マンデラと南アフリカの闘い。『インヴィクタス 負けざる者たち』ジョン・カーリン
映画『インヴィクタス』の原作。タイトルは『PLAYING THE ENEMY: Nelson Mandela and the GAME that Made a Nation』で、作者のジョン・カーリンはジャーナリストで作家。南アフリカの元大統領ネルソン・マンデラの伝記やラグビー、サッカーの本を書いているようです。
映画は劇場でみましたが、かなりおもしろかったです。(ただし、決勝を南アと戦ったニュージーランドの知人は辛口の批評でしたが……)
さて、映画の原作本の前半は、映画にはない、もっと詳しい南アフリカの歴史や社会についての説明がありました。これは、門外漢にはかなりありがたかったです。有名なアパルトヘイト時代から、どうやって選挙が実現して、黒人のマンデラ大統領が登場したのかを、淡々と記述してくれているのもいいです。
後半は、一転して映画で見たようなスピード感あふれる描写が続きます。マンデラが大統領になり、ラグビーのワールドカップで優勝を目指すまでの者辺りは、本で読んでもやっぱりわくわくします。
映画はマンデラ大統領と、ラグビーチームのキャプテンのフランソワ・ピナールを中心にシンプルな物語にまとまっていたのに対して、原作では南アフリカのラグビーチームのメンバーそれぞれが、いろんな形で「一つのチーム、一つの国」の目標に協力したことを教えてくれます。
こういう細かい話は、やっぱり本で読むのが一番。映画ではまどろっこしい説明は難しいし、よっぽどうまく表現しないと、わかりにくく退屈になってしまうので。
そして、絶対フィクションだと思っていた、あの飛行機がものすごい低空飛行でスタジアム上空を飛んだシーンについて。さすがイーストウッド監督。テロじゃないかとひやひやしたあのシーン、てっきり演出だと思っていたら、なんと実話だったとは。本当に、真実は小説よりも奇なりですね。
一番気に入っているのは、最後の一文です。
現実は、映画のように「めでたし、めでたし」で終わりません。南アフリカの政治や経済の状況はやっぱり厳しいし、マンデラ大統領の後にはそれまでの反動で、融和政策に逆行したりもしているとのこと。貧富の格差は拡大し続けるし、社会問題も増えています。
でも、だからこそ、たくさんの人にこの本が読まれて、みんなが考えるきっかけになればいいなと思います。