かしわごはん
祖母が用意する食卓に、しばしば登場した"かしわごはん"。
それを炊き込みご飯とも呼ぶことを知ったのは、小学校の給食の献立を見る様になってから。
さらに大人になってから、かしわごはんと呼ぶ郷土料理が北九州の方に存在することを知った。
共働きで帰りの遅い両親に代わり、平日は毎日祖母が夕食を用意していた。
中学校に上がって部活で忙しくなるまではお手伝いする日もあったので、かしわごはんのレシピも教えてもらっていた。
創味のつゆで濃い目に味付けして、水を多めに柔らかく炊いたごはん。
硬めのご飯が好きだったわたしは、多分ちょっぴり文句を言っていたのだと思う。記憶の中の祖母は、幼いわたしにいつもにこにこしながら、「わたしとお父さん(祖父)は柔らかいのがいいの。」と教えてくれていた。
具材は鶏肉、人参、油揚げ、こんにゃく、ぶなしめじ、ごぼう、コーンを入れて、具沢山になるように。コーンは、「あなたが好きでしょう」と入れてくれていた気がする。
一人暮らしを始めた頃、祖母からの宅配便にはよく創味のつゆが入っていた。だから頻繁にかしわごはんを作っていたものだ。
祖母も祖父もそこにいないのに、何故かお米も柔らかめに炊いていて。
今では、かしわごはんという言葉を耳にすることが全くと言って良いほど無くなった。
けれど、きっと祖母のかしわごはんが身に染み付いているんだろう。炊き込みご飯を作る時には必ず鶏肉を使い、濃いめの味にしたくなる。
水を多めに入れてしまった時には、あぁしまったと焦りながらも、祖母と肩を並べて夕飯の支度をしていた遠き日々を、ひとり思い出すのであった。