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#旅
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-4)
眼を開いた先には、青色が広がっていた。
今までに一度も見た事もない、混じりけなく、でもどこまでも奥行きがあるような、それは青だった。
「右目もつけるよ、こっち向いてね」
シキの呼びかけに、急に我に還る。
もしかして今、空を見ていた? あれほど嫌いだったはずの空を?
「両目で見た方が、きれいに見えるよ」
シキがわたしの心を見抜いたような一言をささやいた。何も言い返せない、いや、言い返そうと思わなか
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-3)
あれ、この感じ前にもあった、なんだっけ、って思った瞬間。
二つのコーヒーキャンディが、同時に引き合うように動いた。
ぐいって音が聞こえた気がした。生きている人の眼じゃない感じ。寄り眼、ってやつ。
「わわっ」思わず素の声がでてしまった。怖いってのユーレイのそれとは違うけれど。
「ミノルの負け、ありがとう!」
シキが眼を戻し、嬉しそうにいたずらっぽくパ行で笑う。ぷぷぷ。
「笑うな何が『ありがとう』だ
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-2)
「あ、そういえば」シキが声をあげた。
何が『そういえば』なのか。話の流れも脈絡もない。
「ミノルと話していて、思ったことがあるの」
「何。わたしまだ何も言ってないんだけれど」
「そう、何も言ってないね、分かってる。だって」
と言うと、シキは自分の顔をわたしの顔に寄せた。
30㎝の距離。くっきりとした瞳で見つめてくる。心の底まで見られそうな感じがして、無意識に視線をそらしてしまった。
シキの感じが伝
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-1)
たった1秒で未来が変わることもある、と何かで聞いた。別に試験に合格しなくても、宝くじが当たらなくても、オーディションのグランプリにならなくても、世界新記録を打ち立てなくても。
その変化はお昼休みにやってきた。
「都倉ちゃん、ちょっとこっち来て」
顔を向けずに視線を移す。声の主は森の小動物楽団の主人公、コジカさんだ。コジマナナカで略してコジカ、アザラシ間の密かな暗号だった(悪口じゃない、念のため)。
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート5-2)
いいかげんにしろ! と叫んだのは心の中だけで、シキに伝わる前に言葉を飲み込んだ。
だって、シキが言ったこと、少なくともその3は、ばっちり当たっていたから。
「あれ、もしかして当たり? この話題でもう少し引っ張ろうと思ったんだけれど」相変わらずの陽気なシキの言葉が、逆にイラッ、とした。
「うるさい!」思わず叫んだ。きっときつい表情でシキをにらんでいたんだろう、猫がしっぽを太くして威嚇する感じ。フー
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート5-1)
「ああ、晴れてていい感じ」
屋上の秋晴れ、2人きりの昼休み。大きく深呼吸した後、心から息を出すように言ったのは、もちろんわたしじゃなくシキだった。
「真っ青だけれど、適度に綿雲が浮かんでいる空。木々の色もカラフル。本当にカラーがフル。風も適度に吹いてて乾いてる。晩秋の日。すばらしいよね」
そういって、パックの飲料に口を付ける。ちゅー。この間と違う、肌色に、上の方だけ焦げ茶色のパッケージ。
「今日は
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート4-2)
ふと、考えてしまう。自分もいつかは良識と分別を、性格に取りそろえた大人になるのだろう。
でも、そんな良識と分別は本当に自分にとって今この瞬間、必要なものなんだろうか。
そうじゃない。今はまだたぶん、としか言えないけれど。
かといって、滑り台やブランコで遊ぶ勇気もない。多分今日のゴールはここじゃない。進むしかない、んだよね。
ターミナル方向に歩くと公園は途切れ、遊歩道はアイボリーベージュ、
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート4-1)
『Y』の文字が、気がついたら高速道路に見えることがある。なんておかしいよね。自分のことなんだけれど。シントシンには不似合いのお寺の横。Yの字高速道路を見上げながら、また歩き出した。
コーシューの右側を東、幅4mくらいの歩道をターミナルの方へ進んで行く。高速はお寺の敷地の端あたりで、高度を下げながらぐっと左90度に曲がる。この間気づいた通りスロープを下って普通の道になるのだろう。わたしが最初に、橋の
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート4-2)
「いつもご機嫌、たて、だよね」
「何、どういうこと?」
「だから、いつも不機嫌ってこと。ななめ、っていうよりは怒りが強力だから、たて」
何だよそれ、反射的に思った。何、何、何。さっきから、そればっかり言ってるような気がする。こんな時の自分は、多分ぱっとしない、ダメな顔をしてるんだろう。
「どうしたの? 何かイヤなことがあった?」
シキが10度と少し、首をかしげながら聞いてくる。シキは、自分が美少女
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート4-1)
晴れの日が続いている。窓から差す程よい日差し、肌寒さをやわらげるあたたかさ。もうすぐ紅葉でさらに少ししたら冬、なんて感じさせないような秋の一日。
あれから、アザラシたちの居場所はあったり、なかったりだ。別に他のアザラシたちと仲違いした訳じゃない。急に群れを抜けた違和感は残っているけれど。
それよりも、やってきたのは忙しさだ。秋は体育祭、文化祭、中間テストに合唱コンクールと、いろいろとイベントがやっ
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート3-1)
また、コーシューとカンロクの交差点を渡り、この間の続きを歩いている。
ジャイアントマンの横をこっそり通り過ぎた。
あいさつはしなかった。ばからしいと思ったからじゃなく、いらない、と思ったから。区切りをつけなくてもいいことだってある。多分またジャイアントマンはずっとあごかがくがくさせているだろうし、太陽型の広場も当分あるだろう。人に成長してもアザラシは結局アザラシだろうし。これは関係ないけれど。
交