Tell all the Truth but tell it slant — 真実は
Tell all the Truth but tell it slant —
Success in Circuit lies
Too bright for our infirm Delight
The Truth’s superb surprise
As Lightning to the Children eased
With explanation Kind
The Truth must dazzle gradually
Or every man be blind —
真実は余すことなく、しかし斜めに語りなさい
嘘も回り道も成功の鍵
私たちのひ弱な喜びにはまぶしすぎる
真実の壮麗な驚きは
やさしく、寄り添い説くことで
子どもが稲光のおそれを和らげるように
真実もゆっくりと明るみに出なくては
誰も何も見えなくなってしまう
土曜日、友人と三人で飲みました。16時15分に駅に集まり、スーパーで買い物をして友人宅へ。僕と、友人と、友人の同僚。このメンバーで飲むのはこれで二回目です。彼女は前回の記憶があまりないらしく(けっこう飲んでました)、でもなんだか楽しかったことは覚えているということで、今回は前回にもまして打ちとけた、楽しい会になりました。
ところで16時15分は早すぎないか。僕もそう思いました。同僚の終電にあわせて0時ごろまで飲んでいたので、8時間ちかく一緒にいたことになるのですが、いったい8時間も何をしゃべっていたのか……もちろん詳細には覚えていません。しかし、彼女が、
会社の外で新しい人と出会いたいこと、
お酒の味が分かるようになりたいこと、
色んな人にそれぞれ良いところがあること、
誰にでも言うお世辞ではなく、自分に言われた褒め言葉が嬉しいこと、
一人の時間も大切にしたいこと、
会話術の本を読んでること、
自分の意見を持ちたいと思っていること、
そんなことをぽつぽつとこぼしていたのを覚えています。
このぽつぽつ、というのがポイントです。人は自分がどんな問題を抱えているのか、何が言いたいのか、そういうことをいつもハッキリと言葉にできるわけではない。でも、なんとなく今の生活に満足できなくて、なんとなく誰かと話したいと思っている。それは僕も同じだし、彼女もそうだったのかもしれません。
冒頭のディキンソンの詩は、自分が気づいた真実を、相手に伝えようとするときのコツを教えているように読めます。
しかし、詩は、あるいは「彼女」の言葉は、こうも読めるのではないでしょうか。
彼女はどこかで本当は気付いていながら、しかし真っ直ぐに向き合うには困難な自分の問題についてぽつぽつと語っていたのだと。
挨拶や近況報告やその場限りの話題で終わってしまうような短い時間では、自分自身のこと、ほんとうに話したいことは、なかなか話すことができません。
でも、8時間ならどうか。
真っ直ぐではなく、斜めにならどうか。
宴も終わり、二日酔いも覚めた僕はいま、彼女がぽつぽつと語ってくれた言葉の向こうに、何か、真実があるような気がしています。それが何なのか、未だハッキリとは分かりません。それでも、彼女が語ってくれたことに対して、僕も何か、応えなくちゃいけないんじゃないか、と。そんな気がするのです。
今回は(というか割といつもですが…)ディキンソンの詩からずいぶん離れてしまいました。
一つだけ言っておくと2行目の、
Success in Circuit lies
これを読んだとき、「嘘も回り道も成功の鍵」という訳がふっと頭に浮かんだのですが、倒置された語順を元に戻すと、
Success lies in Circuit
で、「成功は回り道の中にある」が正しい意だと思います。
しかし、映画や文学などについて考えると、嘘もまた、真実を伝える回路として機能するのではと思い直し、やはりそのままの訳にしておきました。
『THE COMPLETE POEMS OF EMILY DICHINSON』
THOMAS H . JOHNSON, EDITOR
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