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【本】「誰がために鐘は鳴る(上)」 感想

あらすじ

ロバート・ジョーダンはアメリカ人で、かつてはモンタナ大学のスペイン語教授だった。戦前のスペインに住んでいたことがあり、フランシスコ・フランコのファシスト軍に対して共和国の非正規兵として戦っている。熟練したダイナマイト使いである彼は、ソ連の将軍から敵陣の背後に回り、地元の反ファシスト ゲリラの一団の助けを借りて橋を破壊し、敵軍が迫りくる攻勢に反応するのを阻止するよう命令を受ける。この任務中、ジョーダンは反乱軍の「老人」アンセルモと出会い、マドリードとセゴビアの間にあるグアダラマ山脈の隠れたゲリラキャンプに連れて行かれる。 アンセルモは当初、ジョーダンと他のゲリラ戦士たちとの仲介役を務めていた。ゲリラ戦士には、アグスティン、プリミティーボ、フェルナンド、兄弟のアンドレスとエラディオ、そしてしばしば蔑称で「ジプシー」と呼ばれるラファエルがいる。 キャンプでジョーダンはマリアと出会う。マリアは、戦争勃発時に両親が処刑され、ファランヘ党(ファシスト連合の一部)の手で強姦され、人生がめちゃくちゃになっていた若いスペイン人女性である。彼の強い義務感は、ゲリラのリーダーであるパブロが自分と仲間を危険にさらすような作戦に加わりたくないという気持ちと、マリアへの愛から生まれたジョーダン自身の新たな生への渇望と衝突する。パブロの妻で意志の強いピラールは、他のゲリラの支持を得て、パブロをリーダーの座から引きずり下ろし、ゲリラとしてジョーダンの使命に忠誠を誓う。

Wikipediaより

初ヘミングウェイ

特徴的な文体とは聞いていましたが本当にそうだ!
無駄を省きまくり、人物の表情や場面描写が全然ない文体が新鮮です。読み味としては結構好き。
ただしその分全くもって場面が進展しないのに平気で数10頁とか続くので、めっちゃしんどい。そういう所は結構読み飛ばしちゃいました。

一方で、心理描写は秀逸。主人公のジョーダンが、マリアとの幸せを手にしてしまいたい欲望と、二日間の任務のどっちを優先すべきか、現実はどうなっていて何をすべきか、と迷う場面の描写はすごく心に刺さります。
ヘミングウェイの魅力はここにあるのだろうと思いました。辛く苦しい運命に対峙したとき、受け入れて静かに使命を全うする。この時代の戦争に身を置く男としての生き様を、ありありと浮かび上がらせていました。

スペインマドリードというアウェイで任務を進めるアメリカ人・ジョーダンは恋をする

主人公ジョーダンはアメリカ人で、もともとスペイン語が堪能だったために爆破任務のプロとして現地に派遣されました。
スペインは内戦まっただ中であるため、外国人ジョーダンに対して不信感を丸出しにします。一貫してスペイン語の言い回しが多用され、「ケ・バ(よく言うよ、馬鹿な、なあに等。英語のファッキンくらい便利に使ってる模様)」「ノ・エス・ナダ(どうってことない)」「イングレス(イギリス人)」などと現地の言葉を扱うことで、没入感を増しています。
つまり、アウェイに飛び込んで危険な任務を全うしなければならない、ジョーダンの立場になりきれると言うことですね。

それでいてジョーダンは、マリアという若い女性に出会い、恋をします。
マリアの方もジョーダンを好きになり、仲間として行動するファシストゲリラの人達も、二人きりの時間を作ってくれたりして、生暖かく見守ってくれます。
(保護者ピラール姉御は耳をそばだてていたらしいけど)
(地球が動いたわ……)

一方でファシストゲリラの頭目であるパブロという男が、仲間内から「ろくでなし」と呼ばれつつも、何やら悪企みをしている模様で、終始不穏な空気が漂っています。
なかなかストーリーに動きがない中で、彼の存在はピリリと緊張感をもたらしています。

生きて愛を優先すべきか、任務を全うすべきか。与えられた時間は二日だけ

マリアを愛したジョーダンは、国に帰って彼女を妻にしたいと思います。
しかし現実は内戦中のスペインにいて、重要な任務を請け負っていて、投げ出すこともできない。二人が愛し合える時間はたった二日しかない。
仲間達も二日しかないと判っているから、二人に時間を与えてくれるわけですね。
冷徹な爆破職人をしていたジョーダンに変化があらわれ、生きたい!という渇望が生じます。任務そのものが危険で、このファシストゲリラ達も無事に生きて帰れるか怪しいと分かっているジョーダンは葛藤する。
その切ない境遇、辛い心情が鮮明に描き出されています。

やっぱり世界的に愛されている作家の書く作品ですね、圧倒されました。(下)は入手次第読みます。

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