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性格は変えられるのか? 心理学・入門【読書感想】

性格の悩みをネットで検索するとさまざまなテーマやシチュエーションがある。「優柔不断」「怒りをコントロールできない」「すぐ落ち込んでしまう」…などなど。自分の性格のことで悩んだことがないという人はいないだろう。

一見バラバラな悩みの根底に共通するのは「性格を変えられない」という苦悩だ。

一方で、私たちはさまざまな"性格"を使い分けている。家族の前と1人の時、友人の前、職場など各環境で行動や思考様式を使い分けているはずだ。性格とは、各環境に適応するための行動・思考のパターン集として規定できる。

そこで、時や場所を超えた一貫性や独自性はあるのか?と研究するのが「性格心理学」になる。

”心理学”と”性格の研究”が融合したのはたった100年前

性格に関する論考は古くからあり、2300年前に古代ギリシャの哲学者テオフラストスが「エチコイ・カラクテレス」(人さまざま)と言う本を出して、ギリシャ人の性格を分類していた。「なぜ同じ教育を受けているのに違う人が出来上がるのか?」というのが出発点だったようだ。

以降、血液や顔つき、頭蓋骨、筆跡などから性格を分析しようとした。

これらは誰が見ても同じである、客観的な根拠から性格を判断しようとする点で科学的であった。

そして1930年にオールポートと言う心理学者が、性格研究を統合化し、性格の定義づけを行って、パーソナリティ心理学が生まれた。ここから心理学が性格を本格的に扱い、現代の実験や観察といった科学的手法を通して、巨映する法則を見つけるパーソナリティ心理学に繋がっている。

性格はどうつくられるのか?

心理学では長い間、性格を作るのは”遺伝”か”環境”か?というテーマで論争が繰り広げられてきた。遺伝を重視する立場の一つが優生学であり、実際のところ遺伝の仕組みが十分にわかってなかったこともあり、学説同士の議論と言うよりは思想の対立のようになっていたのだという。

現代ではどうか。性格の遺伝率は約50%ということが、研究から分かった。一卵性双生児の性格と二卵性双生児(別々の受精卵から生まれたため、遺伝子は通常の兄弟姉妹と同じように約50%が共通)を比べたところ、一卵性双生児の方が性格が似通いやすいことが分かった。同じ家庭に育ったにもかかわらずだ。

ただ、これは性格の50%が遺伝によるとはいっても不安の傾向など気質によるものは60%、対人関係への興味などは20%以下で、グラデーションがある点には注意が必要だ。

そして50%は遺伝ということは、環境が遺伝子とほぼ同等の影響を与えていると言える。環境は主に次の通りだ。

  • 家庭環境:両親とのコミュニケーション、経済状況など

  • 学校環境:教師や友人との環境など

  • 社会環境:生きている文化圏やメディアによって広まっている価値観

現代の学説では、家庭環境<学校環境 で影響を与えるそうだ。

結論:性格を変えるには

人の性格を変えるのはやはり状況や環境の変化であると言える。

自分の性格に問題を感じることはあるだろうがそれは「気のもちよう」や「意識改革」で解決できることではありません。

性格を変えるには、自分の買えたい性格の問題に、自分を取り巻く環境のどの部分に問題があるかを分析して、環境を変える努力が大事だと言える。たとえ嫌な性格というのがあっても、それは自身が環境に適応して獲得してきた結果だ。思い切ってその環境を飛び出すことがが、性格を変える第1歩であると言える。








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