日本ワイナリー巡り 岩手旅行②エーデルワイン【岩手県花巻市】
前回からの続きです。
盛岡モーニング
翌朝、マザリウムの部屋で目覚めて、身支度を整えてから、雨の盛岡へ。
ホテルは素泊まりプランで、朝は外へモーニングを食べに行こうと決めていた。
徒歩5分ほどで到着したお店がこちら。
店内は満席とのことで、しばし外で待つ。
2年弱ほど前に移転されたそうで看板や外装などは新しいが、ほっこりと温もりのある雰囲気を醸し出すお店。
定番のモーニングセットにしようか悩みつつ、10数分ほど待つと店内に案内された。
店内でメニューをみて、ホットサンドを注文。
コーヒーは定番のブレンドにしたが、他の種類にすることも可能。
「パンくずが落ちるので膝にかけてください。」と天使のマークのひざ掛けを用意してもらう。
まず、ブレンドコーヒーが提供される。
湯気がたつ熱々のコーヒーはとても香り高い。
特製のミルクとどうぞとのことで、混ぜていただく。
ほどなく、ホットサンドも到着。
具を落とさないように、両手でしっかり持っていただく。
しっとり&カリっとしたホットサンドの食感がいい。
パセリまできれいにいただいた。
周りのお客さんは3世代家族や、豆を購入する方もいて、愛されていそうなカフェであった。
コクがありつつ濃すぎず、香り高いコーヒーが気に入って、ドリップコーヒーを焼き菓子と一緒に購入。
静かであたたかな空気感のあるお店で、朝のエネルギーチャージ完了。
岩手旅行2日目のいいスタートが切れた。
昨夜の居酒屋に続き、地元のお店に癒してもらった。
雨が小止みになったら、もう少し出歩こうかと思ったが、雨は本降りで止む気配がない。
盛岡城跡や岩手山を望むのは、今回は難しそう。
盛岡には再訪せよということか。
街として気に入った盛岡に、次は晴れている時に来てみたい。
では、次の目的地に向かうことにしよう。
荷物をまとめてホテルをチェックアウトし、バスに乗って盛岡駅へ向かう。
エーデルワイン
東北本線の2両の電車に乗ってたどり着いたのは、花巻市の石鳥谷駅。
事前に電話で依頼しておいた「文化タクシー」さんが、駅前で待っていてくれた。
タクシーで「エーデルワイン」の本拠地「ワインシャトー大迫」へ向かう。
地方では、何時何分にこの場所までタクシーをお願いしたいと事前に予約しておくことが難しい場合があり、これまでも何度か断られている。
そのため、対応してくれそうなタクシー会社を探したところ、石鳥谷駅のある花巻市では「文化タクシー」さんが良さそうだった。
盛岡の街の風景とは違って、花巻では稲刈り前の田んぼや大きな民家などがみえる。
民家はかつて茅葺屋根だったような、大きな屋根の建物が多い。
また、ちらほらとブドウ畑も見える。
これから行く「エーデルワイン」は創業60周年。
その発端は昭和22年、23年の台風被害から。
当時の岩手県知事が、復興策の一環としてブドウの栽培を奨励。
栽培支援や品種の選定などが行われた。
昭和37年に大迫町役場と農協が中心となり「岩手県ぶどう酒醸造合資会社」(現株式会社エーデルワインの前身)が設立される。
農家はたくさん収穫したブドウを買い取ってもらえることになっていれば、安心して栽培ができる。
花巻市大迫町の早池峰山に咲く「ハヤチネウスユキソウ」が、オーストリアの「エーデルワイス」と似た白い花であることから、ベルンドルフ市と姉妹都市交流を行うとともに、ワイナリーは「エーデルワイン」と名付けられた。
現在の株式会社エーデルワインは、花巻市が出資する第3セクターである。
エーデルワインの商品では、「リースリング・リオン」の白ワインが比較的良く知られている。
私も、2022年4月に購入して、美味しいと思ったワイン。
「リースリング・リオン」は、ドイツなどで栽培される「リースリング」と、日本の固有品種である甲州種の「甲州三尺」を日本国内で交配させた品種で、花巻はその栽培最適地とのこと。
このような背景のあるエーデルワインに一度行ってみたいと数年前から考えていた。
冬季は雪に閉ざされることもあり、その前、ブドウが実る季節にやってきた。
エーデルワインに到着して、メインの建物「ワインシャトー大迫」で旅行カバンを預けられるコインロッカーがないか聞いてみると、「お預かりしますよ。」とのことで、ショップで預かっていただけて助かった。
