【つの版】日本古代史・参考文献
ドーモ、三宅つのです。つのが日本古代史関係の記事を書く時に参考にしている文献集です。
つのは全くのド素人で、先行研究の上澄みを掬って浅瀬でチャプチャプしているだけです。インターネット上の記事や歴史読み物的な新書・文庫本などをつのなりに読み、図書館とかで調べて考えてはいますが、つのの書いていることを鵜呑みにはせず、あなたはあなたで調べて考えて下さい。
なお、つのは「面白いからこの方がいい」的な考え方をあまりとりません。やりたくばパルプ小説やマンガ、ゲーム、アニメなどフィクションの領域でやって下さい。センセーショナルに書けば本は売れるかも知れませんが、蓋然性に欠けた情報が拡散して独り歩きし、巡り巡って邪悪なカルトや反社会集団に利用されかねません。というか、されて来た歴史が厳然とあります。左右の思想に偏ることなく、つのなりに噛み砕いて、ここに提示します。
◆基礎史料◆
倭人伝・倭国伝
いわゆる魏志倭人伝など、チャイナ側の基本史料です。専門家による解説も要るでしょうから、文庫本サイズで使いやすいのをチョイスしておきます。古い本だと今は否定された古い説もあるため、あまり鵜呑みにしない方がいいですが、こういう説や解釈があり、なぜどのように否定されたかを知っておくことは大事です。また史書に記載されているのは「正確な」情報ばかりでは全くなく、実に多くの嘘や誇張、誤解や誤伝、誤記、神話伝説が含まれています。それらをひっくるめて「歴史」というのです。
チャイナの正史
倭人や倭国のことを知るには、周辺世界の知識も必要です。正史『三国志』は和訳もされていますので、教養や基礎知識として読んでおいて下さい。せめて東夷伝ぐらいは読んで下さい。三国志演義は正史を元ネタにしたフィクションです。余裕があれば他のチャイナの古典もどうぞ。
『後漢書』『晋書』や『宋書』などは和訳が少ないので、つのはチャイナ版wikisourceで原文に当たって読み、Wikipediaとかと比較してざっくりと読み解いています。漢文程度は漢字が読めてGoogle検索が出来れば読めますし、「倭」「百濟」とかで検索するとハイライトされて便利です。
こういうサイトやリンクもあります。いつもお世話になっています。
倭人伝、関連資料
http://www.seisaku.bz/wajinden_index.html
追記:webサイト「古代史獺祭」さんはupp.so-netだったので1/28に消滅してしまったようです。諸行無常。
この時代のチャイナをざっくり掴むなら、これらがいいでしょう。
日本書紀
日本の最初の国史、正史です。『古事記』は歌物語や神話伝説としてロマンはありますが、歴史書としては『日本書紀』の方が正史になります。倭語を介さない渡来帰化人や海外諸国にも読めるよう漢文で書かれており、当時の日本国が公式見解としてどのような歴史認識を持っていたかが理解ります。当然、実際にあった出来事をそのまま書き記しているわけではありません。
現代語訳もあることはありますが、漢文や読み下し文で読んだ方がいいでしょう。古来そのようにして読まれて来ました。岩波文庫版は解説も充実しておりお得感があります。こういうサイトもあります。
日本書紀、全文検索
http://www.seisaku.bz/shoki_index.html
日本書紀・現代日本語訳(完全訳)
http://kodainippon.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%9B%B8%E7%B4%80%E3%83%BB%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E%E8%A8%B3%EF%BC%88%E5%AE%8C%E5%85%A8%E8%A8%B3%EF%BC%89/
三国史記
1145年に高麗で編纂された、高句麗・百済・新羅の三国の史書です。朝鮮半島に現存する最古の史書であり、チャイナの史書はもちろん、この三国に関する記述がある『日本書紀』も参考にしたはずです。一応東洋文庫などから刊行されていますが、wikisourceにもありました。
好太王碑文
西暦414年に建立された、高句麗の好太王を讃える碑文です。この時期の第一級の史料であり、4世紀末から5世紀初頭の倭国や半島諸国の姿を垣間見る事ができる貴重な記録です。詳しくは記事で書きました。
◆概説書◆
倭国(岡田英弘)
つのの日本古代史記事は、おおむねこれに拠っています。1977年の本なので流石に古いですし、ややつっこみどころもありますが、この時代の「邪馬台国ブーム」を冷静にとらえ、チャイナの文献を基礎史料として東アジア世界という広い視点から日本列島の状況を俯瞰する好著です。『倭国の時代』『日本史の誕生』も読んで下さい。『世界史の誕生』も。
倭国の世界(上田正昭)
1976年の現代新書なので流石に古いですが、縄文時代から6世紀に至る倭国の様相を文献と考古学から大きくとらえ、飛躍や破綻がありません。
王権誕生&大王から天皇へ
講談社学術文庫の「日本の歴史」シリーズです。2000年刊行のハードカバーを2008年に文庫化したものなので情報は少々古いですが、弥生時代から倭奴国・倭国の成立、ヤマト王権の形成と発展については、これでおおよそ掴むことが可能です。邪馬台国九州説や東遷説、九州王朝説が成り立たないことは、考古学的にほぼ立証されています。
卑彌呼考(内藤湖南)
邪馬台国論争は江戸時代からあり、明治時代にも盛んに論じられました。内藤湖南は畿内説の代表者で、「四官」をヤマトの地名に比定するなどいい線を行っていますが、ああいう時代ですから限界はあります。この文章は青空文庫に収録されているため誰でも読めます。
笠井新也
笠井新也の卑彌呼・邪馬臺國論(矢吹晋)
http://www25.big.or.jp/~yabuki/2006-10/kasai-himiko07.09.pdf
1922年から1942年にかけて『考古学雑誌』に「邪馬台国は大和である」「卑弥呼時代に於ける畿内と九州との文化的並に政治的関係」「卑弥呼即ち倭迹迹日百襲姫命」「卑弥呼の冢墓と箸墓」という4つの論文を発表した人物です。当該論文は単行本や文庫本として出版されていないため又聞きになってしまいますが、論旨は極めて明確です。また瀬戸内海ではなく日本海ルートを提唱してもおり、つのもこのルートが最も蓋然性が高いと感じます(狗奴国を熊野としたのは違うんじゃないかな、と思いますが)。
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この他にも日本古代史関係の書籍は掃いて捨てるほどありますが、つのが記事を書く上で参考にしている基本的なものはこれぐらいです。あとは、つのの記事に時々提示してあります。読んでみて下さい。うっかり九州説や東遷説、九州王朝説などにハマると戻れなくなる恐れがあるのでご注意下さい。マジでご注意下さい。人間は容易に嘘を吐き、騙されやすい生き物です。
【以上です】
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