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何かを描く人 Chapter 15 (720字ほど)

話を聴きながら絵を描く。声を受けとる。感じる。色を選ぶ。ある地点から線を引く。声の感じに合わせてペンを動かす。微細な波。ある地点で波は終わる。地点が切り替わる。色を選んでペンを走らせる。形を描く。色を塗る。色を替えて線を引く。繰り返す。ヒエログリフ的と言われれば、そんな感じもあるのかなと思う。

Hさんの話を聴いて描いた絵

・・・

三連休の二日目。日曜日の夜だった。

映画を観に行った。観たかった映画は上映期間が終わりかけの映画だった。まだ上映している映画館をネットで検索して見つけた。そのままネット予約して映画館に向かった。田舎町にある大きい映画館で、観たい映画の他にもいろいろな作品が上映されていた。スマホで見つけた映画館のクーポンを使ってコーラとホットドッグのセットを買った。映画館には上映開始の30分ほど前に着いていたので、コーラとホットドッグは映画を観る前に食べた。

入場開始のアナウンスが流れた。No.5のシアターに向かう。通路の一番奥の左側がNo.5のシアターだった。開いたドアからシアター内に入り、階段を上りながらF列9の席を探した。F列のほぼ真ん中の座席を下ろして椅子に座った。リュックを下ろして足元に置き、上着を脱いで丸めて膝の上に置いた。

私以外まだ誰もいないシアター内は静かだった。ポケットから取り出したスマートフォンのカメラアプリをタップした。スマートフォンを横向きに構えてレンズをスクリーンに向けた。画面の白いボタンをタップすると「カシャ」と電子音がシアター内に響いた。シアターの入口の方から話し声が聴こえてきた。電源を落としたスマートフォンをリュックに入れた私は、予告映像が流れ始めたスクリーンを眺めながら椅子の背にもたれた。

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