案内図を確認して、少し離れたレストラン棟に向かおうとすると、スマホからけたたましい音が鳴った。
ここが大雨で警戒レベル3になったとの注意喚起であった。
このままいていいのだろうかと、不安がよぎる。
とはいえ、ランチタイムだしとレストラン棟に向かってみることにする。
ワインシャトー大迫とレストラン棟の間の道には、両サイドにブドウが植えられている。
さすがワイナリーらしい。
植えられている樹には、ナイアガラ、リースリング・リオンの名札。
黒ブドウはキャンベルあたりか。
レストランには姉妹都市であるオーストリアの市の名前がつけられ「レストラン ベルンドルフ」とある。
事前に調べた情報によると、ラム肉料理を提供しているとのことで、ランチから赤ワインを合わせようかとのんきに考えていると、エントランスに「貸切」の札がかかっていた。
扉を開けてみると、スタッフの人が来てくれて、
「本日のランチタイムは、貸し切りになっております。」
と申し訳なさそうに告げられる。
「1時間くらい待ったら、貸し切りが終わらないんでしょうか。」とたずねると、「本日のランチタイムの時間はすべて貸し切りです。」とのこと。
「徒歩なのですが、近くで他にランチが食べられるところはありますか?」と聞いてみると、「ラーメン屋とそば屋がありますが、この天候で歩かれるのは…。」ということだった。
もう少し離れたところの直売所にも行ってみると、野菜などは売られているし、菓子パンがわずかにあったが、「ラム肉ハンバーグのランチ」の代わりになりそうなものはない。
大雨だし、ランチは諦めて早く帰ることに決めた。
新幹線の時間を調べ直して、予定より出発時間を2時間早める。
また、帰路もお願いしていたタクシー会社に電話をして、時間を早めてもらえるか尋ねたところ、快く変更してくれた。
ここまで手配してから、あと小1時間はエーデルワインへの訪問目的を果たすことに集中する。
まず、見学棟に向かう。
ここは、10時~15時の間であれば、自由に見学が可能。
中に入ると、発酵したワインの匂いがする。
「順路」と書かれた札に沿って、「展示パネル」を目で追う。
ところどころに動画が再生されるパネルもあり、再生ボタンを押すと動画と音声が流れる。
また、ワインが醸造されている様子がガラス越しに見られた。
下階に瓶詰めの設備が整っている様子をガラス越しに見つつ、昨日の五枚橋ワイナリーの様子が思い起こされる。
あそこでは、もっと狭いスペースで瓶詰めをしていて、こんなに一列に設備を並べて作業をすることは難しいだろう。
それでも、手摘みでブドウを収穫して、品質のいいワインを作っている。
ワイナリーは、ひとくくりにできない。
今回のように、第3セクターなどで公共的な意味合いが強いものから、民間企業が中規模にやっているところ、個人によるブティックワイナリーまで、あり方が全く違う。
小規模ワイナリーの方が、想いが伝わってくる感じがするが、入手しにくかったり、価格帯が高めだったりして、広く薦めにくい場合もある。
日本で気軽にワインを楽しむ人が増えるためには、比較的大量に製造するワイナリーの役割も重要だと思っている。
ブドウ農家から多くのブドウを買い付けて、岩手ワインとして販売しているエーデルワインは、地域の経済をまわすという大きな役割もある。
故に、どのように作っているのか、多くの人に示すためにこのような見学コースを作っているのだろう。
そんなことを考えながら、この見学コースを後にした。
「ワインシャトー大迫」の方に戻って、有料テイスティングコーナーに向かう。
有料テイスティングは7種類+スペシャル1種類の8種類から選べるようだ。
このなかから「セットB 国内ではここだけ!希少3品種セット」を注文。
姉妹都市のあるオーストリアではメジャーな「グリューナー・ヴェルトリーナー」の白と、オーストリア原産品種の「ロースラー」と「ラタイ」の赤。
いずれも、国内で栽培しているのはエーデルワインのみとのこと。
左の白からテイスティング開始。
色調は薄く、柑橘類の香り、わずかにリースリングのようなゴムやプラスチックのような香り、軽くてドライな印象。
真ん中のロースラーは、黒い果実の香りに、スパイスやハーブの香り。
