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弁理士というお仕事。『特許やぶりの女王 弁理士・大鳳未来』南原詠

お仕事ものは大好きです。それがちょっと変わった職業で、女性たちが活躍する話はもっと好きです。弁護士ものは、大昔のドラマ『アリーmylove』から『SILK 王室弁護士マーサ・コステロ』まで。わくわくしかありません。

この本の主人公は、弁護士ではなく弁理士。聞き慣れない名前ですが、特許権を専門に扱うお仕事だそうです。弁護士と何が違うかというと、「弁理士」は、もともと「理士」。「弁護士」は、もともと「護士」表記です。「」はわける、見分ける、わきまえる、違いをあきらかにする。「」は言葉でおさめる、説得する、議論する。言い争う。なるほど。

作者の南原詠さんは、元エンジニアで、企業内弁理士さん。これは、お医者さんが書いておもしろかった医療ミステリー『チームバリスタの栄光』とか、ITやAI技術の近未来のミステリーを出版されたエンジニアの藤井太洋さんを思い出します。

期待大で入手したら、なんとこの本も『バチスタ』と同じ宝島社の「このミステリーがすごい!」大賞をとられた作品でした。飛行機の中で読むために準備していたのに、つかみからおもしろすぎて搭乗を待つ間で一気読み。読みだしたらとまらないのは、「このミス!」大賞作品あるあるでしょうか?

本書の主人公の大鳳未来は弁理士。特許侵害の問題を専門に解決するのがお仕事。もともとはパテント(特許)・トロールといって、自分では事業をする気のない製品の特許を取得し、他の企業に特許侵害をいいたててお金をとる仕事。あるメーカーのスマホのセキュリティに、関する特許問題に半年で百億円稼いだエースという設定。

でも、現在は仲間の姚愁林と2人で弁理士事務所をたちあげて、依頼を受けて、できるかぎり金銭以外の問題解決を目指すというのがおもしろいです。特許侵害をいいたてて、多額のお金をとるのではなく、特許には特許として敬意を払いつつ、知らずに特許を侵害した人々の対応を助けるというわけです。

なぜ、エースだった大鳳未来が、方針転換してそ「強奪する側」から「守る側」に鞍替えしたかは、まだこの本では書かれていませんが、それとなく匂わせるよなセリフがあります。

「私にプレーヤーとしての才能は何一つありません。私が魅力的なパフォーマンスをしたり、使いやすい薄型テレビを自力で開発したり、特許を取得したり侵害したりすることは永遠にないでしょう」

「でも、私には守る力がある」

「特許で才能を守ることも、失うには惜しい才能を特許から守ることも、どちらも弁理士の仕事です」

この本で登場するのは、TVのディスプレイに関する特許と、Vtuberの動画を撮影する技術のお話。特許というものがどういう風になりたっていて、企業はどう特許を扱っているのか、逆にブラック企業だとどうなるのかまで、ストーリーの中で説明してくれるがすごくおもしろいです。

自分が知らないお仕事の世界を垣間見せてくれる小説は本当に大好きだし、最新技術の話が読みやすいエンタメになっている小説も大好き。兼業で自分の時間を削っても、作家として作品を世の中に出してくださる方々の努力と才能には、本当に感謝しています。

続編の『ストロベリー戦争』もすでに出版されているようなので、すぐ読みました。おもしろかった。なんていうか、想像の斜め上をいった力技だった。楽しいw



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