草薙翠

ひきこもりながら想像で詩を書く。

草薙翠

ひきこもりながら想像で詩を書く。

最近の記事

「平和な午後」

空の薄い青が蓮池に反射している。 極楽浄土でもこんなには美しくないだろう。 これが現世だなんて信じられないな。 でも、確かに池の中ではおたまじゃくしが泳いでる。 夏の暑さも隠れてしまうような、静かな午後の風が吹く。 鐘の音が遠くに聞こえる。 夏、 平和な午後のひと時。

    • 「鴨川」

      絢爛豪華な歌舞伎座の光が、 河面にゆらゆら浮かんでる。 夏の夜の生温かさが肌に纏わりつく。 後ろで孤高のアーティストが自分だけの歌を歌う。 俺は手製のコークハイとポップコーンをあてに晩酌と洒落込む。 我が愛しの河原町。 隣に座るティーンエイジャー 酒の種類を女に語る。 今も昔も馬鹿たちが、河原で愛を囁くのだ。

      • 「白砂の海」

        湯船に足を浮かべると ぷかぷか揺れる振幅を感じる 私の足がリズムを刻み 湯と私は同化する 鼓膜がリズムを刻んでいる 白砂を讃える潮騒だ 自ずとそれらも同化する 目を閉じると三位は一体とも呼べる安らぎを生み出し 私の個は安らぎの中に沈んで行く パンッ!!花火が一発 眼下には猿の群れ 猿は調和しない

        • 「空」

          どうしようもなくムカついて、奴らを殴ってやろうと思ったんだ。 俺は奴らがたむろしてる遊具まで走った。 ふんでリーダーに殴りかかったんだ。 相手は5人だぜ? あっという間に地面に沈んださ。 しかも水溜りとは運がねぇ。 頭が冷えたんだろうな、俺は冷静になって空を見上げてた。 奴らは俺に罵声を吐き捨てていたが、そんなの聞こえやしねぇ。 ただどうしようもなく綺麗だなって、そんなこと考えてた。 気づいたら誰もいなくなってて、俺、一人で泣いたよ。 家に帰ってお母んに、転んだって言って何食

          「泡と」

          陽が落ちて月が登るまでの空白 薄い…本当に薄い青が街を照らす 泡のような世界だ 昼の満ち満ちた生気も 夜の慈愛に満ちた優しさも この時間にはないんだ 世界も僕の心も 静かに溶けて消えてしまう そんな妄想に浸っていると ポツポツと灯火が灯り始める ウタカタの時

          「おかしい」

          鞄をくるりとひっくり返し 中身を全てぶち撒ける 鐚一文入ってねぇ 本と筆と塵紙が散らかる 月は頭上でにたにた笑う ありえねぇ 今日の五条の橋の上 俺はなんでこんななんだ ありえねぇ こんなのぜってぇ間違ってる きっとあれだ、夢なんだ あの月が唄う悪夢なんだ だってこんなのあんまりだ 俺はこのまま文無しで くたばる為に生まれたのか そいつぁとんだ親不孝 こんなのぜってぇ間違ってる 河面に移る俺の顔 どうしようもないおっさんだ あぁもう全てど

          「おかしい」

          「シーシャ」

          甘い果実のような匂いが、 俺の周りをくるくるくる。 吐いた煙が輪をつくる。 くるくるくる。 頭の中もくるくるくる。 異国の音楽がエイトビートを刻む。 若者たちの笑い声。 恋人たちの囀り。 全部混ざってくるくるくる。

          「シーシャ」

          「秋の風」

          鈴虫が羽を鳴らす。 縁側に座って闇を見る。 夜のその奥を睨むつもりで。 風は哀愁のような冷たさだ。 じわりじわりと氷の針が、胸の奥へと刺さってく。 こんな痛みじゃまだ死なない。 こんな痛みじゃまだ死ねない。 そんな事はわかってる。 だけど時間の問題だ。 この気持ちは俺を殺す。 ゆっくりとじっくりと、 海底に沈むように。 息苦しさすら感じずに。 この孤独は俺を殺す。 すすきが騒ぐ音がする。 暗闇に浮かぶ黄金の海。 月の光が淡く照らしている。 生の最後の雫に思う。 波の揺らぎ

          「秋の風」

          「2匹の犬」

          ひらり、ひらりと羽が降る 漂う様に落ちてくる。 小さな白い鳥の羽。 きっと暖かいのだろう。 この指とまれと指を差す。 指の先で冷たく溶けたその羽は、 透明な水滴へと変わる。 その水滴の向こう側、 犬の死骸が横たわる。 もう反射しない黒い球。 あの毛はきっと、酷くちくちくするだろう。 羽は溶けずに積もってく。 さてさて、これはどうしたものか。 ふと足元に目をやると、血溜に両足が浸かる。 もう四半時ももつまいな。 誰か見つけてくれるだろうか。 哀れで汚い2匹の犬を。

          「2匹の犬」