台湾嫁日記。『台湾風』高田亜季
地に足のついた台湾嫁入り生活記&日中比較生活文化記録です。内容だけでも興味津々なのに、文章もおもしろいので、すごく楽しませてもらえました。
この本が出版されたのは20年ほど前。現在の台湾は外見的にはかなり変化した部分があるかと思いますけれど、家庭内のことは、結構そのままなんじゃないかという気がしています。一番変わらないのはヒトの頭の中だから。
外国滞在記といえば、著者の体験した身近な例だけで「台湾では〇〇」とか「日本では✗✗✗」みたいに、すぐ一般論に結びつけたくなったり、住んでる国のいいところだけを紹介しがちですけど、そのあたりを高田さんが、かなり慎重に書かれているのもポイント高いです。
台湾は九州くらいの大きさですけれど、地域によって全然違うし、住んでいる人たちも多様。台湾のポリネシア系の先住民(台湾では「原住民」)は政府認定だけで16部族。その他、日本植民地時代以前に中国大陸からやってきた人、日本敗戦後に中国大陸からやってきた人などなど。特に、中国大陸からやってきた人たちは、地域によって言葉や文化が全然違います。
そして、最近は女性初のプレジデント・蔡英文の話題だったり、天才のオードリー・タンさんの記事や本が日本でも広く読まれたり、同性婚を認める法律ができたりと、かなり台湾イメージが先進的になりつつあります。でも、どんな国でも家庭の中とか会社の人間関係、地域社会って泥臭いですから。
したたかで、優しくて、個人主義だけど人間関係が濃い台湾の人たちに囲まれて、あっさり風味の日本人がどれだけ苦労するか。20年近く前に台湾で就職し、しかもお嫁入りまでしちゃった高田さんの日々は、単純には尊敬しかないです。
余談ですが、この本を読んで、長年不思議に思っていた台湾の謎がいくつか解けました。特に、客家(はっか)の一族郎党同居の部分は大笑い。私の台湾人の友達にも客家の女性がいるのですが、彼女の謎な話の1つに「高校卒業まで親戚以外の男性と口をきいたことがなかった」というものがありました。
最初にこの話を聞いたときは、「一体どういうシチュエーション?」と想像できませんでしたが、高田さんの本を読んでなるほど納得。20年後の今では、さすがにそんなことはなさそうですが、どうでしょう。また、友達に聞いてみたいです。