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幸福論考(番外編):きっと大爆発が起こる。

心のビッグバン

 今から約5万年前(紀元前4万8000年頃?)に、加工された装飾品、絵画や彫刻などの芸術作品が一気に現れたという現象のことを「心のビッグバン」もしくは「文化のビッグバン」という。

アルタミラの洞窟壁画(引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%A9%E6%B4%9E%E7%AA%9F

枢軸時代

 紀元前5世紀頃、インドで仏教・ヨーロッパでギリシャ哲学・中国で儒教や老荘思想・中東で旧約聖書の思想などが"同時多発的”に起こった現象のことを「枢軸時代」もしくは「精神革命」、もっとフランクには「知の大爆発」という。ちなみに「枢軸時代」という言葉の意味は「世界史の軸となる時代」という意味。

こちらはRie.Kさん(https://note.com/rieto283/)の記事「世界各地に思想家現る...(紀元前500年前後)」(https://note.com/rieto283/n/n3332ba508186)から引用

人口・経済との関係

 広井良典氏によるとこれらのいわば「知の大爆発」は人口の増加・経済の拡大がある種の飽和点に達したときに惹起されたという仮説を立てている。

引用:https://toyokeizai.net/articles/-/325646?page=2

このディーヴェイの図式に広井氏の仮説を当てはめたものが下図。

引用:https://ideasforgood.jp/2021/10/29/hiroiyoshinori/

 最近の環境史研究によると枢軸時代を迎える直前の時代は農業文明が成熟し、一方で資源や環境をめぐる根本的な限界に直面しようとしてた時代だったとのことで、心のビッグバン前もこのような事態に類似した状況にあったのではないかというのが広井氏の仮説である。
 つまり、

単純にモノの豊かさでは人々の幸福に直結しないということが意識されるようになっていた

『福祉の哲学とは何か―ポスト成長時代の幸福・価値・社会構想』広井良典 ミネルヴァ書房 p57

 ということで、物質的な幸福ではない「新しい幸福の形」を希求するエネルギーが蓄積され、一気に爆発したのが「心のビッグバン」や「枢軸時代」だったのではないか、ということである。

 そして、「単純にモノの豊かさでは人々の幸福に直結しないということが意識される」のはまさに、我々の現代社会そのものじゃないだろうか。

もうすぐ大爆発が起こる。

 条件は整ったということだと思う。
 これまで「心のビッグバン」「枢軸時代」が引き起こされたのと同じ条件が。

 それでは今回はどういう形で起こるのだろうか。
 ここからは私の意見である。

 これまでの二大爆発と現代の環境で大きく異なるのは、IT技術によって全世界が繋がっていることである。
 ということはどういうことかというと、世界中の「知」が世界中の「知」と繋がる機会があり、かつそれが時間的制約がほとんどなく行うことが可能だということだ。言い換えるととんでもない数の「知の交流」が世界のあちこちで同時多発的に毎分毎秒行うことが出来る。

 そして、もう一つ大事なことは、その「知の交流」は学者や有識者のような"ごく限られた者”だけではなく、私のような一般市民も参加できるということだ。

 幸福の追求は知識人だけの特権ではない。
 これからは自然科学と社会科学などの分野を超えた学際的交流だけではなく、学問と生活の実感知など、いわば「在野の知」との交流が学問の限界を突破させていくものとして重要になる。
 そしてそれは、例えばこのnoteやpodcastがそうであるように、条件的には十分可能となっている。

 よって、これから必要なことは、さらに個々人が自身の考えを発信すること、受信すること、そしてその発信を受信した他者がその考えを解釈し、さらに深めて、自分なりの考えをまた発信すること。
 こうして人類全体での止揚が繰り返され、そのスピードが加速していった先に、現代の「知の大爆発」が起こるのではないだろうか。もちろんそのベクトルは「幸福とは何か?」だ。環境問題やウェルビーイングについて問い直されているのもその萌芽だ。
 これが私の仮説である。

 そしてその大爆発は起こる。もう起こり始めている。

<参考文献>
『福祉の哲学とは何か―ポスト成長時代の幸福・価値・社会構想』広井良典編 ミネルヴァ書房

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