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日本ワイナリー巡り「ワインツーリズムやまなし」後編/くらむぼん、ホンジョー、まるき、他【山梨県甲州市周辺】

前回からの続きです。


④くらむぼんワイン

フジクレールワイナリーから坂を下り、徒歩で十数分進むと、街なかの通りに「くらむぼんワイン」の看板が見える。

右上にくらむぼんワインの看板

更に、小さな橋を渡ると、そこは古民家の前庭。
これがワイナリーの主屋であり、そこに飲食店による出店のサンドイッチやワインを楽しむ人々が集う。

青空と古民家

この古民家ワイナリーの佇まいが好きだ。

前年の春に訪れた「丸藤ルバイヤート」や「勝沼醸造」、また20年程前に訪れたことがある「原茂ワイン」もいい雰囲気だった。
この歴史の積み重ねが、勝沼にあるワイナリーの魅力のひとつだと思う。

早速、主屋に入ってみる。

テイスティングコーナーには、古道具や文書、写真、小物などの展示品が並ぶ。

テイスティングコーナーと展示品

くらむぼんワインは、1913年に初代が葡萄酒づくりを始めてから111年。

かつて収穫したブドウを竹籠に入れて運んでいた写真や、達筆で何円かよく読めない帳簿、珍しい形のワインオープナーなど、展示品をぐるりと眺めてから、テイスティングマシンへ。

古い写真とテイスティングマシン

ワイナリーの方から説明を受けて、一番左の「新酒くらむぼん甲州」を有料試飲する。
冷たくてフレッシュで美味しい。

またコインを入れて、右から3番目の「新酒くらむボンボンピオーネ」をグラスに注ぐ。
甘口だが爽やかさもあって、ほっと気がゆるむデザートワイン。

ショップコーナーに行き、ラインナップをチェック。
「N」の文字が目に留まる。

ワイナリーのオーナー野沢さんの頭文字「N」をブランド名にしたフラッグシップワインである。
そのなかで、シャルドネ、ヴィオニエ、アルバリーニョをブレンドした「N ブラン」を選ぶ。

N ブラン 2023(自宅で撮影)

これはきっと好きなワインだ。

購入してから、主屋の建具やその奥に透けてみえる座敷など、レトロな雰囲気を味わいながら外へ。

屋外では、穏やかにワインを楽しむ人々。
秋晴れで気持ちいいのだが、直射日光にあたるとのぼせてしまいそう。
試飲もそろそろ10種類くらいになってきてややホロ酔い。

横にある野沢さん宅の玄関先でお昼寝をしている猫と目が合う。
今は日なたではなく、日陰が気持ちいいようだ。

日陰でお昼寝する猫
はちわれ猫さんをもう少しアップで
「また人が何か飲んでるにゃ」と静観

遅いランチの予約時間までまだ余裕があるので、予約してあるワイナリーに向かいながら、もう1軒訪問することにして、くらむぼんを離れる。


⑤ホンジョーワイン 岩崎醸造

くらむぼんワインから徒歩2~3分にある、ホンジョーワインこと岩崎醸造へ。

以前からワインづくりをしていた農家130名で岩崎葡萄酒共同醸造組合を設立したのが1941年という。
本格醸造のホンジョーさんと呼ばれている。

ホンジョーワインと岩崎醸造の看板

ショップに入ると、若めの男性のスタッフの方が1人で穏やかにお客さんと話しをしている。

商品ラインナップを確認したり、周辺マップを見ていると、スタッフの方がリストバンドに気づいたのか「ワインツーリズムに参加されている方でしたら、スパークリングワインはいかがですか。」と試飲グラスにボトルを傾けてくれる。
爽やかでドライな甲州のスパークリングを振舞ってもらった。

ラベルには「いわい」の文字。

ホンジョーワインがあるのは祝地区で、隣の小学校は「祝小学校」、すぐそばには「祝駐在所」もあり、なんとなくめでたい感じ。
スパークリングワインのラベルに「祝」の文字は縁起がよくて、お祝い事によさそう。

また、テイスティングマシンに目を向けると、「3種類500円でテイスティングできます。」とさりげなく説明してくれた。

折角なので、試飲してみることに。

まず、甲州のオレンジワインから。
タンニンは強すぎず、キレイな感じに仕上げてある。

ふと、「20年熟成の希少酒」「11,000円」の文字が目に入る。

右のボトルに20年熟成の希少酒の文字

この「シャトー・ホンジョー 玉響」を試飲してみる。
透明感のある明るい琥珀色、20年以上熟成された紹興酒のような香り、香りから想像するよりも味はドライな印象。
やや甘みはあるが重たくなく、ブリやアワビに合うというコメントにも納得。

