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#15 働き手不足への革新は「妄想」から生まれる!
ワークショップデザイナーの相内洋輔です。私は「一般社団法人妄想からアイデアを共創する協会」の理事として、アイデア共創とコミュニケーションを学ぶワークショップ「モウトレ」をご提供しています。
先日とある企業様から、「取り組みが行き詰まっているので、実現可能性は優先せず、とにかく妄想を膨らませたい」というご依頼をいただきました。
何かがうまくいっていない時、多くの人はインスタントなアイデアを求めがちです。
にも関わらず「意味があるかどうかは分からないけれど、大胆に考えを広げてみたい!」と腹を括られている潔さ、素敵だなあと感じました!
アイデア創造は制限のないブレストから始まる
ご依頼いただいた通り、妄想を有意義な時間にするためには「実現可能性」を気にしない姿勢がマストです。
始まりの段階においては、できる/できないに囚われてしまってはダメなのです。
暦本純一さんが書かれた『妄想する頭 思考する手 想像を超えるアイデアの作り方』から一文をご紹介します。
役に立つかどうかという価値判断だけでなく、「実現できるかどうか」という判断も妄想とは無縁だ。
(中略)
ほとんどの妄想は、「ふつう」に考えると実現困難だからだ。したがって「実現可能かどうか」という判断を優先させていたら、「妄想から始める」どころか、妄想を抱いた瞬間に終わってしまう。
こちらの一文は、妄想の本質を的確に言い表されているなあと感じます。
空を飛んでみたいと思ったライト兄弟も、月へ人を送ろうと決めたアポロ計画も、まず始めに実現可能性を優先していたら、きっと偉業は達成されなかったはずです。
実現可能性を気にしていては、新しい取り組みはスタートしない
少し昔の話をさせてください。
私が東日本大震災復興支援財団で働いていた2015年頃、東北地方には高校生のプロジェクト・ベースド・ラーニングをサポートしている大人の伴走者がたくさんいて、それぞれが個別にNPO活動をされていました。
私はそうした方々をネットワークし、高校生の成長を促進する関わり方について探究しあったり、共通の価値指標を持ったり、一緒に催事の運営ができるようになれたらいいなと妄想したのですが、
最初は関係各所へご相談に伺うたび、「ふつうに考えたら無理じゃない…」と厳しい反応を頂戴しました。
その理由として、NPOはナワバリ争いをしがちなため不仲の団体が多かった歴史や、それぞれの思想哲学が強く相互理解が困難なことなどを教えていただきました。
(なるほど、NPOとはそうしたものだったのか)と浅慮だった自分を恥じる一方、私の中にはポジティブな期待感も残りました。
教えていただいたように、平時では敵対しがちなのかもしれません。でも未曾有の災害から復興を目指す、という長期の時間軸で考えたら、大同小異で仲間になれるのではないか? と根拠もなく思ったのです。
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過去のパラダイムを超えて
一言で言えば、震災前のパラダイムと、震災後のパラダイムは違うはずだ、と考えました。そう信じてアクションしてみたら、思っていた以上に賛同してくださる方々が現れたのが、ユースアクション東北という事業の成り立ちでした。
結果的には3年間で100人を超える伴走者どうしがつながり、東北でのプロジェクトベースドラーニングを真剣に語り合える一大コミュニティが生まれるに至ったのですが、
これはまさに、実現可能性から考え始めたら成立していなかったと思うんですよね。
ユースアクション東北の取組みがうまくいったのは、ご縁に恵まれたことが最大の理由です。たくさんの素晴らしい仲間に出会い、惜しみないご協力をいただけたことによって、皆にとって心地よいコミュニティになっていくことができました。
ただ、先ほど書いたように、震災の前後でパラダイムが転換していたといった背景も、成功の一因として見逃せないポイントだったと思います。
震災直後の東北では、「1人の力は小さく、価値観や考えが多少違う他者とも協働していかなければ、決して復興は成し遂げられない」と感じていた人がたくさんいたはずです。
