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大阪の女が会社を辞めるとき。『てなもんやOL転職記』谷崎光
『中国てなもんや商社』がとてもおもしろかった谷崎さん。映画化もされましたが、やはり原作の方が好きです。そして、今では中国在住。中国専門のライターさんになる前の奮闘記に興味が湧いて、手にとってみました。
タイトルにある転職の話よりも、おもしろいのは谷崎さんの生い立ちとか、家族関係とかの大阪エピソードてんもこりです。特に、彼女の上の姉の話が最高。外面の良さと、家での落差を愛情(?)こめて書いていて、夫と二人、ゲラゲラ笑ってしまいました。
やっぱり、私が谷崎さんの文章に期待するのは、この大阪的な泥臭い話をさらっとおもしろく、ともすればさわやかに描いているような文章です。少しおしゃれな雑誌に書くような中国ガイド本も悪くないけど、一番いい部分、コクが足りないように感じます。
さて、私が思わずメモしたくなった話は、振袖退社の話。会社勤めに見切りをつけて、それまでの愚痴いっぱい、文句いっぱいをやめるときにぶちまけようと考えていた谷崎さん。でも、ある雑誌で読んだ「心に振袖を着たつもりで礼儀正しく退社しましょう」の記事が気になって、嫌味なほど丁寧に引継ぎをしたそうです。
カイシャを辞めるときは気持ちも高ぶっているし、寂しくもあるしで、ついいらぬことをいいがちというのは、多々あるそうです。私の友達も、そんな辞め方ばかりしたそうで。でも、残された同僚や上司にしたら、「それをいっちゃあおしめーよ」なのも事実ですから。
それから、あとは「はたらくお母さん」の話です。大阪で商売やって、子育てもやってるお母さんの言葉は含蓄がありました。余談ですが、「会社は軍隊です。効率よりも上下の秩序を重視」って、本当にそのとおり。
この話は、谷崎さんの好きな『会社の掟』という本に書いてあるのだとか。確かに、この本を早いうちに読んでおいたら、いろいろ苦労せずにすんだかも。いやでも、苦労した今だから同意できるけど、若かったら「それは違う!」と反発しているだろうな。