真夜中の草むしり
ーオレとアチキの西方漫遊記(45)
静岡県伊東市にある義父の別宅は、滋賀県甲賀市からクルマでおよそ6時間の距離。遅い夕飯を取るために深夜営業の飲食店に寄り道するなど、数回の小休止を挟み、目的地に到着する頃には、深夜2時を過ぎていた。疲れも幾らかあったが、この日の寝床は何と言っても勝手知ったる義父の別宅だ。心置きなくリラックスできると信じて疑わなかった。そして、安心しきっているときに"落とし穴"にはまるのは人の常。わが夫婦も例外ではない。
前回のお話:「丸ごとカボチャの記憶」/これまでのお話:「INDEX」
"あやしいふたり"
「こりゃ、参ったな」ー。思わず口を衝いた言葉だ。クルマのヘッドライトに照らされたガレージがあったはずの場所には、ひざ下丈の雑草が所狭しと生い茂っている。さすがに、これではクルマを停められない。
頭を抱える奥さん。すっかり忘れていた様子だ。ただ、それは仕方がない。奥さんは手術、リハビリを経て、つい先日退院したばかりだ。気付く余裕があるはずもない。ため息交じりに「やるか」と一言。頷く奥さん。
丑三つ時の閑静な住宅街。黙々と草むしりする夫婦のシルエットがヘッドライトに浮かび上がる。どう見ても"あやしいふたり"。とんだ共同作業だ。幸いに周囲の住人たちには気付かれず、通報されることはなかった。
床に就いたのは明け方。ただ、落とし穴はこれにとどまらない。(続く)
(〈上から順に〉:雑草が生い茂ったガレージに驚く=フリー素材を基にりす作成、遅い夕飯に奥さんが選んだのは餃子と炒飯のセット=りす撮影)
関連リンク(前回の話):
「オレとアチキの西方漫遊記」シリーズ:
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