106歳と0歳が出会う日まで
大きなお腹と共に、車に揺られて約2時間。
父が運転する車に乗るのは、随分久しぶりな気がする。
目的地は母方の祖父がお世話になっている介護施設。
その前に一人で近くのマンションに住む祖母を迎えに行きつつ、父・母・祖母・私の4人で祖父のお見舞いに行きました。
マンションで転んでしまい、車椅子に乗る祖父。それでも、頭はハッキリしていて。ハキハキと近況を話しながら、大きなお腹に目をむけて「おめでとう」と言ってくれました。
この人が今年106歳なるというのは本当なのだろうか。
戦時中には軍艦に乗って、想像もつかない激動の時代を生き抜いてきた祖父。こうして元気に話している姿は何度見ても奇跡のようで、驚いてしまう。
「この歳で周りにおめでたの人がいるというのもなかなかないからね。キリよく110歳までは生きたいね。」
一人っ子で小さい子どもに馴染みがなく、「子どもが好きで産む」というよりかは、自分の人生経験として「せっかくなら」という気持ちで妊活をしてここまで来た私。
こんな私が母になっていいのだろうか?
どこか後ろめたい気持ちもありつつ。
自分が知らない時代を含め、ここまで懸命に生きてきた人の新たな希望になることだけは間違いないのだな……と祖父の言葉にハッとしたりして。
今年、106歳になる祖父だけでなく。
89歳になる祖母。
82歳の義理の母。
66歳の両親。
夫の姉・弟・妹やその息子・娘たち。
みんなお腹の中の人の誕生を楽しみにしてくれていて、いろんなアドバイスやベビー用品をくれたり。名前の案を考えてくれたり。
たった一つの命の誕生が、こんなに大勢の人たちの希望になってるなんて。
一人っ子で親戚も多くない私が、人生でこんなにも「家族が繋がり、広がること」を感じたことはなかったかもしれません。
結婚する・しないも、子どもがいる・いないもいろんな選択や事情があって。
家族の形に、きっと正解はない。
でも、自分がもともと知る家族の形が全てではないということだけは、この歳になってよくわかるし、他人と一緒になることで知る家族の形もある。
106歳と0歳が出会うその日まで、まずは健やかに過ごすこと。
そして元気な0歳と共に、平穏な日々をちゃんと積み重ねていくこと。
たくさんいるうちの「とある、ありふれた家族」の一つに過ぎないかもしれないけれど。
少しでも周りへの、ちょっとした希望のおすそわけになったら嬉しいなあと思います。