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コミュ力おばけに見えた彼がやってたこと
13年。もう大学を卒業してからそんなに経つみたいで、あらためて衝撃を受けてる今日この頃ですが。
大学の頃に所属してた2大コミュニティといえばオーケストラサークルと、もう一つがゼミ。
文学部のゼミというだけで「女子が多くてキラキラしてそう」と他の学部の子たちからはよく言われましたが、うちのゼミはおもしろかったなーと思います。
華やかキラキラ系からまじめ実直系までいろんなキャラクターの人がいて、でも誰一人被ってなくて。きれいにグラデーションになってたと言うか。
私はどっちつかずのど真ん中だ!!と自負してましたが、華やかキラキラ系の極みにいたのがうちのゼミ長。女子が多かった中、数少ない男子のうちの一人。
陽キャの極みのような彼は、ゼミだけでなくサークルの代表もやってて。いつでもみんなの中心にいて、リーダーシップがあって人気者で。「コミュ力おばけだなあ……!」と初めは異世界の人として遠目から見てました。
でも、チャラそうに見えて根が真面目な彼。なんだかんだ飲む回数が増えたりして仲良くなり、少人数でも遊びに行く仲になりました。
そんな彼とは卒業後も細々と連絡をとりあってましたが、いつも個別にLINEが来るんですよね。ゼミのグループLINEではなく。
メッセージを開くと、ゼミ全体に流してもいいお誘いだったりするのに、なんで個別なんだろう?と不思議に思いつつ。
わざわざ個別連絡もらえるとやっぱりちょっと嬉しいし、返事しなくちゃって気持ちにもなって。不思議なものだなあと。
で、ある程度個別のやりとりをした後に、必要な連絡事項をあらためて全体に送ってくれるという。
抜かりないなあ、ずるいなあ、と思ってました。
まさか、この「個別のやりとり」のすごさに気づくのが、こんなに先になるなんて。
*
文学部を卒業してから13年。印刷会社に入社した私は今、自分の会社の広告担当として仕事をしています。
ターゲットは、ビジネスパーソンや社員。
って言ったってあまりにもふわっとしてるから、具体的にはどんな人なのかを想定してみよう!なんて話にもなるのですが。
いつのまにか「得体の知れない大勢の人たち」に向けて企画しちゃってる自分がいて。
そんな中、本業とは別に社内の小さな自主企画をやってみたときの話。社員からアイデアを募集する企画で、1対1での個別チャットを連日のようにしていたのですが。
これが当たり前だけど、一人ひとり反応やこだわりが全然違うし、想像以上の大変さだったんです。
誰にも頼まれてないのに、なんでこんな企画始めちゃったんだろう?と心が折れそうにもなりました。
でも、いざ企画が形になると「こんな素敵な企画をしてくれてありがとう」「また企画してください」と嬉しい言葉もたくさん、もらって。中には本業の広告への感想までいただけたりして。
そうか。たとえ大勢の人たちに向けたことをやってても、1対1の関係と、大勢への発信とを地道に、行ったり来たりするしかないんだ。
初めてそんなことに、気づけた気がしました。
ああ、キラキラに見えたゼミ長は、学生の頃から既にそれがわかっていたのかもな。「陽キャなコミュ力おばけ」とか簡単に言ってごめんなさい。
コミュニケーションは、地道な行ったり来たり。それを彼は、ちゃんと積み重ねていたんだなあ。
広告とか、仕事のことだけじゃなくて。家族に何かをお願いするとき、友達を遊びに誘うとき。日常のどんなシーンでも、大切なことなのかもしれません。
広く浅くだけでも、狭く深くだけでもない。
「みんな」と「あなた」の行ったり来たりが、きっと毎日をつくるんだ。
あの人はコミュ力高いから、私はキラキラしてないから、と決めつけずに地道にもがきながら行ったり来たりしていこう。
こんなこと彼に話したら、「何言ってるの?」って笑い飛ばされそうだけど。