足元さえ見えていれば十分だ
エマ・ワトソンも陥った。
突然ですが、「インポスター・シンドローム」って知っていますか?
「ハリー・ポッター」シリーズでハーマイオニー・グレンジャーを演じたエマ・ワトソンさんも罹ったことで話題になりました。オバマ元大統領の奥様であるミシェル・オバマさんも罹ったことがあるとオープンにしてるみたいです。
インポスター・シンドロームとは
一応、簡単に説明しておくと日本語訳では「詐欺師症候群」となるらしいです。えらく禍々しいネーミングですね。ただ疾患でなく心理傾向です。
内容としては、成功を収めた人が「その成功は自分の実力ではなく、ただ運が良かっただけで、いつか自分の本当の実力が周囲にバレてしまうのではないか」という不安に苛まれるといったものです。
すごく身近にあるもの
エマ・ワトソンとかミシェル・オバマといったビッグネームを出したので、遠いことのように感じられるかもしれませんが、実際はかなり身近な症候群です。何故なら、何を隠そう、僕も罹ったことがあるからです。
その当時はインポスター・シンドロームという言葉も知らなかったので、自分がそういった症候群に罹っているとは夢にも思わなかったのですが、一昨年、そして去年の後半にさしかかる辺りまで、間違いなく僕はインポスター・シンドロームに罹っていました。
あれ、かなり厄介です。
契機は転職
その萌芽は上場企業を退職するときにあったと思います。
「この会社にだけ通用する人間になりたいんじゃなく、どこにいっても通用する人間になりたい」と思って退職したのですが、その反面「今まで通用していたのはこの会社だったからなのではないか?」という思いが払拭されないままでした。
僕より先に転職した同僚や仲の良かった人は、ITスキルや経営企画スキルを持っており、転職活動をしていても多くの会社からひっぱりだこの状況でした(少なくとも僕からはそう見えました)。
それに比べて僕は多少のマネジメント経験はあるけれど、それはごくごくニッチな分野での話。自分のことを見れば見るほど「自分は市場から求められるような人物じゃないのではないか?」「通用しないのではないか?」という思いが自分の奥深くにこびりついていきました。
なかなか振り切れない
巡り合わせも良くなかったのかもしれません。転職した先の医療法人は自分にはマッチせず、なかなか思い描いた通りにはいきませんでした。
当時の同僚や部下の人達からは、ありがたいことに、むしろ好いフィードバックをもらっていたのですが、その言葉では内なるインポスターは振り切れませんでした。フィードバックを疑っているわけではないのですが、それ以上に自分を疑ってしまう気持ちが強いのです。
そこも退職して現職に就きましたが、やはりしばらくはインポスターは振り切れませんでした。
その頃の自分の気持ちで代表的なものを1つ出すと「貢献できていない」というものです。これが非常に強かったです。
せっかく声をかけてもらって、面白そうな会社に入れてもらったのに、自分は期待されたような貢献が出来ていない。期待はずれで終わってしまう。そういった思いが一年の4分の3が過ぎる辺りまで続いていたような気がします。
今思えば、初めての土地・初めての会社に単身赴任してそこのカルチャーや風土に慣れるところから始めているから、いきなりそんな劇的な結果をもたらすことなんか出来なくても当然なのですが、とにかく「貢献できていない」気持ちに支配されていました。
振り払えたもの
幸いなことに現在はだいぶ払拭できていると思います。多少なりとも会社に貢献できている自信もついてきました。
それが出来るようになった要因の1つは周囲からのフィードバックがあります。さきほど周囲からのフィードバックがあっても内なるインポスターは振り切れなかったと書きました。それは間違いなくその通りなのですが、自分を信じるステップに足を乗せたときに、この貯金していた周囲からの正のフィードバックが効いてきます。インポスターの沼から這い上がっていく背中を上へ上へと押し上げてくれました。本当に感謝です。
ではその自分を信じるステップにどうやって足を乗せたかという一番大事なところですが、それは「小さな成功・貢献に目を向ける」ということを繰り返したことにあると思います。
それは本当に小さなことです。例えばメンバーと飲みに行ったとかです。成功とも貢献とも思えないかもしれませんが、そのおかげでメンバーから話しかけられることが多くなったと感じ、「メンバーと経営陣の距離を詰められた」と思えたら小さな貢献だと思えます。実際にこのレベルの小さな小さな貢献に目を向けていきました。
そして自分を疑う気持ちが強くなる日などは、ドライブに出かけたりして環境を変えて、「でも俺、こないだ○○で貢献したしな。」と自分の足跡を確認していました。
これは意識的にそうしていたわけではありません。恐らく鬱状態にならないように、本能的に、自分が必死にもがいていたのだと思います。
小さな一歩でも積み重ねていくと、振り返ってみると「けっこう歩いて来たな」という長さになります。貢献もそうです。それが自分の腑に落ちたとき「俺、割と貢献できてるんじゃない?」という自信の復活に繋がり、そのときに貯金していた周囲のフィードバックが聞こえてくるようになり、インポスターを振り切ることが出来ます。
足元さえ見えていれば十分だ
インポスター・シンドロームは、遠くばかり見て「まだあそこに辿り着かない!」と悲観しているのと同じです。
遠くを見渡せる目を持っているのは素晴らしいことです。
行きたい方向がはっきりわかっているのも素晴らしいことです。
しかし、それにばかり囚われていては自分が前に進んでいることにも気づかなくなってしまいます。
一回、足元を見ましょう。
そして、前を向きましょう。
それだけで歩いていけます。
<著書『フォロバ100%』Amazonにて販売中✨>