の営業日誌』(無明舎出版)を読んでみた。無明舎出版は秋田県の出版社で、その選択も素敵。
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35歳の働き盛りな一人営業マンによる5年間の業務日誌。書店から書店を足で回り、多くの書店員さんたちと心を通じる積み重ね。『よくここまでできるな』と、改めて感嘆することしきり。自分にはこんな努力はできなかった。そして本の雑誌社の営業と本屋大賞の運営を両輪のように回す日々。仕事オン仕事である。そこに浦和レッズ命のサッカー熱が加われば、時間なんてあってなきがごとくだろう。文章も軽妙洒脱にして素晴らしい。特に家族ネタはユーモラスで、そして時に涙を誘う。著者だけでなく、トップも編集部も事務員も、心が通い合った良い職場だ。鳥獣戯画的に描かれているが、そこにはお互いにリスペクトがある。ずいぶん前に焼き餅を焼いて文句を言って、自らを『恥ずかしい』と思う言葉で返されたことは今でも忘れられない。
ただ今になって思うことは、出版業界を取り巻く環境や、本の世界は大きく変わったこと。この本が刊行された2008年から16年が経つ。著者が回っていた多くの取次や書店が閉まった。そして電子書籍が発達して、漫画市場は紙と電子が逆転し、雑誌は衰退の一途を辿っている。実はこの本を再読するに当たり、紙の本を久しぶりに読んだ。昨年に白内障手術をする前は、視力的に電子書籍でないと読めなかった(手術後は大丈夫になった)。電子書籍の業務に従事したこともあって、紙の本を読むのはすっかり奥手になってしまった。この本も二段組みだったので、読むのには手こずった。2024年の営業マンはかくあるべきかを訊いてみたい。やるべきことは変わらないのかもしれない。危機的状況だからこそ本屋大賞の存在が貴重になっているのかもしれない。来年こそは発表会に行ってみよう。
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