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企業価値を高めるダイバーシティとは|#『ISO 30414』を単なる数値埋めにしない自分たちらしい「人的資本の情報開示」セミナーレポートvol.3

2022年8月9日(火)夜に「WeWork 渋谷スクランブルスクエア」で、株式会社Enbirth×XTalent株式会社 が行ったセミナーの様子をご紹介するレポート最終回の第3弾。

今回は主催であるXTalent代表・上原 達也が「ダイバーシティ」についてご紹介します。

■本レポートのポイント
・ダイバーシティとは何か
・企業・投資家がそれぞれ重視している指標とは
・DEIを向上させるためのアプローチ

【講師紹介】
共催:XTalent株式会社 代表取締役CEO 上原 達也
京都大学教育学部卒業後、株式会社Speeeに入社し、社長室での業務に従事。 2017年JapanTaxi株式会社に入社し、事業開発を担当。2019年7月XTalent株式会社を創業、代表取締役に就任。共働きで2児の子育て中。
Twitter:https://twitter.com/uetatsu39



なぜ、DEIが重要なのか

上原:XTalent株式会社の上原です。よろしくお願いいたします。今日のテーマは「DEI×人的資本情報開示」ということで、DEI(Diversity, Equity, Inclusion)をどう企業価値につなげるかについてお話したいと思います。

弊社は現在4期目で、withworkというワーキングペアレンツに特化した転職サービスの運営や、DEI推進をテーマに企業のサポートや採用支援をしています。

私も子ども2人を育てているのですが、自分のキャリアとライフの中でどちらかしか選べないことを辛く思っていた時期がありました。トレードオフではない選択肢を増やして、日本社会の中で生き生きと働ける人が増えてほしいという思いで始めたのがwithworkです。

今はwithworkに加えて、企業のDEI推進事業も手掛けています。恐らく人的資本の情報開示におけるDEIを難しいとお考えの方も多いのではないでしょうか。

先ほどマネーフォワードさんのお話を伺って、様々な取り組みをされていながらも、それでもまだ出来ていないというのは非常に根深いテーマだと思います。「出来ていないからダメ」という話ではなく、課題がたくさんある中でどう進めていくのか、変えていけるのかという観点で、お話しできればと思っています。

まずは、なぜDEIが重要なのか?男女間賃金差が開示項目として義務化されたのは、非常にインパクトがあると言えます。
喜んでこの情報を出せる会社は、殆どないのではないでしょうか。

では、どうして国や投資家が重要視しているのか。

67%の投資家が
「経営陣・中核人材の多様性確保に関する方針」に
期待を寄せている

「経営陣・中核人材の多様性確保に関する方針」を問われているんです。かつ、そこを重視している投資家が67%いる一方、企業は13%というギャップも非常に大きい。ポジティブに捉えると、ここに伸びしろがあるということなのかなと思います。

取締役会における課題はどの企業にも共通していて、「取締役会全体の経験や専門性のバランス」そして「ジェンダー・国際性等の多様性の確保」となっています。

取締役会の実効性向上に向けた課題感は
企業・投資家いずれも共通


ダイバーシティとは何か

「属性」「知・経験のダイバーシティ」
いずれも大切

上原:では、ダイバーシティとは具体的にどんなことなのでしょうか。

日本では性別が話題に上がりやすいのですが、「属性だけではない」ということをここで強調しておきたいと思います。

性別・年齢・人種・障がい…色んな属性がありますが、伊藤レポートの中でも「知と経験のダイバーシティ」という言葉が使われています。経験や知識、そして価値観や考え方のダイバーシティがイノベーションを生むという研究結果もあります。また、属性だけを追っていてもイノベーションを阻害しかねないという研究結果もあるのです。大切なことは、両方を体現していくことです。

そして、ダイバーシティを語る上で、人口の減少は大きなテーマです。生産人口が減っていく中で、どう人材確保をしていくのかということは、特に成長企業に対して問われるところだと思います。

環境変化に対応する上で
必要なDEI構成要素は3つ

環境変化に対応する上で必要なDEIの構成要素に目を向けると、「多様性」「公平性」「包摂性」の3つがポイントになります。

「公平性」は日本の事例でいうと、育児・介護休業などのことです。どうしても構造的に差がついている所に対して、機会を公平に与えられるようにしていきましょうということです。

先ほどマネーフォワードさんのパートで、日本語のノンネイティブスピーカーの方が増えてきたというお話がありましたが、言語の壁をどう取り除いていくのか、そのための研修を実施すると共に情報開示についても並行して進めていく必要があると思います。

ダイバーシティの話って、特定の担当者の方に任されてしまいがちですよね。男女で捉えると、「女性に下駄を履かせてどうするんだ」という声もあります。けれども、私自身はそれは少し狭い見方だと思うんです。

性別にかかわらず、育児や介護・言語など、さまざまな時間的・物理的な制約があるかどうかで必要なサポートが変わってくる。色んな属性やケア責任の有無を見ながら対応することが、今後より求められていくのではないでしょうか。

ダイバーシティは人的資本の情報開示の
項目すべてに関わる土台となりうる

人的資本開示におけるDEIの項目をリストで並べると、まず多様性があって、その中に「年齢・性別・障がい」などが横並びになります。

弊社の捉え方としては、「DEIは土台になってくるもの」ということです。例えばリーダーシップの中に多様性があることで、視点が増え、さまざまな人材が働きやすい環境づくりにつながるわけです。

弊社は企業の採用支援をしています。「労働力の確保」という観点でいうと、企業としては働きやすい環境を構築しているけれども、我々がいざ候補者に聞いてみると、「働きやすそうに見えない」「両立しながら働けるイメージが持てない」という返答が時折あります。これは採用市場に対して、「色んな人材が働いてみたいと思えるようなアピールをしていない」からです。そのためにも「多様性を土台にする」という考え方は、これからますます重要になると思います。


