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台湾で阿嬤たちと端午節のちまき作り

昨日は日本では父の日だったらしい。

お姉ちゃんが朝、家族のLINEグループに、突然なんだか改まった父への感謝を書いた長文メッセージを送ったのをみて、やっと気づいた。

そこでしれっと便乗して、わたしも何か父への感謝の言葉を送れば良かったのに、ばか正直に、「もしかして今日って日本の父の日?忘れてたー、お父さんごめんね」と送ってしまった。

日本の、と書いたのは、台湾と日本の父の日は違うから忘れても仕方ないでしょ、という言い訳めいた気持ちが、無意識に出てしまったのだと思う。

昨日はわたしにとって、父の日じゃなくて、ちまきの日だったのだ。

ここ1ヶ月くらい、この1年に1度の、お義母さんと近所のおばさん達が集まってちまきを作る日を、わたしはとっても楽しみにしていた。

今週末は、端午節で、台湾では連休になる。

ちなみに、台湾には“補班”という制度があり、連休にするために、代わりにその前の週の土曜日に出勤して働かなくてはならない。

この端午節の時期になると、ちまきを食べる文化があり、旦那さんの会社でも社員にちまきが配られ、スーパーにはちまき予約受付中、といったポスターが貼られる。

近所の人からもいただいたりして、冷凍しておいて、今月はお昼ご飯に何度もちまきを食べた。

台湾では、このちまきの作り方には地域差があるそうで、お義母さんが作るちまきは北部スタイルで、蒸して作るため、もちもちとしたおこわのような食感だが、南部スタイルのだと、茹でで作るためにご飯がとても柔らかくて、こちらのほうが油っこくない。

南部スタイルのは悪くいうとベチャッとしているので、わたしは北部スタイルのほうが好きだ。

さて、その待望のちまきを作る日。

朝からお義母さんと住み込みのお手伝いさんが材料の仕込みに追われていた。

わたしも豚肉を炒めるのを手伝ったが、大量の豚肉を一気に鍋に入れて炒め、しばらくかき混ぜ続けて味を染み込ませなくてはならず、なかなかの重労働に悪戦苦闘した。

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これが用意されたたくさんの材料たち!

この場所は我が家ではなく、義両親がやっている素食(ベジタリアン)の食堂。

ここに近所の阿嬤(アマー、おばあさん)や阿姨(アーイー、おばさん)たちを助っ人に呼んで、みんなで大量のちまきを包む。

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このオレンジ色のものは、卵の黄身。半分に切って入れる。

鹹蛋(塩漬け卵)の黄身らしいけど、全然しょっぱくない。水分がなくて固く、モサモサしてて食べにくいので、わたしはちょっと苦手。

お義母さんが1週間前に、この黄身だけがプラスチックのパックにたくさん詰めてあるのを市場で買ってきて、今日まで冷凍庫で保管していた。

他には、栗、しいたけ、干し海老、豚肉、イカ、茹でたピーナッツ、炒めたエシャロットなどなど。全部すでに味付けが終わっている。

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こっちは、ベジタリアン用ちまきの材料たち。

ふつうのちまきと違う材料は、お肉に見えるけどお肉ではない何か、とか、さっきの卵の黄身に見えるけど卵ではない何か、とか。

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まずはお米を蒸す。木の樽のような蒸し器にお米をさらしに包んで入れる。その木の樽を水の入った鍋に入れて火にかけ、蓋をしてしばらく待つ。

この写真はおたまでお米をすくって入れているところ。蒸さなきゃならないお米が大量すぎて、1度では終わらないのだ。

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その間に、こっちではちまきを包む葉っぱの準備。葉っぱの両端を切っていく。切ったものと切ってないものがあったけど、その違いがなんなのか、わたしにはわからなかった。

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それから、阿嬤がどこからか持ってきた鉄の棒にS字フックをかけて、ちまきを結ぶための糸を吊るしていく。

