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【向日葵は枯れていない!】37.ギラヴァンツ北九州 マッチレビュー ~第37節 vs AC長野パルセイロ ~

立場は違えど、勝点を上積みたいのはお互い一緒。

北九州は決して良いサッカーが出来ているとは言い難がったが、勝負への執念は最後まで消えることはなかった。

しかし、サッカーには何度反省をしても、何度高い授業料を払っても繰り返される悪癖があり、悲劇がある。これもまたサッカー。

振り返ります。

1.試合結果&メンバー

北九州の今シーズンホーム最終戦は、実に6,810人もの観衆を集めました。もちろん最終戦だからということもありますし、他力が必要とはいえ、残り2試合を連勝すればプレーオフ進出に届くかもしれないというサポーターの期待の高まりもあったと思います。

81分CH(34)高吉正真の右足から放たれたシュートは、堅固な長野の壁を打ち破り、サポーターが待ち構えるゴールへ突き刺さります。待望のJ初ゴールは苦しむチームを救う決勝弾になる筈でした。そうしなくてはいけませんでした。

アウェイFC大阪戦、ホーム沼津戦で味わった悔しさを繰り返さない。
選手はクロージングを強く意識はしていたと思います。
しかし、クロージングの各局面でほんの少しこぼれるボールをモノに出来ない場面が続き、そのこぼれ球を後方の選手もカバー出来ず、ついに90+5分、J3残留に執念をみせる長野に追いつかれます。

同時刻開催5位松本は逃げ切り、勝点を57に伸ばす中、勝点53に止まった北九州のプレーオフ進出の可能性は明日(11/17)の福島-沼津戦にその大部分が委ねられます。この試合で福島が勝利した場合、福島の到達勝点は56となり6位に浮上します。

北九州が最終戦で勝利し、福島が最終戦で敗れて勝点56で並んでも、既に得失点差で両チームには大きな開きがあり、北九州の逆転は現実的ではありません。

厳しくなったと言わざるを得ない状況です。

J3第37節 北九州-長野 メンバー

メンバーです。

北九州は前節讃岐戦と同様のスタメンです。
サブにはCB(4)長谷川光基が復帰してきました。
前節で勝利したということもありますし、この時期になれば最も信頼できるメンバーで戦い続けるだけであると思います。

一方、長野は大幅に選手を代えてきました。
象徴的なのが今シーズン初先発となったCF(22)木原励でした。
浦和からの期限付移籍中ということで、CB(13)工藤孝太とのマッチアップが注目されていました。

正直なところ、筆者も知らない選手が多く、少々嫌な予感がしていました。
長野は17位、19位YS横浜との勝点差は4、まだJ3残留が確定していない状況での大幅なメンバーチェンジの意図を試合開始後に思い知らされることになりました。

2.レビュー

北九州はこれまで長野との相性は悪かった訳ですが、前回対戦時は配置を含めて戦法を失敗、北九州が自滅した感はあり、かつCF(9)浮田健誠らを狙った徹底した空中戦にやられた印象もありました。
最近の長野の試合を観ましても、北九州も不調が続いていたとはいえ、試合内容的には上回っていたという感覚はあり、北九州が冷静に戦えれば勝機は見い出せると見込んでいました。

しかし、北九州は序盤から長野のハイプレスに苦しみます。
ハイプレス自体は長野の戦法ですので、そのことへの驚きはないのですが、前半からよりハイペースで仕掛けてきたことが、北九州の戸惑いに繋がっていたと思います。

長野の大幅な選手変更は、おそらくコンディションの良い選手を中心に選んだ結果であり、前半から北九州をプレスで押し込む、球際で負けないことで、自陣にボールを送り込ませないことを優先していたのだと思います。
先に失点する可能性を減らすことであったと考えます。
長野としてはこの試合はドローでも良かったといえるのでしょう。

