雨と四葉

見た夢 ことば

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初恋の色

部屋中に響き渡る怒号、本棚があればそこから本を引きずりだし、植物を倒す。その行き場のない、声にならない、人間の奥底に眠るなにかそのもののようだった。 さも皮肉なことに、まるで人間そのものに見えるそれを物憂げな表情でそれを視界から外す。 もう慣れたつもりだった、もう幾夜もこんなことばかり繰り返してきた。 僕には弟がいた。4つ下の、大人しい弟だった。 しかしある事故をきっかけに障害を持ってしまった。僕はまだ子どもで、弟に何があったかなんて到底理解できなかった。 ただ毎日

    • 零れるように光る海を見下ろしていた。 あまりに広大で呑み込まれそうだ。 嬉しくなって手を伸ばしてみる。 それはたちまち絵になってしまう。 嗚呼、とどかない。 僕はまた、自分で描いていた絵を、眺めていただけなのか。

      • ほこらしげ

        傷つけたいという感情も助けたいという感情も結局は自分の中の何かを守りたいだけなんだろう。 しかし前者は誰かの心の中のその何かを大切にすることができない悲しい人であり、後者は誰かの心の中の何かを大切にしなくてはならないことをしっている。 誰かを傷つけて自分を大切にするほど、僕は強くも弱くもなれない。それによって悲しくて辛いこともある。 しかしその悲しさを味わえることにどこか、誇らしげな気分になる時がある。いつだろうか。きっとそれは、あなたが笑っている時だろう。

        • 傷つけたいという感情も助けたいという感情も結局は自分の中の何かを守りたいだけなんだろう

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        • 零れるように光る海を見下ろしていた。 あまりに広大で呑み込まれそうだ。 嬉しくなって手を伸ばしてみる。 それはたちまち絵になってしまう。 嗚呼、とどかない。 僕はまた、自分で描いていた絵を、眺めていただけなのか。

        • ほこらしげ

        • 傷つけたいという感情も助けたいという感情も結局は自分の中の何かを守りたいだけなんだろう

          やさしさの意味

          「やさしくあろう」だなんて、だれしもが思い、そしてそれがいかに難しいかを知らしめられる。 ある人はそれを自己満足と呼び、またある人はそれを偽善と呼ぶ。 僕はやさしさというものは、たくさんの人を傷つけて得た、枷のようなものに感じていた。今まで傷つけてきた人への贖罪として、自分を律するためにひとにやさしくあろうと思っていた。 だから、人に優しくするときに感謝されると、どんな顔をして笑えばいいのか僕はわからなかった。 ただ、あの時の誰かを間違えて傷つけてしまったかもしれない

          やさしさの意味

          分かっている。容易くそんなことなどできてしまう。それでも僕は君を否定出来ないんだ。何故だろうね。

          分かっている。容易くそんなことなどできてしまう。それでも僕は君を否定出来ないんだ。何故だろうね。

          誠実

          「Honestly」という歌がある Honestly is such a lonely word. Everyone is so untrue. Honestly is hardly ever heard. And mostly what I need from you. (''誠実''とはなんとも虚しい言葉だろうか 誰も皆不誠実ではないか ''誠実''なんて耳にすることはほとんどない しかしそれこそ僕がいちばん君に求めたいものなんだ) 誠実さとはなんだろうか。答えはひ

          だからこそ貴方は美しいのだ

          なにか、大切にしていたいものはあるだろうか。 彼にはそんなもの無かった。いや、持ちたくなかったのだ。それを失った時、彼はすべてに絶望してしまう気がしてならなかったのだ。 彼は臆病だった。 昨日をなぞるような今日を繰り返し、擦れゆく日々の中で、また今日も、そしてまた今日も、と日々が彼を置いてゆく。 それが彼を安心させたのだ。変わらないものばかり追い求めてこれ以上失くすことから自分を遠ざけたのだ。 そうしてくだらない日々に埋没していく中、彼は一人の少女と出会った。彼女は

          だからこそ貴方は美しいのだ

          自分とは

          自分、という存在そのものがわからなくなる夜がある。えも言われぬ理由も何も無い不安に潰されそうになってしまう。 ただ暗い終わりのない夜が永遠と続くような、そんな感覚だ。 自分とは、なんなのだろうか。自分そのものを何かで定義しなければ自分では無いのだろうか。彼女と話すうちに彼はそんなことをよく考えるようになっていた。 学歴なのだろうか、努力なのだろうか、その時の彼はそんなことばかり考えていた。 積み重ねる自分になる努力の中で彼はますます自分がわからなくなっていった。 どう

          優しさ

          優しさの意味とはなんだろうか。 彼は優しさに憧れていた。 しかし彼は他人に都合よく生きるのを、自らのプライドが許さなかった。 許せなかったのだ。それを当たり前に思うわれてしまうことが。 ある日彼は、彼女に出逢った。 彼女は、優しく、そして強かった。 優しさの意味、なんて考えずにただ、彼女の優しさに彼は憧れていた。 こうありたいというそれだけの理由で、優しくある彼女は、いとも容易く彼の分からなかったその理由を、持っていた。 彼は他人にどう思われたいかしか、考えてい

          朧げに、確かに何かを見ていた気がしていたが、今では分からない。 何だか自分の生き方みたいだ。そう、彼は思った。 はっきりとあの時見えていた感覚が、日々だんだん擦れて無くなっていく。 確かに手にしていたものが指の隙間から零れ落ちていく。 戻りたい、なんて気持ちも今では湧かない。 悲しい、寂しいなんて感覚も今ではなくしてしまっているのだ。 それが1番、彼の心を空っぽにするのだ。 しかしそんな日々の全てが、今日の彼を彼にする。 彼はいつ、それに気づくのだろうか。

          空っぽ

          反省とは自己をありのままに見つめることだ。と誰かが説いた。 彼はありのままの自分なんてあるのだろうか、そう思った。 自分らしさというものを他人にばかり求めてきた彼は自分を自分たらしめるものすら、他人に求めているのだ。 彼にとって自己をありのままに見つめる行為など、全く意味を持たなくなっていた。 空っぽの彼には元々何も無いのだから。 だからこそ心を誰かで満たして、そうして自分らしさなんてものを形成したふりをして自分を保っていたのだ。そうして人を傷つけては、見て見ぬふり

          幸せ

          彼女は可哀想な人のための自分でありたい、そうして生きていきたいとそう話してくれた。 可哀想な人とは誰だろうか、彼は思った。もし、五体不満足で我々の価値観からしたら満足に生きれてはいないのでは、と思う人がいたとする。 果たしてその人は本当に可哀想なのだろうか。その人はその人が生まれたその境遇で自分のために自分なりの幸せを持って生きている。 その人をただ、可哀想だからなんて理由でなにかしてあげるのは、ただその人を否定し、“してあげた”という自己満足を得るだけなのかもしれない