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料理も料理研究家も、時代と一緒に進化する。『小林カツ代と栗原はるみ』阿古真里


サブタイトルは、料理研究家とその時代。
NHK朝ドラの『ごちそうさん』にモデルがいたなんて知りませんでした。

料理というのは、ものすごくパーソナルというか、家庭独自のものだけれど、同時に社会や文化を映す鏡のような存在。そして、それをリードするのが料理研究家。

この本は、料理研究家たちの個人史から、戦前から戦後の食事文化と社会の移り変わりを概観する興味深い内容で、楽しみながら読めました。以下、各章で紹介される料理研究家です。

第一章 憧れの外国料理 
(1)高度成長期の西洋料理――江上トミ、飯田深雪
(2)一九八〇年代のファンシーな料理――入江麻木、城戸崎愛
(3)平成のセレブ料理研究家――有元葉子
第二章 小林カツ代の革命
第三章 カリスマの栗原はるみ
第四章 和食指導の系譜
(1)昭和のおふくろの味――土井勝、土井善晴、村上昭子
(2)辰巳芳子の存在感――辰巳浜子・辰巳芳子
第五章 平成「男子」の料理研究家
             ――ケンタロウ・栗原心平・コウケンテツ
エピローグ――プロが教える料理 高山なおみ

戦後のざっくりとした社会や家庭の変化を概観しつつ、ビーフシチューや肉じゃがの作り方が、それぞれの料理研究家さんによってどう違うのか比較する手法は、マクロとミクロあわせ技でとてもおもしろかったです。

ある料理研究家の場合は、全て手作り。別の料理研究家の場合は、出来合いの缶詰をつかって手間を省いたり。つまり、時代時代によって主婦に求められているものや、主婦が求めるものが違って、それを反映しているのも、また料理研究家という人々なのだということですよね。

戦後のホームパーティーメニューが好まれた時代。高度成長の影で専業主婦が料理にやりがいを求めた時代。台所経験のない女性たちのためのハウツーのような本が必要になった時代。

共働きで時間がない主婦への応援レシピが流行った時代。男性も料理する時代となり、男性目線のレシピが流行る時代。介護のためのノウハウや生き方の指南書のようなレシピなどなど。多様なレシピ集は多様な社会をあらわす鏡のようなもの。

そういえば、10年くらい前に読んだ『変わる家族 変わる食卓』も出てきました。結局、あの本が警告したものは結局どうなったのでしょうか。もう一度、読み返してみてもいいかもしれません。



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