9月長野旅行 ②オーベルジュの夕食~桔梗ヶ原メルロー~
台風が迫るなか、なんとかたどり着いたオーベルジュ。
今夜は長野のワインと食材を堪能したい。
18:28
夕食の時間を告げる内線電話が鳴る前に部屋を出て、鍵を閉めて廊下に出る。
廊下には、本棚にワインや長野に関する本、部屋で観られるDVDが並ぶ。
背表紙を眺めていると、程なく内線電話が鳴っているような音がする。
部屋には戻らず、チェックインをしたダイニングに行ってみると、宿のご主人から「こちらへどうぞ」とテーブルに案内される。
18時半を過ぎる頃、3部屋の宿泊客がダイニングに集まり、夕食開始。
最初に白ワインをグラスでいただく。
昨年の夏に行ったリュードヴァンの近隣エリアにある、メルシャン椀子ワイナリーの白ワイン。
樽熟成されたシャルドネのバニラのニュアンスがありつつ、フレッシュさもあり、バランスがいい。
よく冷えていて、いい香りに旅の疲れが消えていくよう。
最初のお料理は、野菜のフリットとチキン低温調理 マスタード添え。
(以降、メニューは口頭でご説明いただいた内容を覚えている範囲で記載していますが、記憶違いがあるかもしれません)
フリットの右側には、岩塩も添えられている。
セロリを巻いた鶏肉を低温調理し、マスタードや酢漬けの人参、食べられる可愛い花と共にいただく。
まず、コーンが甘い!
宿のご主人のソムリエに伺うと、糖度が下がらないうち、朝の3時~4時に収穫されたとうもろこしだそう。
「生でも食べられるくらいです。今が甘味もありつつ食感も固くなくて美味しい時期です。」とのこと。
最初のお皿の途中で、事前にオーダーしておいた赤ワインが供される。
今回、このワインを飲みにここまで来たと言っても過言ではない。
ヴォータノワインは坪田さんのワイナリー。
元は建築士だった坪田さんが、ワイン作りに関わり始めたのは53歳。
4人のお子さんを社会人として送り出したあと、設計事務所を退職して、ココファーム・ワイナリーに住み込みで働いた。
醸造はブルースさんから、栽培は曽我さんから学んだそう。
その後、日本全国の土壌を調べ、選んだのが塩尻市の洗馬。
石がゴロゴロとした荒れた土地だが、遠い昔に海だった土壌で「ミネラル分」がワインの要になると考えた坪田さんはこの地に移り住む。
2004年にブドウを植樹、2012年に自家醸造を始めた。
現在、坪田さんのワインは人気が高く、入手は困難。
▼参考記事 NAGANO WINEオフィシャルサイト
塩尻のあたりは「桔梗ヶ原」と呼ばれ、特に「メルロー」の評価は高い。
事前オーダーの際、このメルローは在庫がないと言われたが、再確認してくれて提供いただけることになった。
坪田さんの「第2の人生」の20年間が詰まったワイン。
ソムリエから「ピノ・ノワール用のグラスにしました。香りが変わっていくのを楽しまれてください。野菜にも合うと思います。」とのこと。
香りはラズベリーやブラックベリー、ローズマリーのようなハーブ、やや土っぽい香り。ほどよい果実味、綺麗な酸、熟成3年でこなれはじめたタンニン。余韻はやや長め、複雑で存在感がある。
この感じ、北部イタリアのメルローに近いだろうか。
坪田さんは、バローロに感動してから、ワインに目覚めたそう。
料理と合わせてみると、ハーバルなニュアンスがあり、ボディも強すぎないので、野菜や鶏肉ともイケる。
昼食が早かったこともあり、最初のお料理を早々に平らげる。
鶏肉は柔らかく、野菜は新鮮で、塩味は程よく風味よくワインに合うように調理されており、今後のお料理にも期待が高まる。
次の料理はスープ。
ひょうたん型で甘みのあるバターナッツカボチャのポタージュに、泡立てたミルクをのせ、オリーブオイルが回しかけられている。
混ぜながらいただくと、カボチャとミルクの優しい甘みのグラデーションがよい。
ほっとした、くつろいだ気分になる。
ソムリエから「ワインはいかがですか、少し香りが変わってきましたか。このグラスで飲むと、より甘みが感じられると思います。」とブランデーグラスにワインを注いでいただく。
ブランデーグラスは、ピノ・ノワール用のグラスより更に丸いフォルムで香りを包み込むよう。
いただいてみると、確かに酸味がやわらぎ、甘みがやや強く感じられる。
