- 運営しているクリエイター
記事一覧
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート6-3)
「一緒に来ない? 世界が変えられるかも」
鏡に光に反射するように声が聞こえてきた気がして、急いで右を見た。
道の先はコンクリート色の、ただの駐車場だった。声の元になりそうな人はいないし、ましてや同志を勧誘するレジスタンスも、志願者を求める未来警察もいないいる訳がない。
何を動揺しているんだろう、実際に聞いていない言葉が聞こえるなんて。
でもここにいると、世界がひとつではない気がしてくる。別に地球の
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート6-2)
ゆっくりと自然に手を伸ばす。反射する白色の大理石風の壁に私の手は、吸い込まれそうになって
ぴとっ。
伸ばした指先に、ひんやりした感触が伝わる。
現実は一歩も動く気がないみたいだ。まあそりゃそうだけどさ、我ながらひどい妄想。今に始まった話じゃないけれど。
先に進む。やけに明るかった場所は、ショーウインドウみたいな、アートの展示スペースだった。さっきのへこんでいる壁と同じくらいの大きさのガラスの向こ
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート6-1)
ここはどこだよ。
正面の壁を前に思わずつぶやいた。そこには地下街が広がっていて人々が行き交うはず、なのに。
元はといえば、ターミナルの地上でロータリーや王冠のマークのデパートに向かいに立って見回した。そしたらそっぽを向いてるこの入口を見つけて、地下階段、この間降りた所のすぐ隣を転がり落ちる石のように駆け下りた 、
なんということはない行動、だったんだけれど。
右をちらっと見る。そのさらに90度右、
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-4)
眼を開いた先には、青色が広がっていた。
今までに一度も見た事もない、混じりけなく、でもどこまでも奥行きがあるような、それは青だった。
「右目もつけるよ、こっち向いてね」
シキの呼びかけに、急に我に還る。
もしかして今、空を見ていた? あれほど嫌いだったはずの空を?
「両目で見た方が、きれいに見えるよ」
シキがわたしの心を見抜いたような一言をささやいた。何も言い返せない、いや、言い返そうと思わなか
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-3)
あれ、この感じ前にもあった、なんだっけ、って思った瞬間。
二つのコーヒーキャンディが、同時に引き合うように動いた。
ぐいって音が聞こえた気がした。生きている人の眼じゃない感じ。寄り眼、ってやつ。
「わわっ」思わず素の声がでてしまった。怖いってのユーレイのそれとは違うけれど。
「ミノルの負け、ありがとう!」
シキが眼を戻し、嬉しそうにいたずらっぽくパ行で笑う。ぷぷぷ。
「笑うな何が『ありがとう』だ
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-2)
「あ、そういえば」シキが声をあげた。
何が『そういえば』なのか。話の流れも脈絡もない。
「ミノルと話していて、思ったことがあるの」
「何。わたしまだ何も言ってないんだけれど」
「そう、何も言ってないね、分かってる。だって」
と言うと、シキは自分の顔をわたしの顔に寄せた。
30㎝の距離。くっきりとした瞳で見つめてくる。心の底まで見られそうな感じがして、無意識に視線をそらしてしまった。
シキの感じが伝
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート6-1)
たった1秒で未来が変わることもある、と何かで聞いた。別に試験に合格しなくても、宝くじが当たらなくても、オーディションのグランプリにならなくても、世界新記録を打ち立てなくても。
その変化はお昼休みにやってきた。
「都倉ちゃん、ちょっとこっち来て」
顔を向けずに視線を移す。声の主は森の小動物楽団の主人公、コジカさんだ。コジマナナカで略してコジカ、アザラシ間の密かな暗号だった(悪口じゃない、念のため)。
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート5-2)
「なんだか、かわいい」
急に声が聞こえた気がしてわたしは振り返った。
どこかで聞いた声。まさか、と思ったけれど、予想は外れていて自分が見覚えが有りそうな人は誰も居なかった。でもビルの上、看板の広告の内一つ、商品はシャンプーだろうか、どこかで見たような顔に見えた。もう一度ちゃんと見直す。
写真は好感度の高い、ある若手女優のものだった。華やかさも年齢も勘違いした子とは別物だ。そんなはずは無い、よね気の
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート5-1)
夕方がやってくる。わたしはまた、地下通路からコーシューの出入り口の階段を上がる。この間の続き、右のターミナル方向を向いてみる。
左側には、わたしの腰くらいの高さの低い木が植えてある。まとまっていて、ひとつの木の大きさが分からない。もこもこ、と生えそろっている感じが緑色の雲を連想させる。
その緑雲の林を切り開くように、自転車置き場がある。色とりどりの自転車の下、黄色と銀色の車輪置きが、鉄塔を立てる大
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート5-3)
と、急にシキは振り向きわたしの顔をのぞき込んだ。
何だよいきなりそんなに見るな。面白い顔なのかもしれないけれど。
「さて、ここで問題です。彼はこのお金で、何をしたのでしょうか?」
「何それ。答えて何か意味があるの?」
「意味があるのかは分からないけれど、大切だとは思うよ」
ろくに根拠もないはずなのにどうしてそう自信満々に言えるかな。シキに7割くらい、あきれてみた。
でも、残り3割くらい、違う気持
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート5-2)
いいかげんにしろ! と叫んだのは心の中だけで、シキに伝わる前に言葉を飲み込んだ。
だって、シキが言ったこと、少なくともその3は、ばっちり当たっていたから。
「あれ、もしかして当たり? この話題でもう少し引っ張ろうと思ったんだけれど」相変わらずの陽気なシキの言葉が、逆にイラッ、とした。
「うるさい!」思わず叫んだ。きっときつい表情でシキをにらんでいたんだろう、猫がしっぽを太くして威嚇する感じ。フー
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Aパート5-1)
「ああ、晴れてていい感じ」
屋上の秋晴れ、2人きりの昼休み。大きく深呼吸した後、心から息を出すように言ったのは、もちろんわたしじゃなくシキだった。
「真っ青だけれど、適度に綿雲が浮かんでいる空。木々の色もカラフル。本当にカラーがフル。風も適度に吹いてて乾いてる。晩秋の日。すばらしいよね」
そういって、パックの飲料に口を付ける。ちゅー。この間と違う、肌色に、上の方だけ焦げ茶色のパッケージ。
「今日は
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート4-2)
ふと、考えてしまう。自分もいつかは良識と分別を、性格に取りそろえた大人になるのだろう。
でも、そんな良識と分別は本当に自分にとって今この瞬間、必要なものなんだろうか。
そうじゃない。今はまだたぶん、としか言えないけれど。
かといって、滑り台やブランコで遊ぶ勇気もない。多分今日のゴールはここじゃない。進むしかない、んだよね。
ターミナル方向に歩くと公園は途切れ、遊歩道はアイボリーベージュ、
(試作 パイロット版)(学園もの→まち歩きものに見えて、じゃないストーリー Bパート4-1)
『Y』の文字が、気がついたら高速道路に見えることがある。なんておかしいよね。自分のことなんだけれど。シントシンには不似合いのお寺の横。Yの字高速道路を見上げながら、また歩き出した。
コーシューの右側を東、幅4mくらいの歩道をターミナルの方へ進んで行く。高速はお寺の敷地の端あたりで、高度を下げながらぐっと左90度に曲がる。この間気づいた通りスロープを下って普通の道になるのだろう。わたしが最初に、橋の