「秋の風」

鈴虫が羽を鳴らす。
縁側に座って闇を見る。
夜のその奥を睨むつもりで。
風は哀愁のような冷たさだ。
じわりじわりと氷の針が、胸の奥へと刺さってく。

こんな痛みじゃまだ死なない。
こんな痛みじゃまだ死ねない。
そんな事はわかってる。
だけど時間の問題だ。
この気持ちは俺を殺す。
ゆっくりとじっくりと、
海底に沈むように。
息苦しさすら感じずに。
この孤独は俺を殺す。

すすきが騒ぐ音がする。
暗闇に浮かぶ黄金の海。
月の光が淡く照らしている。
生の最後の雫に思う。
波の揺らぎを見つめながら、
俺の救いとそれに祈る。

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