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ワインメーカーズ・オブ・ザ・イヤー'18 獲得 『I.Brand & Family』イアンさんのお話し。

ちょうど1年くらい前の6月に社内向けZOOMセミナーで、その当時新ポートフォリオとしてアイブランドが入荷し、当主のイアン・ブランドの有難いお話が聞けました。
FB投稿を元に、noteでも記事をまとめましたのでご覧ください。

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当主:イアン・ブランド
産地:モントレー・カウンティ


ワイン造りのスタート


イアンは、大学で醸造学を学んだエリートという訳ではなく、1971年に大学を卒業後に、いわゆるフリーターのような感じで、サンタクルーズで過ごしていたそうです。
しかし、そのタイミングでカリフォルニアにおけるオーガニックワインの走りとも言えるボニー・ドゥーンとの出会いにより、ワインの仕事を始める事になりました。
どの職業でも、最初から花形の仕事をする事はありません。ワインセラー内での力仕事からお掃除まで、ありとあらゆる雑用をこなしていたそうです。日本にも通じる所があるかも知れませんが、師匠のワイン作りを見て学んでいました。
しかし、突然チャンスは現れます。
サンタクルーズの高台の方に新しくワイナリーが設立されるにあたり、スタッフを募集していました。そこは、有名なワインコンサルタントであるジョン・アルバンがコンサルタントを務めるという事で街をザワつかせたワイナリーです。
そこで、イアンは、更なる飛躍を目指して、同ワイナリーへ移籍し、ワイン造りを更に学んでいきました。

モントレーの地理的特徴


   (サリナス・ヴァレー )
モントレー湾は、北側サンタクルーズ、南側にモントレーがあるとても大きな湾です。更に、別名ブルーキャニオンと呼ばれ、グランドキャニオンをそのまま海底にしたように、とても深い海溝というのが特徴的です。
深いという事は、それだけ他の沿岸部よりも、豊富な海水量があり、それだけ、太陽の光が届きづらいので、海水の温度もとても低いのです。
一方で、陸地は、豊富な太陽をしっかりと浴び、空気が暖められ、その暖気は、冷たい空気よりも軽い為、上昇します。そうすると、沿岸部の冷気が、逆に吸い込まれる形で、冷たい風となって入ってきます。
沿岸部と陸地の温度差が強い程、沿岸部から吹く風は、強く、冷たくなります。
そういった影響で、気温は、年平均で12〜13度と低く、風もとても強い微気候となります。ただ、午後の日向は、とても太陽を強く感じ暑いのですが、日陰に入ると涼しいという日本人としては、不思議な環境ですね。

モントレーの味わいの特徴


(サリナス・ヴァレー )
平均気温が12〜13度で、緯度が37度(日本では福島県)なので、一年中穏やかであり
日照量もあるので、カリフォルニアらしい果実味と共に、酸、アロマが特徴として現れます。
また、カリフォルニアと言えば、サン・アンドレアス断層(映画でもありましたね)があり、比較的、東側が古い土壌で、西側は新しい土壌なので、カルシウムや鉄分が豊富な事も影響しています。
ちなみに、ソノマのフォートロスなどのウェストソノマコーストも同じ様な理由で、似たような特徴がありますね。

イアンのワインについて


①アルバリーニョ
モントレーらしいアロマや豊かな酸、僅かな塩っぽさ(海に近いからの影響)と果実味を表現するべく、様々なブドウを食べ歩き、追い求め結果として、発見したのが、アルバリーニョ 。イアンは、2011年から作っているそうです。
ラベルについて。モントレーというエリアは、アメリカになる前は、スペイン領の首都という事もあり、スペイン品種が植えられており、そのオマージュとして、16世紀の木彫りの絵を友人にグラフィックアート化してもらったそうです。

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②シャルドネ 
   (エスコール・ヴィンヤード)