企業の視点、投資家の視点

サステナビリティ指標の重要度は
企業、投資家間で大きなギャップが

上原:企業と投資家、それぞれが重視している指標で興味深いと思ったのが、女性管理職比率などに代表されるようなSocial(社会)に関する指標は9位で15.2%ですが、投資家からみると6位で33.7%ということ。
倍近い差、ギャップが生まれています。

今まで、こうした指標は業績と切り離されて公開されているケースが多かったと思います。しかし、例えば社員の心理的安全性を高めていく時に、多様性の観点が絶対に必要になってくる。つまり本当はこの中に、「ダイバーシティの要素が分解されてちゃんと入っている」という状態を目指さないといけないんです。そのためには、DEIを単に開示するだけではなく、これからどうやって目標に向かうのか、その中でDEIがどういう立ち位置にあるのか、ストーリーをつくることが大切です。

海外では統合報告書において、DEIの開示を行う企業も増えてきています。特にGoogleは早くて、2010年代から出していたのですが、今は先進的な企業に限らず多くの企業が公開するようになってきています。
日本でも必ずその潮流が訪れると思います。

国内企業におけるDEI推進の
ボトルネックとは

情報開示項目について、今までは女性の管理職比率、産休・育休復帰率などのお決まりの数値だったのですが、そこに男女の賃金格差などが加わります。しかし、数値だけ出しても難しいと思うんですよね。そこにどういったストーリーがあり、どんな施策を行っているのかを含ませる必要があるので、すごく大変ではあります。この機会をどうやってチャンスにしていくかというタイミングとも言えます。

弊社が今年2月に発表した「ジェンダーギャップはどこから生まれてくるのか」を明らかにした調査レポート、DEIの潮流に関する記事をご紹介します。こちらもぜひお読みください。


XTalentが掲げる
DEI向上へのアプローチ

DEI向上は制度を整えるだけでなく
カルチャーや継続的な行動が大事

上原:上図は、DEIを向上させるためのフレームワークです。制度・構造、カルチャー、行動、それぞれ並行してあることが重要です。

ここについては、弊社でソリューションも用意しています。まず、社内サーベイを実施してDEIの進捗度や組織文化を洞察、経営層・マネジメント層のアンコンシャス・バイアスを可視化し、その上でトレーニングを実施・分析しています。興味がある方はお気軽にご相談ください。


質問:
ダイバーシティへの取り組みを
アピールする最適な指標は?

河合:ありがとうございます。1つ聞きたいのですが、ダイバーシティはすごく大事な項目である一方、ごまかしが利くとも思っているんです。「女性管理職比率30%を目指します!」って、蓋を開けてみたら全員子どもがいない方だったり。そういう企業の傍ら、本気で取り組んでいる企業もあると思うんです。でもそれって表面的には全然見分けがつかないですよね。

企業の立場で、ダイバーシティに本気で取り組んでいることをアピールしたい場合、女性管理職比率ではなく何を公開すれば良いでしょうか?

上原:企業によってオリジナリティが出てくると思うのですが、管理職比率がひとつの指標であるとしたら、その手前の段階でどんな数値を出せるのか。例えば、若手社員の中で、昇給・昇格に関する意識がどのように変わってきているのか。その手前の指標を出すことで、社内の取り組みと変化を打ち出していくこともできると思います。

それと、表層的な取り組みは見破られつつあると思っています。例えば有給休暇が3日しか取れていないけれども、「有休取得率100%ですよ」とか。実際に取得率だけではなく取得の平均日数まで出している会社の方が信頼がおけますよね。「実際どうなんですか?」というシーンがこれから増えてくるんじゃないかなと思います。

イベント総括


河合:ここまでの話をまとめると、人的資本の情報開示は、単なる表層的な数値埋めではなく、経営戦略を実現するための人材戦略を打ち出し、自分たちらしいワクワクするようなストーリーに乗せて語ること。

こういうことに本気で取り組む企業が1社でも増えたら、私みたいに消極的定着で「モヤモヤしている人」も少しずつ減っていくと思うんです。
そして、日本で働くことが面白くなっていくのではないでしょうか。

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人的資本の情報開示を進める上では、分析のノウハウが必要になります。外向けにどういう情報をみせていけばよいのかという分析と、組織課題を解決するにはどうしたらよいのかという分析、2つが必要になります。

多くのHRTechが存在しますが、ボタンを1つ押しただけで答えが出てくるものはひとつもありません。大事なのは、テクノロジーだけでなくデータを見る人たちの意識です。データに向き合う際に、きちんと意思を持って見るノウハウをお伝えします。全8回の講座を受けていただくと、最後には皆さんの会社の人材戦略レポートの骨子をプレゼントできるという流れになっています。

よく聞かれることなのですが、資格はお出ししません。私たちが大事にしているのはお互いに学びあったり気付きあったりして、良い仲間を作ることです。ご興味をお持ちの方はぜひご参加ください。

セミナー終了後、ネットワーキングが行われました。参加者はシールにISO30414の項目から重要だと思うものを1つ選んで、胸にシールを貼りました。今回のセミナーでは、ダイバーシティの話が多く語られましたが、組織文化やリーダーシップなど、参加者の方の興味は多種多様。ビールを片手に名刺交換をし、歓談されました。

人的資本の情報開示を行っているマネーフォワードの忍岡さんに、経験に基づくお話を伺ったり、同じ立場で人的資本の情報開示に取り組んでいる方と親交を深めたり、約30分という短かいネットワーキングの時間も実りの多い時間となりました。



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企画・編集:XTalent株式会社
文:あおみゆうの

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