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いつか追憶する今を。

妊娠・出産をする前と後で、大きく変わったことがある。
それは、外で知らない人に話しかけられるようになったことだ。

妊娠する前の私といえば「写真撮ってください」すらほぼ言われたことがないような人間だった。(ちなみに私の夫はめっちゃ頼まれるタイプ)

話しかけられないだけならまだしも、私の場合近寄られることもあまりなく、バスなどで隣の席が空いていたとしても、何故か最後の最後まで誰にも座られないことが多かった。(ちなみに私の夫は真っ先に座られるタイプ)

人を寄せ付けない何かを醸し出してしまっているのか...と悩んだこともあるくらいだ。

それが妊娠した途端、めちゃくちゃ話しかけられるようになった。

「何ヶ月〜?」
「暑いから大変でしょう〜」
「気をつけてね〜」

これにはすごく驚いたのだが、友人らに話すと「生まれたらもっと話しかけられるよ〜」とのこと。

そしていざ生まれてみたら、本当にその通りだった。

電車で隣におばさまが座った時は、90%くらいの確率で話しかけられる。

他にもバスを待っているとき、スーパーの会計のとき、信号待ちをしているとき、すれ違いざま、とにかくめちゃくちゃ声をかけられるのだ。

すごい。私の近寄り難いオーラを軽く吹き飛ばす赤ちゃんの人を寄せ付けるパワーよ。

話しかけてきてくれるのはもっぱら女性。それも圧倒的に50代以上(推定)だ。
子育ての諸先輩がたの声かけ〜会話のパターンはだいたい似通っている。

①感嘆 「あら、可愛いわね〜」
②質問 「女の子?男の子?何ヶ月?」
③共感 「○ヶ月なら○○な時期でしょう〜?」
④追憶 「うちの息子(娘)も赤ちゃんの時は〜」
⑤助言 「こんな小さい(可愛い)の今だけだから〜」
⑥激励 「じゃあ大変だと思うけど頑張ってね〜」

ほぼこの流れだ。特に④なのだが、話を聞くと、彼女たちの子どもは皆成人しているし、中にはもう孫までいるような人だっているのに、我が子が赤ちゃんだった頃の話をついこの間のことのように語るのだ。

これには、いつもちょっと感動する。ああ、母親というのは、どれだけ時が経っても、我が子が赤ちゃんだった頃に一瞬で戻れるものなのだなあ...と実感するのだ。


***

先日アカチャンホンポへ行ったとき、隣に妊婦さんがいた。旦那さんとお母さんと思しき人とあれこれ話をしている。

「これいるかな〜」「買っておいたほうがいいんじゃない?」
「あ、これもいるかも?」「え〜どうしよ〜」

そんなやりとりを見て、ちょうど一年前の自分と夫の姿を重ね、思わず声をかけたい衝動にかられた。

自分が通ってきた道の途中にいる人を見ると、なんだか、みんな仲間のような、知らないんだけど先輩後輩のような気がして、見守り、励ましたくなる。

私に声をかけてくれた方々も、そんな気持ちだったのかもしれない。


私も、50代になったとき、小さな赤ちゃんを連れているお母さんに32歳の自分を重ね、声をかけることだろう。


「うちのムスメも0歳のときはね〜」なんて、今の日々を追憶しながら。

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