わずかにクローブのようなスパイスや、カラメルのようなニュアンスも。
3皿目は魚料理。
北陸の鯛に焦がしたバターとトマトを合わせたソース。
花びら茸、四角豆、パプリカが添えられており、夏と秋の境目らしさがある。
鯛の身はふっくらとしており、軽めのバターソースといただくとコクが増す。
この料理とメルローワインが想像以上に合う。
ソースのトマトの風味もワインと鯛のつなぎ役になっている。
野菜とワインの相性がいいのは、最初のお皿で実証済。
花びら茸も軽くバターでソテーしてあるのだろうか、コクがあり食感もいい。
途中でいただいた焼き立てパンにソースをつけていただくとワインが進む。
いよいよ最後は肉料理。
今回、部屋を予約する時から、メインのお料理を「信州産牛サーロインステーキ」にアップグレードするプランを選んでいた。
長野の牛肉とワインが合うのは間違いないとオーダー。
信州産牛はアンガス牛と和牛を両親にもち、赤身と和牛由来のサシのバランスがいいとのこと。
サーロインは香ばしく焼かれており、赤ワインが入っているというトロリとした透明感のあるソースが添えられている。
料理とワインを合わせると「至福」の一言。
柔らかく仕上げられた赤身の旨味とコショウの風味に、赤ワインの果実とハーバルな香りが合わさって膨らみ、タンニンが脂をさらりと流してくれる。
野菜や魚と合わせるときは軽めだと感じていた赤ワインが、肉料理に負けない存在感を発揮。
付け合わせの万願寺唐辛子、椎茸、ビーツ、ラディッシュ、ズッキーニも、それぞれ手がかけられており、ステーキを引き立てている。
牛肉と野菜を順番に食べ進めると、肉料理が重くなくスルスルと食べられてしまう。
そして、この赤ワインのソースもパンが進む。
デザートは、夏苺のパフェ。
綺麗な飴細工、夏苺、アイスクリーム、ベリーのソース、底にはチョコレートクランチ。
ソムリエがボトルのオリを確認しながら、最後に残ったワインを注いでくれる。
「ベリーのソースとこのワインも合いますよ。」とのこと。
実際に組み合わせてみると、先ほど肉料理に合う存在感を示した赤ワインが、ベリーの風味のパフェとも合った。
なんと変幻自在なワイン。
最後の一杯、わずかににごり酒のようになっているのが、よりデザートと相性がよかった。
食後に、カモミールと蜂蜜のハーブティーをいただきながら余韻を楽しんでいると、シェフが厨房から挨拶に出てこられた。
ソムリエの奥様であり、夫婦二人三脚でこのオーベルジュをされている。
最初、スタッフの方が在庫がないと言った「ヴォータノワイン メルロー」を再確認してくれたのがこのシェフだったことに、この時点で気づいた。
シェフのおかげで、桔梗ヶ原のメルローワインと信州の食材を堪能することができた。
また、オーナーソムリエのサービスも素晴らしく、ワイナリーの裏話なども聞かせてもらい楽しかった。
「坪田さんに夜中に呼ばれて、翌日にブドウの収穫を手伝うこともあるんですよ。これから11月まで、どのタイミングで収穫するか、気を張っていると思います。ずっと畑にいて、ピンセットで選果したりするんです。」といった感じ。
お願いしていないにも関わらず、ボトルラベルを綺麗にはがして持たせていただいた。
2時間があっという間だった。
満足感がありつつ重くなく、印象に残るディナー。
その後、小1時間ほど食休めをしてから、宿の貸し切り風呂にゆったりと浸かり、リラックスして就寝。
🍓 🍓 🍓
やはり夕食の記事は長くなりました!
オーベルジュの看板にあったように「信州の恵みを活かす優しい蓼科フレンチ」でしたね。
安定感もあるお食事でしたが、このご夫婦による「オーベルジュテラ」は、実はまだ4年くらいとのことで驚きです。
以前は「オーベルジュ・ドゥ・シェマリー」という宿でしたが、20年続けられた宿を閉じることになった時に、もともと宿のお客さんであった寺澤さんご夫婦が宿を買い取ることになったそうです。
「シェマリー」から引き継いだ1日3組というたプライベート感を大切にされている宿です。
翌日の朝食などについては、また次回。
今回もお読みいただきありがとうございました🍷
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