この畑は、スイス系イタリア人のスコット・カルチオル氏が始め、クローンは、ロバート・ヤング、ハイド、の2つのクローンを使用。
味わい的に、『アメリカっぽくない』とか『混乱してしまう』といった消費者の声を聞く事も多いそうですが、イアンとしては、果実味、ミネラル、アロマがモントレーの特徴であり、それを表現する為に、必ずしもお客様の声をばかりに傾けてはいけないという信念を持っています。
個人的には、酸やミネラルの緻密さとスケール感からラヴノーやドーヴィサといったシャブリのトップ生産者を思い出されました。

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③ロゼ
ムールヴェードル、グルナッシュ、サンソーから造られています。実は、これらのブドウは、同じ畑の中で区画が分けられて多くのブドウが植えられています。土壌もカルシウムを含む岩や花崗岩、頁岩などがあり、21.5〜22ブリックスで収穫し、徐梗後、天然酵母にて発酵。
栽培の方でオーガニックになるように丁寧に育てているので、醸造に関しては、シンプルにする事が、ブドウ本来の味わいを表現する事となります。なので、結果として、補酸などはしません。

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④カベルネ・フラン
イアンが、セントラル・コーストの可能性を感じるにあたり、何が特別な品種かと言えば、その答えの一つに、カベルネ・フランが選ばれます。
今まで注目されてはいませんが(今も!?)、セントラル・コーストらしさを表現する上で、カベルネ・フランやグルナッシュは、これからとても重要になるでしょう。
カベルネ・フランは、ロワールらしいシリアスなニュアンスがありながら、カリフォルニアらしい適度な果実味あるので、低アルコールでありながら、タンニンもきめ細かくエレガント。
意図的でなく、自然に与えられたブドウを表現すると、こういった味わいになります。


⑤ムールヴェードル
  (ライム・キルン・ヴィンヤード)

実は、このムールヴェードルの畑は、とても古く1824年に植えられ、樹齢100年(もちろん自根)もの古木のブドウを使用しています。
前述のロゼの畑なので、カルシウムが多い岩や花崗岩がメインとなります。種まで、熟すので全房ブドウを50%ほど使用しています。南ローヌの畑のように、ムールヴェードル、グルナッシュ、サンソー、マルベック、ジンファンデルなどが古くから植えられており、その畑の個性をイアンは表現しています。ただ、品種の個性として、異なるジンファンデルに関しては、ジンファンデルの雄であるターリーやベッドロックが購入して造っているそうです。

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シリーズに関して


⚪︎ル・プティ・ペイザン=村名クラスのイメージで、ワイン好きの方が普段使いできる価格帯でありながら、それ以上のクオリティを意識して造るワイン。
⚪︎ラ・マレーア=スペインをルーツに持つ同地のオマージュとして、スペイン品種で、これからのモントレーを意識したワイン。
⚪︎アイ・ブランド=モントレーの今まで注目されていなかった畑や品種など、これからの同地をフィーチャーするイアンの大本命ワイン。


ラベルやボトルに関して


ペイザン・シリーズは、リベラルなワインに対して、農家出身で現場主義という事を念頭において、ある意味ファニーなラベルデザインとなっています。農父は、イアンの父親をイメージしており、実直な栽培家を表現しております。
そして、ボトルなのですが、
実際に手に取った事がある方は、お分かりかと思いますが、高級ワインに使われるほどのクオリティ(価格)のボトルを使用しています。
3000円代でありながら、1万円くらいするワインに使われるようなしっかりとしたボトルを使用しています。
ワイナリー設立当時のノウハウがあまり無かった時代から、良いボトルを使用し、そのボトルに見合うワイン造りを目標にしていたそうです。現在では、もちろんその目標は、達成されておりますが、全ての質を落としたくない事から、これからも、ボトルやコルクなどにもこだわり続けるそうです。


まとめ


カリフォルニアワインは、とても多様化しておりますが、まだまだ、知られていないエリア、品種というのが無数にあります。オーガニックで栽培し、まだ注目されない品種や畑に情熱を傾けている生産者も沢山いますので、是非、これらの生産者のワインを試して頂きたいと思います。

本日はこんなところで・・・