ワインソムリエ講座7/イタリアワイン
イタリアはフランスと並ぶ世界最大のワイン生産国であり、その生産量は年間50億リットル以上にもなります。20の州全てでワインが生産されており、地中海性気候や多様な地形により、極めて多様なスタイルのワインが生み出されています。イタリアワインの大きな特徴は以下の通りです:
1. 多様なブドウ品種
イタリアでは公式に登録されているブドウ品種だけでも400種以上があり、非公式を含めると2000種以上とも言われます。他国ではあまり見られない土着品種が数多く存在し、個性豊かなワインを生み出しています。
2. 地中海性気候と多様な土壌
北部のアルプス山脈から南部のシチリア島に至るまで、標高や気温、土壌が異なるため、地域ごとに特徴的なワインが作られています。
3. 食文化との調和
イタリア料理とワインの相性は抜群です。地元の食材や料理と合わせることで、その魅力がさらに引き立ちます。
イタリアワインの歴史
イタリアにおけるワイン生産の歴史は、紀元前800年頃のエトルリア人の時代にさかのぼります。古代ローマ時代にはワイン造りがさらに発展し、ヴィティス・ヴィニフェラ(ブドウ栽培用の植物)が地中海全域に広まりました。中世には修道院がワイン造りの中心となり、ルネサンス期には商業としてのワイン生産が本格化しました。
19世紀後半、フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)の被害を受けてワイン産業は危機に瀕しましたが、その後復興し、20世紀後半には品質向上を目指したワイン法が整備されました。
主要なワイン生産地域
イタリアには20の州があり、それぞれが独自のスタイルと特産品を持っています。以下に主要な地域を紹介します:
1. ピエモンテ州
• 代表的なワイン:バローロ、バルバレスコ
• 主なブドウ品種:ネッビオーロ、バルベーラ、ドルチェット
• アルプスの麓に位置し、霧がかかる気候が特徴的。ネッビオーロから造られるバローロは「ワインの王、王のワイン」と称されます。
2. トスカーナ州
• 代表的なワイン:キャンティ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ
• 主なブドウ品種:サンジョヴェーゼ
• なだらかな丘陵地帯と地中海性気候に恵まれ、スーパータスカンのような革新的ワインも誕生しています。
3. ヴェネト州
• 代表的なワイン:アマローネ、プロセッコ、ソアーヴェ
• 主なブドウ品種:コルヴィーナ、ガルガーネガ、グレーラ
• アマローネは陰干ししたブドウを使用する「アパッシメント製法」で知られています。
4. シチリア州
• 代表的なワイン:ネロ・ダヴォラ、マルサラ
• 主なブドウ品種:ネロ・ダヴォラ、カタラット、グリッロ
• 地中海最大の島で、近年は高品質なワインの生産が増加しています。
代表的なブドウ品種
白ブドウ
• トレッビアーノ:フレッシュで軽快な白ワインを生む品種。
• グリッロ:シチリアで栽培され、アロマティックでしっかりした酸味が特徴。
• ピノ・グリージョ:国際品種で、ヴェネト地方での生産が盛ん。
黒ブドウ
• サンジョヴェーゼ:トスカーナの主要品種で、果実味と酸味が豊か。
• ネッビオーロ:熟成能力が高く、複雑な香りが特徴。
• ネロ・ダヴォラ:南イタリアを代表する品種で、濃厚な赤ワインを生む。
イタリアワインの分類
イタリアのワイン法では、ワインは以下の4つのカテゴリーに分類されます:
1. Vino(ヴィーノ)
• テーブルワインに該当。ラベルに品種や産地の記載は基本的にありません。
2. IGT(Indicazione Geografica Tipica)
• 地域性を持ったワイン。自由なブレンドが許され、スーパータスカンもこのカテゴリーに含まれることが多い。
3. DOC(Denominazione di Origine Controllata)
• 法律で定められた地域で生産されたワイン。生産方法や品種が規定されています。
4. DOCG(Denominazione di Origine Controllata e Garantita)
• DOCより厳しい基準を満たす高品質なワイン。官能検査に合格する必要があります。
料理との相性
イタリアワインは地元の料理と合わせると最も楽しめます。
• ピエモンテ州のバローロ:トリュフやジビエ料理と相性抜群。
• トスカーナ州のキャンティ:トマトを使ったパスタやビステッカ・アッラ・フィオレンティーナにぴったり。
• シチリア州のネロ・ダヴォラ:濃厚な肉料理やグリルした野菜と好相性。
まとめ
イタリアワインはその多様性と地域性において、世界でも他に類を見ない存在です。伝統と革新が共存するイタリアのワイン文化は、世界中のワイン愛好家にとって常に魅力的なものとなっています。ワインの背景にある歴史や地域の特性を学ぶことで、さらに深い楽しみを味わうことができるでしょう。