努力と仲間とダンスへの情熱と。映画『熱烈』中国、2023年
元気がでる映画シリーズ第2弾。ダンス(ブレイキン)は全然知りませんが、見ているだけで熱くなれるのがいいところです。主演の王一博(ワン・イーボー)はローティーンの頃からダンスがすごい人なので、彼のダンスの凄さがメインだろうなと思って見に行ったら、見事にいい意味で裏切られました。
お金持ちの息子で、チームのスポンサーでもあったケビンに逃げられた杭州のダンスチーム「感嘆符!」。昔、チームのコーチは昔、メンバー募集のとき、ケビンと比べて落とした陳爍(チェン・シュオ)に代役をしてくれるよう声をかけます。父を亡くして、叔父も病気で、母親のレストランをいくつもバイトをしながらダンスを続けていたシュオは、ちゃんとしたコーチの指導と仲間のサポートで腕をあげ、全国大会をめざします。
コーチも真面目で熱心なシュオをだんだん認めて、最終的にケビンと決別し、シュオを育てることにします。ところが、チームの元エースだったケビンが、外国人ダンサーを連れて、戻りたいといってきます。彼もそれなりにコーチが好き。しかも、コーチを中国代表に推薦するといって。出世か、仲間かで揺れるコーチ。辛いです。
ここで、ケビンが単なるお金持ちのわがまま、うぬぼれや息子でないことがリアリティあります。大企業の社長(?)の息子で、ダンスが好きなのに、3年以内に全国優勝しないとダンスをやめないといけないので、焦っていて、さらに自分が抜けた後に入ったシュオに嫉妬もしてしまう。でも、おぼっちゃま的な解決策しか知らないケビン。
一方で、「感嘆符!」の仲間たちもそれぞれ事情を抱えています。ダンスが大好きなのに、そのせいで父親と音信不通になってしまったチームメイト。彼は父との和解をきっかけに、ダンスに見切りをつけます。誰もが才能に恵まれているわけでもないし、才能があるからって好きなことを続けられるわけでもない。
とくに中国は家族との関係がきついから、子供が自分のやりたい道に進むのはかなり難しい。なんせ、一人っ子で、自分に変わって親のそばにいてくれる兄弟姉妹がいない。だから、よっぽど理解ある親でない限り、自分の夢をあきらめて勉強するしかない一人っ子たち。ダンサーになりたいっていったら、日本でいうと「不良になる」って宣言するようなもの。
チームのメンバーはみんな苦労しつつ、それでもダンスが大好きな人たちばかり。シュオが入って、彼を認めるようになってから、ご飯食べながらメンバーが自己紹介するシーンが大好き。シュオは「みんなの経歴はインタビューで読んだ」といいますが、紅一点のペッパー(王霏霏)は「取材で本当のことは話さない」とストレート。だよね、みんな苦労してるものね。
彼らのダンスへの情熱と、うまくいかない人生をすくいとるかように、不器用で控えめで、でも一生懸命なシュオ役の王一博がいいです。人情に厚いコーチ役の黄渤(ホワン・ボー)もはまり役。彼も元ダンサーだから、ちゃんとダンサー仲間を大事にするし、いざとなったら誰より熱い。
途中から、ちょっと斜め上方向にチームを支援する電気会社の社長もいいキャラで好き。彼は彼なりにダンスが好き。あと、シュオのお母さんもいい感じで、素敵すぎる歌とその歌詞が頭から離れない。どっかでみたなーと思って探したら、『琅琊榜』の静妃じゃないですか!驚いた!!
ちょっと横道にそれる話ですが、シュオの両親が属していた劇団とか、ボロボロの劇場って、馮小剛監督の映画『芳華』的なやつですよね。年代的にはシュオの両親より、もう一世代昔のものだと思いますが、まあ、細かいことは気にせずに。
後半はもうとにかく、ダンスシーンが圧巻で、音楽もよくて、ラストの五月天の歌も最高。チームバトルに俄然、熱くなれるので、青春映画やダンス映画が好きな人はぜひ劇場で見てください。最近、疲れがとれない、元気がでない人には、特におすすめです。
日本語字幕のあるDVDを待ちきれなくて、ついダンスマンガに手を出してしまいました。こちらも名作!元気が出て、自分も身体を動かしたくなります。