巻き肩の基本概要と改善策について
巻き肩は、肩甲骨が前方に引き出され、肩が前に巻き込むような姿勢を指します。デスクワークやスマートフォンの長時間使用、猫背などが原因で引き起こされることが多いです。巻き肩が進行すると、肩こりや頭痛、肩関節の可動域制限などの症状が現れることがあります。
巻き肩の病態
巻き肩は、肩甲骨の位置が前方に引っ張られ、肩関節が内側に回旋してしまう状態です。この状態では、次のような筋肉の不均衡が発生します。
• 胸部の筋肉が緊張:特に大胸筋や小胸筋が緊張して短縮しているため、肩甲骨を前方に引っ張ります。
• 背中や肩甲骨周囲の筋肉が弱化:肩甲骨を正しい位置に保つための筋肉、例えば僧帽筋下部や菱形筋が弱くなることで、肩が前方に巻き込まれます。
これらの筋肉の不均衡により、姿勢が悪化し、肩甲骨の可動性が低下することで肩関節に負荷がかかり、肩こりや首の痛み、さらに肩のインピンジメント症候群(肩峰下インピンジメント)などのリスクが高まる可能性があります。
巻き肩に有効なストレッチ
巻き肩を改善するためには、胸部の筋肉をストレッチし、肩甲骨周囲の筋肉の柔軟性を回復させることが重要です。以下の筋肉を中心にストレッチを行うと良いです。
1. 大胸筋のストレッチ:
• 壁に手をついて胸を開くことで、大胸筋を伸ばすストレッチが効果的です。
• 90度または135度の角度で腕を壁に当て、胸を開くように体を回旋させることで、特に短縮しやすい部位をしっかりと伸ばせます。
2. 小胸筋のストレッチ:
• 肘を壁や柱に当てて、肩甲骨を後方に引きつけながら胸を開く動作を行うことで、小胸筋の緊張を緩和できます。
3. 広背筋のストレッチ:
• 両腕を上げて、片方の手で反対側の手首をつかみながら体側を伸ばすことで、広背筋をストレッチできます。
鍛えた方が良い筋肉
巻き肩の改善には、弱化している背中や肩甲骨周りの筋肉を強化することが重要です。特に次の筋肉を鍛えることで、肩甲骨を正しい位置に保つことができます。
1. 菱形筋(りょうけいきん):
• 菱形筋は肩甲骨を内側に引き寄せ、正しい位置に保つ役割を果たします。ダンベルローイングやチューブを使ったシーテッドロウなどの背中のトレーニングが有効です。
2. 僧帽筋中部・下部:
• 僧帽筋の中部と下部は、肩甲骨を下げる役割を担っています。特に僧帽筋下部は、巻き肩によって弱化しやすい筋肉です。フェイスプルやバンドプルアパートといったエクササイズが効果的です。
3. 肩甲骨周囲筋(肩甲下筋、棘下筋、肩甲挙筋など):
• 肩甲骨の安定性を高めるために、肩甲骨周りのインナーマッスルも鍛えると良いです。特に肩外旋を行うトレーニング(例:バンドを使った肩の外旋運動)は、肩甲骨の位置を整えるのに役立ちます。
文献の紹介
• Kendall, F. P., et al. (2005). Muscles: Testing and Function, with Posture and Pain.
筋肉の機能とそのバランスが姿勢に与える影響について詳しく解説しており、巻き肩の改善にも役立つ知識が記載されています。
• Sahrmann, S. A. (2002). Diagnosis and Treatment of Movement Impairment Syndromes.
動作障害に関する評価と治療法を詳細に説明しており、巻き肩に関連する筋肉の問題を改善する方法を考える上で有用です。
まとめ
巻き肩は、現代人に多く見られる姿勢の問題であり、胸部の筋肉の短縮と肩甲骨周囲の筋力低下が主な原因です。ストレッチやトレーニングを通じてこれらの筋肉を調整し、日常的な姿勢に気をつけることが、巻き肩の予防や改善につながります。