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コメディ映画で農村歌舞伎。『大鹿村騒動記』2011年

予告編がおもしろそうだったので急遽、見に行った映画です。夫曰く「主演はサントリーのモルツのCMに出てた人だよ」。ああ、確か、ストレートしか投げなくて打たれるピッチャー役ね……って、キリンじゃん!?


もとい。長野県下伊那郡大鹿村は農村歌舞伎で(一部)有名ですが、そこを文字通り舞台に、達者な役者さんの原田芳雄、岸部一徳、そして大楠道代と3人勢ぞろい。しかも、脇役に三國連太郎、佐藤浩市、松たか子って、ぜいたくすぎて未消化です。

いえ、大鹿村の方々にとっては最高だと思いますし、元長野県民としてもうれしいし、エキストラしたという地元の方々だって本当にうれしいと思いますが、でも映画としてはどうなのかな・・・と思ってしまいました。

ストーリーは結構込み入っていて、地元で鹿料理の食堂「ディアイーター」を営む主人公は、村に300年くらい前から伝わる農村歌舞伎の役者さんでもあります。この彼は、18年前に親友と奥さんに駆け落ちされて、今一人で店を切り盛りする設定。そんなある日、ボケてしまった奥さんをつれて、親友が戻ってきて、しかも「返すわ!」だから、さあ大変。

とまあ、こんな感じのコメディなんですけど、演技派の役者さんたちががんばっているとはいえ、やっぱり田舎を人情の通じるアットホームに描くのって微妙です。いえ、長野県出身としてはうれしいですけど。都会からの一次避難場所って意味合いなら、まあわからないでもないですが(映画『阿弥陀堂だより』みたいに)、都会以上にいろいろ面倒なのが田舎なので、むしろ、それも含めてちゃんと脚本を練ってほしかったなあと。

地元の人は、結構きついジョークでゲラゲラ笑うから、ブラックコメディでもよかった気がします。ただ、そういう笑いは普通の人にはきつすぎるので、映画の表現として力量が問われます。しかも、地元のみなさんが協力して現地でロケして、伝統芸の農村歌舞伎で映画化ってなると、村おこしなのできれいにまとめたくなってしまう……みたいな状況もわからないでもないですが。

公開当時のネットであちこち見ても、100点満点で65点とか、星5つ満点で3つ半とかつけてる人が多いのに、悪いところが具体的に書かれていないのも、多分、私同様、期待させられた割に消化不良ってことなんだと思います。難しいですね。

題名:大鹿村騒動記
監督:阪本順治
脚本:荒井晴彦・阪本順治
原案:延江浩『いつか晴れるかな』
主演:原田芳雄、大楠道代、岸部一徳ほか
制作:日本(2011年)93分


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