色調は濃いが、飲んでみると酸味があり、適度な果実味、見た目よりボディは軽い印象。
一番右のラタイは、抜栓したてとのことで、ロースラーよりもタンニンが口のなかで主張、ボディはやや重い。
いずれの赤も、口の中が着色するくらい、果皮のタンニンが溶けている。
また、オーストリアのワインに感じられるような、土の香り、素朴な感じがするワインだった。
オーストリアのワインは、この土着的な感じがいいという人もいる。
料理に合わせるとしたら、チーズとソーセージが合うのではないだろうか。
今、そんなおつまみにハードパンが添えられていたら最高なのだが…。
グラスを返却すると、少し早くタクシーが到着するのが窓越しに見えた。
預けていた荷物を受け取って、お礼をいい、エーデルワインを後にした。
新花巻駅からその後
タクシーで30分弱で、新花巻駅へ到着。
新幹線に乗車するまで、まだ時間がある。
「そば&お休み処 イーハトーブの里 新花巻店」の文字と、「釜石ラーメン」ののぼり。
遅いランチにする。
あっさりした醤油ベースのスープが沁みる、懐かしい味の細麺のラーメンに癒された。
売店で「くるみゆべし」とお茶を買って、新幹線に乗り込む。
今回の旅行のモヤモヤとした感じは何なんだろうと、東北らしいゆべしを味わいながら、南下した。
大雨は止みつつあり、帰りを早めなくてもよかったかもしれない。
それでも帰ってきてよかったように思うのは、ワイナリーに対する期待が大き過ぎたか。
あのままあそこにいても、よくなかったと感じた。
今回行ったワイナリーを責めるつもりは、全くない。
レストランには、事前に問い合わせておけばよかっただけのこと。
また、ワインは嗜好品であり、そもそも合う場合と合わない場合がある。
今後もあたり外れはあるだろう。
それでも行ってみたいという想いと、そこまでして行くのかという想いがせめぎ合う。
幅広くいろいろなワイナリーを経験してみたい。
そして、ブドウ畑の様子を見るには天候の影響が大きい。
今後も、思ったのとちょっと違ったとか、旅程を変更せざるを得ない場面がでてくるだろう。
また、少しナイーブになった要因として、岩手は東日本大震災の復興時に訪れて以来、久しぶりの訪問だったことも影響しているかもしれない。
ここ5~6年、岩手・宮城にはゆっくり行けなかった。
蓋をしていた、震災後の感情などを想い出したのかもしれない。
特に、今回の大雨は災害レベルで旅行なんてしていて大丈夫なのか、自問自答を繰り返した。
それでも、やはり「日本ワイナリー巡り」を続けてみたいと思う。
宮沢賢治のように「雨にも負けず、風にも負けず」地域を旅行して、日本ワインについて見聞きし、飲んで応援を続けたい。
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参考情報「ハイディワイナリー」
ハイディワイナリーから被害状況について情報がありました。
今年収穫できたブドウの醸造所は大丈夫だそうです。
ただ、道路に土砂が流れてブドウ畑周辺は孤立地域になっているようで、この先、ブドウの収穫はできない可能性もあるとのこと。
前回の記事の最初にも書きましたが、
早く穏やかな日常が戻ることを願っています。
追記
ブドウの収穫はできそうとのこと!
ただ、車両の通行が制限されているので、ボランティアは募集できないそうです。
今回は、応援とは?災害との向き合い方とは?
ということでモヤモヤして、やたら長くなりました。
岩手は大好きなのですが、素敵な記事にならずごめんなさい。
お土産も色々買ったので、できれば、また別の記事でご紹介できればと思います。
もしかすると、この記事が転換点になって、少しずつ方向性が変わっていくかもしれません。
今後も「日本ワイナリー巡り」を見守っていただけるとありがたいです。
<日本ワイナリー巡りnote記録済 12都県+ワイン経験済 16道府県=28都道府県>
未経験の県のワインが届いていますが、試すのは来月になりそうな見込みです。
どうぞよい週末をお過ごしください。
今回もお読みいただきありがとうございました🍷
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