自然の恵みと山の村の暮らし。『リトル・フォレスト』五十嵐大介
以前から気になっていたけれど、きっかけがなかったマンガ。映画館で見た韓国リメイクの予告編があんまりきれいだったので、ようやく読みました。この『リトル・フォレスト』は田舎の農作業の日常が、地道に技術的に淡々と描かれていて、ファンが多いのも納得の内容。マンガの舞台は岩手がモデルとのこと。
私は信州の山のムラで育ったし、祖母の山菜採りや農作業、保存食作りにつきあわされた経験があるので、ムラのご近所とのやりとりも、町とムラの生活の差も、いろいろわかる部分があります。
山のことについては、祖母が生きてるうちは、当たり前すぎて、高校生までの自分にとって、それは全然自分が覚える必要のない知識でした。だから、主人公が高校生のときに、日常生活にぞんざいだったり、全然母親を手伝わなかった、気遣えなかった気持ちがものすごくよくわかります。
大阪暮らしが長くなった今頃、私は祖母の山の知識がすごく恋しいです。でも、母は東京からお嫁に来た人で、祖母の山とかムラの知識をほとんど否定していました。だから、祖母が亡くなって、山の知識は断絶してしまいました。
とはいえ、『リトル・フォレスト』は水道代とか電気代がほとんどかからないような、半分以上自給自足みたいな村でのハードな生活。私の経験とは比べ物になりません。一度ムラを出ていった主人公のいち子が、また戻ってきて農作業の生活ができるのが本当にすごい。
お米や野菜をつくって、冬のために保存したり、春の野菜ができるまで山菜や野の植物でしのいだり。アイガモしめたり。当然だけど、主人公だけじゃなく、登場する同世代の若い子がみんな自分で生活できてるのもすごい。
私には無理ですが、薪ストーブでパンを焼く生活とか、すごくうらやましいし、ジャムやソース、ケーキをつくったりする生活には憧れます。せいぜい、味噌を手作りしたり、パンやケーキをオーブンで焼くくらい。あとは、マンガで疑似体験するしかないです。それはそれで、楽しいですけど。
『リトル・フォレスト』は定期的によみかえしたくなるマンガです。名作かといわれるとちょっと違うような気がしますが、ビタミンみたいな作品。おすすめです。
原作のコミックスがよかったので、映画もみてみました。結構原作に忠実で驚きました。映像もきれい、というか、きれいすぎかな。田舎の景色、自然のめぐみ、田んぼ、畑、その他もろもろ。あと、農作業の手付きとか腰つきがちょっと危なっかしい。でも、まあ映画なので、悪くないです。くるみご飯作りたくなります。おいしそう。
映画の日本版では、ちゃんとマンガ原作通り「お母さんが出ていった」設定ですが、韓国版ではそれができなかったとのこと。なんでも、母親が子供を一人置いて出ていくなんて、とんでもなさすぎなのだとか。良くも悪くも、韓国らしくなっているようです。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?