これから包み終わったちまきが、ここに吊るされていくのだ。

鉄棒の両端はテーブルの上の畳んだ新聞紙の上に置かれただけだが、不思議とこれが安定するらしく、落ちそうになるハプニングは起きなかった。

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蒸しあがったお米にタレをかけて、手で混ぜていく。

蒸したてのお米はものすごく熱いので、軍手をはめて、その上にビニールの使い捨ての手袋をはめて輪ゴムで留めている。

手袋をはめても、とても熱くてしんどい作業らしく、阿嬤がわたしがやる、といって手袋を手にすると、ヒーローを見るかのように、おお〜、とどよめきが起きた。

袖をまくったほうがいいのでは、と言いたいけど言葉がわからず言えないまま見ていたら、やっぱり阿嬤の袖は米粒だらけになっていた。

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お米の周りに、葉っぱや材料を包みやすいようにセット。

包む人たちはお風呂場にありそうな低い椅子に座る。

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葉っぱを2枚重ねて3分の1のところで折ってカップのような部分を作り、そこにまずお米を入れて、材料をすべて載せたら、またその上にお米を蓋をするようにかぶせて、葉っぱを三角形になるように包んでいく。

包み終わったら、鉄棒に吊るしてある糸に縛ってぶら下げていく。

わたしも包ませてもらったけど、難しくてなかなかできず、何回も、そうじゃない、こう、とみんなに根気強く教えてもらった。

阿嬤たちは中国語は話さず、わたしのわからない台湾語で説明するため、とにかく必死に目で見て、見よう見まねで包んだ。

わたしが、葉っぱをどうやって重ねるんだっけ、こっちが裏?表?とモタモタしている間に、阿嬤たちは慣れた手つきで、2個、3個と包んでいく。まるで職人技だった。

途中でインドネシア人のお手伝いさんもやってきて、わたしが挑戦しているのを見て、わたしもやってみたい、と参加した。

インドネシアにもちまきはあって、お母さんが作れるらしいが、彼女自身は作ったことがないらしい。

なんだかわたしとお手伝いさんと、外国人が2人、台湾の文化体験をしているみたいだった。

お手伝いさんも苦戦しながら包んで、出来上がりを見て、「ボースイ(台湾語で、きれいじゃない)」と言って苦笑していた。おかげで、この日わたしは、このボースイという台湾語を覚えた。

もともと手荒れしていたところに葉っぱがかぶれて手は痒くなるし、腰は痛くなるし、量が多くて長時間だしで、妊娠中のわたしの身体にはあまり良くなかったかもしれない。

でも高齢なはずの阿嬤たちは疲れたそぶりを全く見せずに数時間包み続け、わたしは途中で音を上げて、「パイセイ(台湾語で、ごめんなさい)」と言って抜けさせてもらった。

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なんてったって、この量である。

阿嬤たち、毎年の恒例行事とはいえ、タフすぎる。強すぎる。すごすぎる。

お疲れ様でした。

さっそく出来上がったちまきを夕飯に家族みんなでいただいた。

あんなに苦労して包んだ葉っぱを、食べるときには簡単にスルッと外して捨ててしまうのがなんだか切ない。

ちまきってあんなに作るのが大変なんだなぁと、ありがたみを感じながら食べた。

食べながら、何の気なしに「そうそう、今日は日本では父の日だったんだけど、忘れてたんだよね」と言ったら、義家族から「え〜っ」と驚きと非難の声があがり、「お父さんに電話した?」と聞かれた。

忘れてたと言ってしまった手前、LINEでメッセージを送るのは照れくさくて送れずにいたわたしは、電話はいいアイデアだ!と思って、食事のあとで旦那さんと一緒にお父さんに電話をかけた。

「ちまきを食べさせてあげられなくて残念でした」と言う旦那さんに、「去年行った時に食べさせてもらったけど、美味しかったよ」と答えるお父さん。

来年は、この時期に遊びに来てもらって、わたしの包んだ、ボースイなちまきを食べさせてあげたいなと思う。

お父さん父の日おめでとう。いつも頼り甲斐あるお父さんでいてくれてありがとう。

わたしは台湾で楽しく暮らしてるから安心してね。


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ちさかはるか(台湾に住んでる道産子)
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