台湾人とも華人とも言いにくい。『タイワニーズ』野嶋剛
野嶋記者が取材した台湾人もしくは、台湾にルーツをもつ人々=タイワニーズは、政治家や運動家としては国会議員の蓮舫、実業家で元台湾独立聯盟日本本部委員長の辜寛敏と、子息で野村総研主席研究員のリチャード・クー。
一番多いのは作家で、『流』で直木賞をとった東山彰良、日本在住で芥川賞候補にもなった温又柔、日本生まれの台湾系作家としてはもっともでたくさんの文学賞を受賞している陳舜臣、そして実業家で作家で経済経論家で経営コンサルタントの邱永漢。
俳優では余貴美子、そして歌手&俳優としてジュディ・オング。実業家では551の創業者羅邦強や、日清インスタントラーメンでおなじみの安藤百福。それぞれ、みんな日本に縁のある仕事をするまでの歴史があり、複雑な事情があり、一筋縄ではいきません。
野嶋さんの本は、どれも若干、筆が甘い部分が気になるのですが、その分、台湾に詳しくない人向けに、読みやすくていいのかもしれません。最近では、単純に台湾は親日、中国は反日ってステレオタイプがまかりとおっているけれど、中国語圏は複雑だし、中国も台湾も香港もそれぞれです。
安藤百福さんが台湾ルーツを隠すのも、陳舜臣が日中国交回復後に中華人民共和国の国籍をとり、天安門事件後に日本国籍に変えたのも、蓮舫議員の国籍問題の複雑さもすごいし、ジュディ・オングの姪っ子が中国大陸でお仕事バリバリなのも、東アジアの国際政治状況を反映してのこと。
日本人なら、やっぱり知っておいたほうがいいことばかりです。おすすめ。
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