それが、震災以前の常識を覆す強力なエネルギー源になっていたと思うんですよね。
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日本はこれからパラダイムが大転換する
この時のような、前例に囚わず新しい価値を創造していこうとする機運は、今後日本全体でいっそう高まっていくのではないかと思います。
なぜなら日本は「超高齢化 × 少子化で労働人口が激減」という未来を迎えることが確実だからです。
これまでの人手不足は、好景気での増産に伴い特定の分野・業種に需給ギャップが生じたことが原因でしたが、今後の人手不足は意味合いが異なります。
現在の社会を維持するために必要な労働力を供給することが不可能になる、慢性的な人不足の社会が目前に迫っているのです。
つまり持続可能な社会を築いていくためには、パラダイムの大転換が必要なんですよね。
2040年には働き手が1100万人減るというシミュレーションに基づいて書かれた『働き手不足1100万人の衝撃』から一文を引用します。
働き手が足りないというニュースは多くの人が耳にしているが、これから起ころうとしている「人手不足」は、これまでの単なる「人手不足」とは異なるのだ。なかでも最も懸念されるのは、私たちの生活を支えている「生活維持サービス」の水準低下、そして消滅の危機である。
たとえば、業種別の労働需給シミュレーションの結果を見てみると、2040年には介護サービス業で25,2%、ドライバー職で24,1%、建設業で22,0%が不足することがわかった。
近畿地方の労働人口がちょうど1100万人前後、東北地方の労働人口は525万人程度だそうなので、近畿地方丸ごと、あるいは東北地方2つ分の労働者が不足すると捉えると、そのインパクトが想像しやいのではないかと思います。
新しい未来を共創したい!
とはいえ悲観的になる必要はないと思います。『働き手不足1100万人の衝撃』の後書きにはこんな一文が綴られているように、ピンチはチャンスでもあります。
諸国に先駆けて超高齢化社会を迎える日本は、ビジネスチャンスの宝庫だと主張される方々も多くいらっしゃいます。
仰る通り、来るべき未来に向かって、私たちは何を変えていけるのか前向きに考え、アクションを起こし続ければ、多様な可能性が新たに芽吹くはずです。
労働供給制約社会という新しい社会の出現は、日本社会を、企業を、そして人を、大きく揺り動かすことになる。その変化は、座して待てば危機的な生活維持サービスの破綻という結果をもたらす可能性が極めて高いが、危機感の高まりがさまざまな打ち手を芽吹かせているということもまた確かなのだ。
そう考えたときに、私は今後十数年の日本は「発明の時代」を迎えるのではないかと感じている。
労働需要という"必要性”があふれ返る社会では、様々な新しいアイデアやイノベーションが求められることになる。もはや日本の生活維持サービスを維持するためには、「ルールはどうなっているんだ」とか「前例がない」とか「誰が責任をとるんだ」などと言っていられない。そんなことにこだわっていては、担い手がどんどんいなくなり、生活インフラが崩壊していくばかりなのだ。
働き手が大幅に減少する未来に対しての情報や取組み、書籍などは増えてきていますが、本気で危機感を抱いている人は、まだまだ少数かもしれません。
だからこそ、私は今から各地域のまちづくりや、組織づくりに関わりたいと思っています。目覚ましい先進事例を作って、早くから人々の興味関心が注がれるようになればなるほど、各地におもしろい活動が生まれていくと思うのですよね。
そうした触発の連鎖を作っていくことに貢献できたら、共創ワークショップの専門家として冥利に尽きるなあと思っています。
また、このテーマに関して「おもしろいことを仕掛けたい!」と思っている方々と仲間になれたら嬉しいです。
そう思い、こうして記事を書いてみました。最後までお読みくださりありがとうございました。
ワークショップデザイナー
相内 洋輔
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