実際に長野のチャンス、決定機はハイプレスで引っ掛けた後のショートカウンターによるものであり、自陣からのビルドアップで崩すシーンは皆無であったと思います。

一方、北九州は長野のハイプレスに苦しみながらも、(34)高吉が2CBの脇に出てボールを受ける、GK(1)伊藤剛がビルドアップに加わる等の工夫により前進を図ろうとしますが、パス交換を慎重に行うあまり、ボールの受け手が長野の厳しい寄せに遭ってしまいます。
特に長野CH(29)パクスピンの寄せの速さ、強度は目立っており、北九州は彼が交代する77分まで苦しめられることになります。

このプレッシャーへの焦りがあったのか、北九州は長野のハイプレスを剥がしても、その先のパスがサイドへも縦へも繋がりません。
前節讃岐戦が嘘であったかのようなパスミスのオンパレードになっていました。

ただ一方的に受け身であったかというとそうでもなく、北九州は前進に苦労しながらも前線の選手を中心に長野の厳しい寄せを利用してファールを貰っていたため、前半からセットプレーでのチャンスは数多く獲得していました。しかし、これもゴールの匂いはするもののCH(6)藤原健介からの配球とボール1個分程合わないシーンが散見されました。

試合全体を振り返った時にこの前半の北九州の過ごし方は少々勿体ないと感じる面もありました。
明らかにビルドアップは上手くいってなかったので、長野側に長身の選手が少なかったことを踏まえても、シンプルに前に蹴る回数を増やしても良かったと思います。

後半、長野が早めに選手を交代し、プレス強度を維持しようとする流れに対して、北九州は前半よりもロングフィードによる前進を図ろうとします。
60分過ぎからは、長野のスピード、強度が落ち始め、我慢が続いていた北九州としては待ち望んだオープンな展開がやってきます。
61分にはこの機を逃さないとばかりにキャプテン(14)井澤春輝が執念のドリブルで前進、このプレーをきっかけに北九州ペースへと試合は変わっていきます。

連続してCKを獲得した北九州でしたが、ゾーン8枚で守る長野の最終ラインをなかなか崩せません。

押し込む北九州とカウンターを狙う長野の攻防が数回繰り返された中、先に均衡を破ったのは北九州でした。

この試合、長野から徹底したマークを受けていたCF(10)永井龍のポストプレーから(34)高吉が迷いなく右足を振り抜きました。

北九州の総力が乗り移ったような魂のゴールであったといえます。

時間は81分、ATを含めるとまだ15分程の残り時間がある中、北九州の試合運びが注目されましたが、その選択はクロージングでした。

正直なところ、少し早過ぎるという気もしましたが、この先制点をもぎ取るまで非常に攻撃に苦労していたということ、そしてクロージングの課題を積極的に克服しようとしたチームの気持ちがこの選択に至ったのかもしれません。

前線でポイントになれる(10)永井を残したこと、そしてキープ力があるMF(8)若谷拓海を投入していたことで、逃げ切れる算段もあったのだと思います。

しかし、コーナーフラッグ付近での囲い込みが少々甘い点があり、短時間で長野ボールにしてしまう場面も目立っていました。
こうした小さな綻びの積み重ねが、勝点1にこだわる長野の同点ゴールに結びついたのかもしれません。

失点シーンを採り上げて事細かにチームを責めるようなことはしたくはないのですが、あと少し走れていれば、あと少し冷静であれば、あと少し反応が早ければ、もう一人ピッチに投入出来ていれば、という事を考えてしまいます。
この「あと少し」がいくつも積み重なったことで失点は生まれるのだと、改めて認識することになってしまいました。

3.まとめ

以上、長野戦をまとめました。

チームが大きな壁を乗り越えかけた瞬間の失点は、非常に大きな意味を持つものであったといえます。

数時間前の試合ということで、まだ悔しさが先に立つのですが、最終戦セレモニーも観させていただいて、ギラヴァンツ北九州が真の強いチームに成長するために、大きな課題をクラブ、サポーター全体で共有する場になったという点で、この試合は意義あるものになったと感じています。

そして、この試合で学んだことを活かせる場が来週の最終戦である筈です。
何とか、このメンバーで課題を克服して勝ってほしいと思います。
そして北九州の未来に繋げてほしいと思います。

増本監督も仰ってたとおり、向日葵は枯れません。

今回もお読みいただきありがとうございました!

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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