ゴダールを体験してきました
東京日仏学院のアンスティチュ・フランセ東京で
ゴダール映画が上映されているというので
ゴダールを体験してきました。
ジャン・リュック・ゴダールはヌーヴェル・ヴァーグの巨匠ようですが、
わたしはまったくの初体験。どうせならゴダールの最高傑作でヌーヴェル・ヴァーグの金字塔といわれる「気狂いピエロ」を見たかったのですが、上映されていたのは「女は女である」でした。
どんな映画かと思って見てみました。
あらすじは、アンナ・カリナーが演じるストリップの踊り子アンジェラが
突然いますぐ赤ちゃんがほしいと言いだし、いっしょに暮しているエミールはおおいに戸惑います。しかし、彼は結婚する気も赤ちゃんをつくる気もないようです。
すったもんだの末、アンジェラは下の階に住む、ジャン・ポール・ベルモンドが演じるアルフレッドと一夜をともにします。
それでも、アンジェラとエミールは翌日こづくり励むのです。そしてエミールが少しなじるように「ふしだらなおんな」みたいなことを言うと、アンジェラはケロとして「わたしはおんな(Une femme est une femme)」というのです。
まさにフランス的エスプリといいのでしょうか、妙に納得させられるのです。
この映画はコメディのようですが、映画のなかで「早くしてくれ、テレビで『勝手にしやがれ』が見たいんだ」というセリフが出てきたり、また60年代初頭のパリ市内の風景や行き交う人々、またアパルトマンでの暮らし振りが描かれていて、パリジャンはこんな風に暮らしていたのかとはじめて分かり、なにかとても懐かしい気分にさせられるのです。
それにしても若き日のジャン・ポール・ベルモンドは優男でが、どこか憎めない愛嬌があります。
ジャン・ポール・ベルモンドもさることながら、この映画ではアンジェラを演じたアンナ・カリーナが、男をてだまにとり、いちコロに悩殺するコケティッシュな魅力で圧倒的な存在感を放っています。そのコケティッシュさは演技というよりも21歳の若さがゆえの輝きではないでしょうか。彼女がこの作品で第11回ベルリン国際映画祭で女優賞を得たのも納得です。
彼女はゴダールと結婚して、その後離婚したようですが、ヌーヴェル・ヴァーグのミューズ的存在だったのでしょう。2019年に亡くなったようで残念です。ジャン・ポール・ベルモンドは2021年に88歳で亡くなり、ゴダールも昨年自らの意思で安楽死を遂げたと報道されました。ご冥福を祈ります。
映画のなかのセリフではないですが、さらにゴダール体験を続けて、今度は「勝手にしやがれ」と「気狂いピエロ」を是非とも見たくなりました。
その後、「勝手にしやがれ」を見ました。
マルセイユで車を盗み、警官を射殺してしまったジャン・ポール・ベルモンドが演じるミシェルは、パリでアメリカ女優であるジーン・セバーグが演じる、見習い新聞記者でガールフレンドのパトリシアと恋のかけひきを演じます。
そしてミシェルが殺人犯であることを知ったパトリシアは警察に通報してしまいます。パトリシアは言います。「わたしがあなたを愛しているのか、いないのか、それを知るためにわたしはあなたと寝たの」「でも、こんな意地悪なことができるなんて、わたしはあなたを愛していなかったのね」と。
ミシェルは警察に追い詰められるなかで、仲間からカネをもらい、車で逃げろと言われます。だが、ミシェルは「サツなんてこわくない。ムショに入って壁を見てればいいだけだ」と言い、自分を警察に通報したパトリシアのことを「あの女のことが頭から離れないんだ」と言って逃げません。そこがなんと言ってもいいのです。泣かせるのです。
最後、ミシェルは警察に腰を撃たれ、道路をよろめきながら走ります。そのあとをパトリシアが追いかけます。そのシーンがなぜか切なくて、恐らくこのシーンだけでこの映画は後世に残る作品となりえるでしょう。
この映画は1960年に上映され、ヌーヴェル・ヴァーグの記念碑的な作品と称されているようですが、当時ジーン・セバーグは22歳、ボーイシュな短髪でとてもキュートで個性的でヌーヴェル・ヴァーグのアイコンとなったようです。その後、彼女は公民権運動などに傾倒し、FBIに追い詰められて精神的に不安定になり41歳の若さで自らの命を絶ったといいます。悲しいことです。ご冥福をお祈りします。
最後におまけに「気狂うピエロ」の画像2枚。
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