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全ては“お客様のために”という使命。映画『ラストマイル』鑑賞

サービス業に携わる者であれば“お客様のために”業務にあたるのは当然とされている。
配送業者であれば”お客様のために”早く荷物を届けること。
そのサービスが行き届いていない、とみなされるのは一般的に荷物の遅延が大半である。

不在通知が届いたため指定された日時に再配達したにも関わらず受取人は不在。再度不在通知を投函し荷物を会社に持ち帰る。身支度し帰宅しようとした後に「今すぐ持ってこい」と言われた場合。すぐに対応できなければ直ちにサービスが悪いと苦情を言われてしまう。電話や対面だけに留まらず現代においてはSNSですぐに拡散されてしまう。
もし前任者が自分を犠牲にしてまでお客様を最優先で業務を遂行していた場合、後任者はそれを引き継がざるを得なくなる。



業務に当たる多くの者は佐野親子(火野正平・宇野祥平)のように自分たちが”生きるため”だけではなく、今の働き方に疑問を持ちながらもお客様あっての仕事という意識を持って働いている。過酷な業務にも関わらず、免許証があって運転する資格さえあれば誰にでもできる仕事と軽んじる人は中にはいるかもしれない。しかしいかに複数のルートを手際よく周り、安全に正確に無事に配達できるか。記憶能力、判断能力、危機管理能力が必須である。そして体力も。
長時間の運転、超過勤務、休日取得の困難、ドライバーの高齢化でいわゆる『2024年問題』にも訴えているこの映画。2つの人気テレビドラマシリーズの世界線が交差するとの話題性が少し目立ってはいるが、ただのエンタメ映画ではない。

無理をして取りつかれるように働いていた自分に気づく頃にはもう心身ともにボロボロになっている。
役職等上の立場にいれば従業員にすべての業務作業にある一定の作業、速さ、均一化を要求する。まるでベルトコンベアのように。
全てはお客様のために。
主人公・舟渡エレナ(満島ひかり)は冷淡なまでに人の命より会社の利益を優先させる五十嵐(ディーン・フジオカ)に言う。
“私たちは同じレールの上にいる“と。
それは配達業務しいてはすべてのサービス業務に携わる者が陥る可能性がある“お客さまのために”という使命。
いつしかお客様というより企業、企業というより社会、社会というよりももっと大きな世界のために。

そして
その世界に
彼女は。

“お客様のため”とはいうもの、従業員はモノのように粗雑に扱う企業もあれば、ピンチを乗り越えようと働き方を見直し一致団結する企業もある。
羊急便の八木局長(阿部サダヲ)が勘違いをして電話越しに社長を怒鳴るシーンがあったが、結果的に委託ドライバーらによるストライキにより、遅れを取り戻すため社長以下の役職者すべてが配達業務を行うところは胸が熱くなった。この社長が融通の利かない石頭の管理者であったら、、、管理者と従業員の考え方・働き方の相違が大きければ大きい程修復は不可能なのだ。

短期間であったがエリア長として大規模物流センターに改革を起こした舟渡エレナが次期のエリア長に託したのが、業務に対しまるでやる気のなかったチームマネージャーの梨本孔(岡田将生)。
映画は不穏な空気で幕を閉じたが、彼には自己を犠牲にしてまで業務の不正を訴えようとした山崎(中村倫也)の二の舞とはならずに“機関銃”とまではいかなくとも、得意のIT技術を駆使して真に“お客様のために”心を込めた働き方ができる従業員を指揮するセンター長であってほしい。





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