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知財実務オンライン「米国出願のための特許クレームの英語―AI機械翻訳時代の特許翻訳者の視点から」を視聴

2025年1月23日に放送された、知財実務オンラインは、特許翻訳の中山裕木子さんが登場され、米国特許出願向けの日英翻訳がテーマでした。

中山さんは、書籍の「外国出願のための特許翻訳英文作成教本」も昔買って読んだこともあったり、かつてどこかの取引先のセミナーで、講師として来られていたときに話を伺ったこともあり、言語方向は逆ですが、特許翻訳の大先輩として活躍されているのをずっと知っていたので、ついに知財実務オンラインにも登場か、と、驚くとともに楽しみにもしていました。


配信内容は、①シンプル英語で英訳をする、②クレーム翻訳時の留意事項、③翻訳小ネタ(日本語の「側」と、英語の"side"は必ずしも一致しない、なと)の三部構成になっていて、一通り視聴した上で、一番納得したのは、②の内容でした。


具体的には、機械分野が主になるとは思いますが、英訳時に、構成要素の特徴表現を、現在分詞を使って表すのか、過去分詞を使って表すのか、to be 過去分詞とするのか、configured toと用いるのか、などの微妙な意味、解釈可能性の違いの解説がされたのと、条件を表す場合にifを使うのは不適切ではないのか、そこから発展して、boiler plate(明細書に盛り込まれる、語句の説明・定義)を充実させる(特定の表現は、複数の意味で用いられることを明記しておく)ことの提案をされていた2点が、この章で触れられていたことでした。


この2点は、英日翻訳をしている私も同意する内容でした。


まず、構成要素の特徴をどのような表現を用いて表すかに関してですが、英語原文の場合でも、
・現在分詞
・過去分詞
・to be 過去分詞
・configured to
などの、様々な修飾語句が用いられており、それらの微妙な違いを、明細書の他の箇所の記載から解釈して、どのような表現を使い分けることで、明細書全体の整合性がとれるのか、ということはしょっちゅう考えます。


一番良いのは、明細書を書いたクライアントに直接質問することなのですが、英日案件で海外の出願人にそれを行うのは現実的ではないので(間に入っているのが特許事務所あれば可能性はあるのですが、PCT出願用の翻訳文の作成のために、翻訳だけを翻訳会社に依頼している場合、絶望的)、一翻訳者としてできることを考えて対応するしかない、というのが実情です。


この件に限ったことではないですが、日英翻訳で、原出願者が日本にいて、様々な質問や提案をできることは、特許制度を鑑みても、英日(外内)よりも有利というか、恵まれていることだと思いました。



続いてのboiler plateの充実に関しても、全くもって同じ意見でした。

かつてのnoteに書いたことですが、


英語と日本語(というよりも、翻訳という、異なる言語間で意味や表現の移行を伴う作業)では、当然ながら、原文に書かれているAという表現が、訳文におけるαと、必ずしも一対一で対応しているものではありません。


そういう場合が往々にしてある中で、無意識的にというか脳筋でというか、辞書に記載されている表現をそのまま用いることで、訳が不適切になってしまうことが往々にしてあるため(しかも、特許翻訳という、ワンポイントの実務で対応できないものも多い)、一翻訳者としては、元となる明細書の記載を充実させる、翻訳しやすいものにする(外国出願を見据えた内容にする)ことが必須と考えるに至りました。


この考えとまさに同じことが、今回のYouTubeで話されていて、自分の考えていたことはあながち間違ってはいなかったんだな、ということを知れて良かった、というのが正直なところです。


普段、英日の翻訳を9割以上行っている私ですが、同言語方向の別分野、逆言語方向の同分野、更には特許実務、訴訟などにも興味を持って首を突っ込み続けることで、少しでも自分の仕事を良いものにしていけるのではないか、ということも改めて確認することができました。


私も知財実務オンラインには登壇したいと思っているので、そのときにはとっておきの内容をひっさげていけるように、これからも引き続き精進していきたいと思います。

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