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【第一回】 故郷の島から大陸へ「ナポレオン」 [歴史発想源/大望の凱歌・英雄戴冠篇]

現在『ビジネス発想源 Special』の「歴史発想源」では、18世紀のヨーロッパを舞台とする「不屈の翼成・中欧聖戦篇」を連載中です。

神聖ローマ帝国・オーストリアの名将であるプリンツ・オイゲンが主人公で、強大な敵国であるフランスをはじめ、様々なヨーロッパの国家や諸侯が登場します。

そこで、近世ヨーロッパ史をさらに深く理解していただけるよう、その「中欧聖戦篇」の後日譚にあたる「大望の凱歌・英雄戴冠篇」の序盤部分(全9話中1〜3話)を、期間限定で掲載いたします。

「中欧聖戦篇」から約100年後、今度は敵国フランスで皇帝に上り詰め、さらには神聖ローマ帝国を滅亡に追いやる不世出の英雄ナポレオン・ボナパルトが主人公です。

「中欧聖戦篇」と「英雄戴冠篇」を併せて読むと、複雑なヨーロッパ史がかなり明確に分かるようになるでしょう。

現代の会社経営やマーケティング戦略のヒントが1つでも見つかると嬉しいです。

それでは「英雄戴冠篇」、第1回をどうぞ!


02英雄戴冠篇TOP

【第一回】 故郷の島から大陸へ「ナポレオン」


■コルシカ島に生まれた、運命の獅子


 ヨーロッパとアフリカを隔てる、地中海。
 イタリア本土から西の沖に、コルシカ島とサルディーニャ島という島が南北に並んで浮かんでいます。
 現在、面積の大きな南のサルディーニャ島はイタリア領ですが、面積の小さい北のコルシカ島は、フランス領です。
 コルシカ島は「地中海で最も美しい島」と呼ばれており、変化に富んだ地形と自然の恵みにあふれる生産物が多く、フランスを代表するバカンス地。
 フランス国内で初めて世界自然遺産に登録されたり、「ナショナルジオグラフィック」で旅行すべき場所のランキングで世界1位に輝くほどの奇跡の島です。

 このコルシカ島は、その要衝的な位置から、古来より周辺の大国によって領有戦争が何度も起こり、ローマ帝国やイスラム勢力、ジェノヴァやピサなどの都市国家など、目まぐるしくその統治者が変わっていきました。
 そして1729年、支配者であるジェノヴァ共和国が次第に衰退してきたことを機に、住民たちが決起。
 それをジェノヴァが鎮圧できないでいる間に、住民たちは島から出てシチリア王国の軍人となっていたパスクワーレ・パオリという29歳の人物を呼び寄せて指導者に仰ぎ、コルシカ島は独立国家形成へと動いていました。
 ところがジェノヴァが大国フランスにコルシカ島の鎮圧を願い出て、さらにコルシカ島の統治権まで譲渡してしまったので、事態はとても深刻なものになりました。
 パオリ将軍はフランスに宣戦布告して徹底抗戦をするも、強国フランスの猛攻に敗北してイギリスへと亡命し、1769年、コルシカ独立戦争は終結して、コルシカ島はフランスに併合されることになりました。

 パオリ将軍の副官を務めていたカルロ・ブオナパルテは、パオリの亡命後に新統治者のフランス軍に転じました。
 独立戦争が終わった1769年の8月15日、そのブオナパルテ家に元気な次男が誕生します。
 ブオナパルテ家はかつてイタリアの貴族だったので、カルロはこの子に「ナポリのライオン」という意味のイタリア語で「ナポリオーネ」という名前をつけました。
 ナポリオーネ・ブオナパルテ。
 彼こそ、後のナポレオン・ボナパルトです。

 少年ナポリオーネは、運動も得意でしたが、読書と数学が何よりも大好き。
 中でも、歴史書を読むのが特に大好きで、中東までも征服したアレクサンドロス大王、ヨーロッパを制圧したカエサルなどの古来の英雄たち、そしてコルシカ独立戦争で戦ったパオリ将軍に憧れ、自分も将来は人々のために戦いたいと思っていました。

 父カルロ・ブオナパルテはフランスに投降してからフランスの支配下で判事となっており、フランスの下級貴族として認められることになったので、子どもたちがフランス本土での国立学校に入学できる権利を得ることになりました。
 そこでカルロは、長男のジュゼッペを弁護士として、次男のナポリオーネを軍人として教育を受けさせるべく、二人の子をフランス本土に渡らせて、それぞれ法律学校と士官学校に入学させることにしました。

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