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#推薦図書『広辞苑をつくるひと』
読書の秋ということで、noteのお題企画で推薦図書の記事を募集していたので、今回はわたしが薦める本について書きます。
タイトルにもありますが、わたしがお薦めするのは、三浦しをんさんが書かれた『広辞苑をつくるひと』です。
先月、広辞苑を買いましたという記事を書きましたが、その広辞苑を購入した際に特典としていただいた本です。
お薦めしておいてなんですが、実はこれ、広辞苑を予約したひとに渡される非売品のようなのです。わたしは予約して購入したわけではないのですが、たぶんたまたま購入した書店に在庫があったのでしょうか、いただくことができました。
なので、もしご興味のある方は、ぜひお近くの図書館に行ってみて下さい。最新の広辞苑を置いてあるところならたぶんあると思うので!
『広辞苑をつくるひと』の内容は、ざっくり言うと、広辞苑の製作に関わるひとたちの仕事ぶりや仕事に対する想いなどを、著書である三浦さんがインタビューして、まとめたものです。
広辞苑の内容(掲載する言葉の意味、解釈、用例など)を検討する編集、校閲するひと、文字(フォント)やイラストを検討・改訂するひと、印刷に使用される紙について、納品される函(はこ)をつくるひと、印刷工場での仕事の流れ、など、製作に関わるすべてのひとに三浦さんが取材して、三浦さんならではの視点で描かれていておもしろい本です。
なんというか、小学生のときの社会科見学のような、ものづくりの最初から最後までを見学していてその光景を見ながら、先生役の三浦さんに解説してもらっているような気分になれて、「へぇ~」「そうだったのか!」という驚きと発見があります。
読後感は、広辞苑に対する愛着が確実に湧きます。
ことばを大切に扱いたいと思っているひとや、ことばそのものに興味があるひとにはぜひお薦めです。
なぜ非売品なんだ!販売したらいいのに、と思うくらい、ことばへの理解と愛着が深まると思います。
三浦さんの本を最初に読んだのは『星間商事株式会社社史編纂室』ですが、とても文体のリズムが軽やかというか、コミカルさもあって、読みやすい文章を書く方だなと感じています。
『広辞苑をつくるひと』でも、ことばの語釈や用例を考えるチームの田嶋さんに取材したときのくだりで、「さする」と「なでる」の違いに触れた話がありました。
「さする」は、痛みや寒さの緩和のために行う。手のひらを使う。反復的に動かす。必ずしも軽いわけではなく、力を込めて行う場合もある。「体調の悪いひとの背中をさする」など、いたわる気持ちがあり、「こする」よりも「なでる」に近い。「なでる」は、指先や毛を使用した道具などを使うこともあるが、主に手のひらを使う。一度あるいは数度動かす程度で、「さする」「こする」ほどの反復感はない。触れる対象の形をなぞるように行う。(『広辞苑をつくるひと』 第1章 国立国語研究所 より引用)
この語釈のメモを見たときの、三浦さんの反応は
田嶋さんのレポートを読み、私は首がもげるかと思うぐらいうなづいた。「たしかに、「酔っ払って便器に抱きついている私の背中を、彼は優しくさすってくれた」というふうに使いますね。そんなときに、「彼は優しくなでてくれた」だと、「おい!まだうまく吐けていないのに、なにをさっさと背中から手のひら離しとるんや!」と言いたくなる。逆に、「彼は私を抱き寄せ、優しく髪をなでた」なら納得ですが、「優しく髪をさすった」だと、「おい!いつまで触れとるんじゃ、髪がぐしゃぐしゃになっちまうだろう!」と言いたくなる」
(『広辞苑をつくるひと』 第1章 国立国語研究所 より引用)
と、三浦さんらしい(?)シチュエーションを例にあげて、具体的に解説しています。
ちなみに、「さする」「なでる」と似たようなことばに、「こする」「する」「なする」などがありますが、これらの違いがそれぞれ分かるように、広辞苑では解説されています。
ほんと、すごいです、校閲者のみなさん。
『広辞苑をつくるひと』では、ことばへのこだわり、解説イラストへのこだわり、伝えるためのフォントのこだわり、装丁へのこだわり、函づくりへのこだわり、など、一つの製品に対するいろいろなひとのこだわりを知ることができ、学びもたくさんあると思います。
ぜひ、興味のある方は、お近くの図書館に問い合わせてみて下さい!
(購入をお考えの方は、わたしが購入した、丸善御茶ノ水店に問い合わせてみて下さい、在庫があるかもです)
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