写真を撮るのを失念してしまったが、もう1種類赤ワインを試飲して、そちらも良かった。

甲州の白だけでなく、オレンジワインや赤もあり、本格的なホンジョーさん。
初購入してみよう。

商品棚を見返して、赤のスパークリングが目に留まる。
「北杜の雫」という、ヤマブドウとカベルネ・ソーヴィニヨンを交配した品種。

ホンジョーラボ 北杜の雫 スパークリング
(自宅で撮影)

かなり前に、オーストラリア産のドライな赤スパークリングが美味しかったことがある。

ランブルスコのように甘くはなく果実味が濃く、とはいえ発泡しているので重たくない。
あのような赤スパークリングをずっと探している。

このスパークリングも楽しみ。

外に出て、ホンジョーワインのすぐ横にある畑を見ると、太い幹のブドウの樹があった。
樹齢何年くらいだろうか。

幹ががっしりしていて、
手前まで伸びている枝もかなり太い

以前見た樹齢70年のブドウの樹よりも明らかに太い。
もしかすると100年くらいかもしれない。


⑥まるき葡萄酒

ホンジョーワインを出て坂を上り、8分程でまるき葡萄酒に到着。

まるき葡萄酒のエントランス
1階がショップで
2階の樽の奥がレストラン
古い看板も飾ってあった

今年の春にオープンしたばかりの「イワイテラス」というレストランに14時に予約をしてある。
まだ13:45くらいだが、2階に行ってみると席がいくつか空いている。

スタッフの方に「14時に予約をしているのですが。」と声をかけると「テラスの日陰の席が空いていますが、いかがですか。」とすすめてもらい、テラス席に着く。
眼下にはブドウ棚が広がり、新緑の季節は更に気持ちよさそう。

祝地区ビュー
遠くに高い山々

ランチメニューを検討して、サラダとパスタ、まるき葡萄酒のスパークリングを注文。

まるき葡萄酒 コリエドゥペルル ブランムスー

まず、スパークリングのグラス。
爽やかで旨味もある。

地元産の野菜サラダ、ガーリックシュリンプとトマトのペペロンチーノも到着。
(写真撮影忘れ)

ホンジョーワインで、ブリやアワビと甲州ワインの組み合わせをイメージしてから、魚介類が食べたくなった。

イワイテラスのメニューは、内陸らしく、肉、チーズが多かったが、シュリンプの文字を見つけてこのパスタを注文。

海老がプリっとしていて美味しかった。
(その料理を撮り忘れるとは…)

景色を見ながら、座ってゆったりランチができた。
満足してまるき葡萄酒を後にする。


⑦宮光園周辺

フジクレールのバス停まで戻ってバスに乗り「宮光園北」で降りる。
できれば、もう1軒ワイナリーに行ってみたい。

橋を渡って、坂を上ると見えてきたのが「シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー」。

シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーの外観

ここで、その向かい側にある「宮光園みやこうえん」という古い建物に魅かれる。

「日本ワインの歴史を伝える 宮光園」とあり、下の写真のように、1階部分が和風で2階部分が洋風な建物。

宮光園の門扉

門から入ってみると、立派な蔵もある。

宮光園の白い蔵

200円の入場料を払って入ってみることにする。
スタッフの方に、ワインが入っている荷物やグラスも預かってもらえた。

靴を脱いで、まず2階へ上がると展示品がずらり。

明治10年(1877年)「大日本山梨葡萄酒会社」が設立された。
その関連資料である。

なかでも有名なのが、この真ん中にある写真。

二青年、フランスへ渡る
会社では設立と同時に、高野正誠(25歳)と土屋助次郎(19歳)の二青年を、ワインの本場・フランスへ派遣し、一年間の約束で本格的なワイン醸造を学ばせることになりました。

宮光園のパネル展示より

25歳と19歳で渡仏してワインづくりを学んだ高野正誠と土屋助次郎。
この写真を勝沼ではよく見かける。
くらむぼんワインの展示品にもあったし、以下の写真のように勝沼町のサインにもなっている。

勝沼町のサイン
(ロリアンワインの前から撮影)

