課題解決よりも、愛や優しさの循環を~Buddy's Voice Vol.6:西角綾夏~
2020年3月に立ち上がったWe are Buddiesプロジェクト。
このプロジェクトでは、子どもと大人ボランティアがバディとなり、オンライン・オフラインで、遊んだり、話したりしながら、細く長い関係性を築いていく。バディとなった二人は、月に2~3回、オフライン/オンラインで 時間を過ごす。対象年齢は、5~18歳。保護者の方だけが子育てを頑張るのではなく、多くの大人が関わり、登場人物みんなが力を抜いて、優しい気持ちになれる社会を目指すべく、立ち上がった。
このプロジェクトには、大人ボランティアの存在が必要不可欠だ。今年度にボランティア(バディ)として参加しているメンバーたちは、このプロジェクトの土台づくりにも積極的に関わっている。
バックグラウンドも得意分野も異なるバディたちが、なぜWe are Buddiesに参画し、どんな経験をし、これを通して何を実現しようとしているのか。バディたちにインタビューを重ねながら、発起人の意図とは別のところにある、バディにとって、子どもにとって、社会にとってのこのプロジェクトの意義を探求していく。そんなバディたちの生の声を "Buddy's Voice" にて届けていく。
第6回となる今回は、西角綾夏さん。バディの平塚雅人さんが、インタビューアー・ライティングを担当した。
今回インタビューを引き受けてくれたのは、都内の大学院に通う西角綾夏さん。綾夏さんは、大学院では人と人とのつながりを価値として考え、豊かなコミュニティの形成に関する研究に取組む、熱意たっぷりの女性です。学業をしながら、WABの運営事務局も担当しています。
フラットな関係性が生み出す心地よさ
We are Buddiesの活動で大人である自分が子どもと関わる機会をいただいて、何も考えずにただ一緒にいるというシンプルなことがとても心地いいなと感じます。
私は、子どもと大人が対峙するとき、特に学校教育の文脈では、教育的な立場や視点を必要以上に感じてしまうことがあり、もっと純粋な関係性が紡げないかなといつも考えていました。この活動では、目的や立場や肩書きなどの鎧を全て取っ払い、子どもと大人であるということすら意識せずに、お互いがただ人と人として、フラットに関わることができるということが一番嬉しいです。人と人との関係性には目的など必要なく、ただ向き合い寄り添っているだけで尊いことであり、私はこうした関わり合いに興味があったんだな、と気付きました。
手触り感をもって素直に純粋に語れるということ
大学院に入学したことで、アカデミックな視点と社会のための実学の視点、そして実際に手足を動かす現場の視点など様々な角度から自分を内省する機会が増えました。その時に気になったことは、素直さと純粋さかなって。
どんな未来を設計して、どんな未来を創造していくか、ということに思考を働かせることは面白く魅力的です。でも、それによりどんどん主語が大きくなり、社会や未来といった言葉に私自身が飲み込まれ、自分を見失ってしまうような感覚がありました。この活動を通して、私は大きな主語で語るよりも、目の前の顔と名前が分かる人と向き合うこと、手触り感のあるものを求めていたことに気付くことができました。
課題解決よりも、愛や優しさの循環を
明確な未来のイメージは持っていないのですが、より多くの人にこの活動の温もりを感じてもらいたいなとは思います。私がこの活動を通して子どもと関わりや子育て家庭にアプローチをしていく理由は、社会課題の解決というよりも、ただ純粋に楽しいから、知らなかった自分に出会えるからなんです。
もちろん、社会課題のど真ん中に直面していると実感することもありますし、この活動が解決の一助となっているという手応えもあります。しかし、課題解決の意識よりも目の前の喜びや温もりのほうに重きを置いて活動し、関わる人みんなでつながっていられることは、他ではなかなか経験できないことなのではないかと思います。
一緒に取り組んでいるバディメンバーも、みんな個性的で面白くて(笑)それぞれ多様なのに、We are Buddiesの活動に共感して集まってきているため、人との関わりに関してはしっかりと共通認識を持てていて、みんな本当に温かいんです。既存の社会への疑問や課題感を抱えながらも、目の前の喜びや心揺さぶられる瞬間を見逃さずに大切にできる、そんなバランス感覚に優れた人が多いなと感じます。バディメンバーとのコミュニケーションを通して、愛や優しさが倍増し絶えず循環されている感覚があるので、そんなバディチームが生み出す温かく優しい世界がじんわり広がっていったら嬉しいなと思います。
バディをやることは、自己変容につながる
あと、私はこの活動を通して、自分の変容を強く感じます。私自身が素直になって、想いをシェアしていくことで、より多くの人と手を取り合うことができるのではないかとも思うようになりました。私自身が大切にしたいことも明確になったので、あとは先が想像できない未来を味わっていきたいなと思います。
WABの未来も同様に、決して揺らがないものがある限り、他はどれだけ揺らいでもいいし、この活動が変容していけるような余白を残しつつ、今後も愛ある仲間と手を取り合い歩んでいきたいと思います。
(編集後記)
インタビューをさせていただいて印象的だったのは、あやかさんの人となりでした。社会で生きていると、仕事のノルマをクリアするのが当たり前で、そのタスクを繰り返すうちに、人との関係が希薄になっていくことの怖さを知りました。大人になると、社会における重役を担う機会は増えていくもの。そこでは一人一人に選択の自由があり、自由意志が存在する一方で、何気ない人との触れ合いは薄れていくこともあるかもしれませんね。筆者の一身上のことを書きますと、昨年度に多くの友人を失っています。それは、仕事で成果主義に走り、社会のステータス欲しさに貪欲に走っていた時期があり、人の温もりを感じる時間を無駄なモノとして排除していたためです。今回の綾夏さんのインタビューで、人とのつながりの尊さを肌で感じる機会をいただいたと感じました。
また、綾夏さんはインタビューを受けることがほぼ初めてで、自分のことを話すのが恥ずかしいと仰っていながら、それでいて目はキラキラしていて、真っ直ぐな眼をされていたのも印象的でしたね。純粋な感性が織りなす今後の活動がとても愉しみになってくる時間でした。
INTERVIEW & TEXT :平塚雅人
PHOTOGRAPH:清水陽子
EDITING:加藤愛梨