ワークかライフか 「離職防止」に必要な観点
「人手不足」の現状
今年の9月、帝国データバンクが全国の企業を対象に実施した調査によると、正社員が「人手不足の状態にある」と回答した企業割合が半数を超え(50.1%)、新型コロナウイルス感染拡大後最大となり、いよいよ企業の人材不足の深刻度が新たな段階に入りつつあります。
HRエキスポでの声
また、私自身、先日幕張メッセで開催されたHR・EXPO(人事サービス提供企業が集まる展示会)に赴き、多くの提供会社の方々からオンボーディングや離職防止策のサービスニーズが高まっているというお話を聞き、迫りくる人手不足の中で、なんとか現有人材の離職や入社社員の早期離脱を止めたい
というクライアント企業の声の高まりを窺い知ることができました。
転職に影響するものは何か?
では、離職防止のため、企業は何を知り、何をすべきでしょうか?
それを考える上で、興味深い考察がありますので紹介したいと思います。それは、カリフォルニア大学心理学教授のダグラス・ボネット氏が実施した調査で、アメリカ西海岸の大企業に勤める112人のマネジャーへ聞き取り調査をし、「仕事の満足度」や「全体の幸福感」が転職に与える影響を分析しました。(「全体の幸福感」は、勤務以外も含む生活全般の幸福感を指します)その結果、「仕事の満足度」が低い状態でも「全体的な幸福感」が高い場合、転職率は低くなり、逆に仕事への満足度が高くても、ワークライフバランスなど生活全体の幸福度が低ければ、それを改善しようと転職する傾向にあるということが分かりました。つまり、転職には、「全体的な幸福感」がより強い影響を及ぼすということです。
企業がまず取り組むべきこと
企業では、離職防止のために、様々な取り組みが行われ、社内コミュニケションの活性化、マネジメント力向上、研修の実施、長時間労働の削減、柔軟な働き方ができる労働環境整備などがその取り組み例として挙げられます。上述の調査結果からすれば、社員のワークライフバランスを実現するために、長時間労働の削減と柔軟な働き方ができる環境整備を優先順位高く実施していくべきだと考えます。
1on1の有効活用
さらに、社員個々に違う、生活全般の悩みや課題をフォローする、きめ細かい対応も必要で、多くの企業が導入している1on1はそれを実施するための良い機会となるでしょう。1on1の中で業務の話のみならず、生活、家族の状況、ライフイベントに可能な限り耳を傾け、気にかけ、必要に応じて現場で便宜を図っていくことが離職防止には大切となると思われます。
<参考文献>
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