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知っているようで知らないクリスマス。『サンタクロースの大旅行』葛野浩昭


サンタクロースは、今から1700年も前にトルコあたりに住んでいた、キリスト教徒のお坊さん、セント・ニコラウスがなまった言い方らしいです。

でも、なぜトルコの人なのに北欧っぽい顔と髭なのか? なぜソリに乗っているのか? 中東にトナカイはいないし、そもそも、聖書にキリストの誕生日は書いていない。なぜ12月25日がキリストの誕生日なのか? 

そんな疑問のあれこれに答えてくれるのがこの本。

12月25日は、もともとヨーロッパの冬至のお祭り。キリスト教が中東から北へ広まっていく過程で、ヨーロッパの土着のお祭りを取り込んだ結果だと考えられています。

ふと、思い出すのが学生時代の先生の言葉。キリスト教が当時の人にとってすばらしかったからヨーロッパ全土に広まったのではなくて、キリスト教が土着の宗教をガンガン取り込んでいったから、広まっていったんだというような話でしたっけ。

冬至のお祭りは、日照時間が長くなるのを祝って、豚を屠って飲めや歌えやのドンちゃん騒ぎに無礼講。男女が愛を語り合うというものでした。だから、イブの夜にツリーにつるす靴下は男女の恋愛や性、そして豊穣(子供)のシンボルだったとか。

サンタの赤い服は太陽。トナカイが引くそりは、海神オーディンのイメージが反映してしまった模様。けれど、そのトナカイもごく最近で、地域によって豚がそりをひくサンタもいたらしいです。かわいすぎ。

中部ヨーロッパの森のお化けは、もともと悪い子をしかるもので、日本のナマハゲと共通部分が多数ある話は驚きました。それが、セント・ニコラウスイメージと重なって、最初の頃のサンタクロースも悪い子を叱ったり脅したりするものでした。私はこの本で、ナマハゲは子どもを怒るだけでなく、セクハラするものだっていうのも初めて知った。

現在のクリスマスとサンタクロースみたいな形になったのは、約200年前のアメリカがはじまり。トルコからオランダまでつたわって、かなりヨーロッパ的になったセント・ニコラウスが、さらにアメリカで変化しました。もともと緑系だった服が赤くなったのは、某コカ・コーラのコマーシャルのせいだとか。

もちろん、アジア、南半球まで伝わって、世界各国の多様なサンタとクリスマスへ変幻自在。日本の話も詳しく書かれているので、聖なる日の読書や年末年始のステイホームにおすすめ。

こちらのコミックエッセイでも、ユーラシア大陸各地のサンタやクリスマスについての紹介が、おもしろおかしく読めます。日本語についての新発見もできておすすめ。


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