身近にあふれる読めない文字の楽しみ。『ポケットいっぱいの外国語』黒田龍之助
理系の大学でロシア語を教えていた黒田先生。NHKのロシア語講座も担当されたことがあるはず。そんな黒田先生の名著『外国語の水曜日』以来、20年近く黒田センセの本のファンです。
ずっと東京工大の先生だと思っていたのに、この本で略歴を見たら、明治大学を経てフリーランスの言語学者になっていたのにおどろきました。でもいいですね。自分の好きな研究と、執筆活動で食べていけるなら。大学は学内政治もあるし、事務仕事も山ほどあるし、少子化の今は高校まわりとかもするらしく、他府県の高校を回って大学の宣伝や出張授業をしたりもするとか。おかげで、本来の研究がなかなかできないと嘆く先生は多いです。
映画やマンガに出てくる大学生はみんな勉強熱心だし、教授には有能な助手とか秘書みたいな院生の女性がいたりするんで、ちゃんと研究してますがそれって、ドラマや映画、マンガの中でしかありませんから。(除:『動物のお医者さん』)
というわけで、黒田節の効いた大学ネタや学生さんとの交流ネタが読めなくなるのは残念だけれど、黒田センセにとって辞めたいほど大学が「きゅうくつに」なってしまったなら仕方ないですね。
専門のロシア語以外にも、東欧諸言語に詳しい黒田先生。この本は、中学生や高校生に楽しく読んでもらえるように・・・ということで、読みやすく字数も多くないので、食後のちょっとしたスキマ時間や、寝る前に読めるのがいいです。
いまどきの中学生や高校生がこの本を読むか・・・というと、残念ながらなかなか難しい現実がありそうですが、絵本だって今は大人が買う時代。「中学生向け」という説明文は、「社会人向けの気楽に読める本」を婉曲に表現しているようです。
今は、お菓子でも電化製品でも輸入したものがあふれていて、身近なスーパーやコンビニ、業務スーパーなんかの商品はラベルも多言語。そんな身近なところから、見知らぬ国の言葉にまつわるいろんな国の文化についてのエッセイがたくさんよめる本書。着眼点から、もう楽しいですよね。