約150年前、最初に日本ワインをつくりはじめた大日本山梨葡萄酒会社。
その会社が派遣したこの2人の青年達は、紆余曲折ありつつもワインづくりに関わり続ける。

かつて、日本の市場にワインは受け入れられず、「大日本山梨葡萄酒会社」は解散した。
その後、中心となって宮崎光太郎が創業した宮崎葡萄酒醸造所と観光葡萄園の総称が「宮光園」。

あの電気ブランで有名な神谷バーの創業者が、輸入ワインに蜂蜜などを加えて飲みやすくした甘味のあるワインを販売し、人気商品になった。
それをヒントに、ワインに蜂蜜を加えるなどして、宮光園のワインも売れるようになっていった。

その延長に、今のメルシャンがある。

宮光園の2階から「シャトー・メルシャン」を臨む
宮崎光太郎が後世のワイナリーを見たらどんなに喜ぶことだろうか

なお、これらのストーリーは日本遺産にも登録されている。

そして、ここ宮光園には蔵だけでなく地下まであり、日本家屋の下に石垣づくりのセラーまであった。

宮光園の主屋の2階から見えた離れ


当初、ここ「宮光園」に来るつもりはなかった。

メルシャンにワイン資料館があることは知っていたが、隣にこんな施設があるとは。

150年近く前に、国産ワインづくりを始めたパイオニア達が築いた場所。

その後、ワインは甘口から辛口にシフトし、品質も向上して、今や国内には510場を超えるワイナリーができている。

ワインツーリズムの最後にここにたどり着けてよかった。

そろそろ帰りの特急の時間が近づいてきたので、バス停に戻る。
メルシャン訪問は、また次の機会に。

宮光園からメルシャンとその奥の山々を見返す


宮光園から、バス停に戻る橋にブドウがあしらわれていた。

橋の欄干がブドウ

ぼやけてしまったが、橋の照明もブドウの形だった。

ぼやけたブドウの照明
バス停が設置されていたシャンモリワイナリーの外観

駅に向かうバスは、ツーリズム参加者でぎっしりになった。

ワインとブドウ尽くしの1日だった。


ワインツーリズムやまなしに参加してみて

今回の「ワインツーリズムやまなし」の公式サイトをみると、日本ワインの生産地である山梨県において、かつて地元の人がワインを楽しむ機会は少なかったという。

そこで、主催者の方が気軽に地元のワイナリーに訪れられるように、専用のバスやフードコートを準備して、このイベントを開催したのが17年前。

以後、地元ワインを扱う飲食店が、山梨県内に増えていったという。

当初のワインツーリズムは、2千円くらいの参加費用だったようだが、好評で混雑するようになった。
そのため、徐々に適正な参加人数に絞り、運営を強化したりして価格が上がってきている。

特に、ここ数年のバス価格の高騰などによって、今回は参加料金7000円オーバーという高価格イベントになったのではないだろうか。

当初、参加料金7,700円(税込)ということは飲み放題なのかと思ったこともあったが、そうではなかった。

だとしたら、何かしらの「ワインツーリズムやまなし」とは、といったガイド的なものがあるかと思ったが、それもなかった。

このようなエリアイベントを運営するのが、いかに大変か想像に難くない。

とはいえ、7千円も支払って誰が来るんだろうという興味もあった。

結果的に、バスやワイナリーですれ違った方々は、同世代からそれ以上の方が多く、甲州ワインを応援したい、共感し合える人と語りたいといったリピーターが多いようだった。
アルコールが入っていても騒ぐ人もいないし、マナーがいい方ばかり。

今回参加してみて、ワイナリーによって方向性が違うことも感じた。

多くの人に親しんで欲しいというスタンスか、
一部の人に本格的なワインを知って欲しいというスタンスか。

いずれも必要だと思うし、どちが必要かは人によって違う。

そのため、2次交通を提供し、ワインに合うフードコートや案内をところどころに置き、自由に巡ってもらうというのが、このワインツーリズムのあり方のようだ。
ワイナリーのなかには、参加者に無料でワインを振舞うところもあったし、そうではないところもあった。

全体でまとまったコンセプト統一はせず、ゆるっとありのまま感じて欲しいという意図のイベントだったように思う。


今後も、現地や生産者の想いを肌で感じられるワインイベントには参加してみたい。


🍇      🍷      🍇


勝沼ワイナリーの150年近い歴史と現況、感じていただけましたか。

ところどころで、写真撮るの忘れたりぼやけたりとかもありましたし、ワインのテイスティングもアバウトになりましたが、ほろ酔いの後半から感想まで5000文字オーバーの記事にお付き合いいただき感謝です!!

今回もお読みいただきありがとうございました🍷

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